抄録
兵庫県南部地震についての強震記録は, 地域の地震動分布を求めるに充分なほどは得られていない. 本研究では, 神戸市の建物被害調査に基づくデータを用いて暫定的な建物被害関数を構築し, 構造・建築年代を考慮した地震動の再推定を行った. その結果, 建築年代ごとの建物分布の影響による推定誤差を減らすことができ, 精度の高い地震動を推定することができた. またこの地震動分布を用いて, 構造別・建築年代別の建物被害関数を構築した. これを用いて灘区全体における建物被害棟数を推定した結果, 実被害との誤差は平均で±1%であった. 以上の結果から, 本研究によって構築された建物被害関数は, 兵庫県南部地震の建物被害の状況をかなりの高精度で再現するものであり, 今後の被害推定等に役立つものと思われる.