抄録
本論文は, 1944年東南海地震の震源近傍で2004年9月に発生した長周期成分の卓越した地震によって, 四国地域のK-NET観測点やKiK-net観測点で得られた地震動を用いて, 地震動の距離減衰特性や地盤のサイト増幅特性を検討したものである. 既往の距離減衰式と紀伊半島南東沖地震の観測値を比較した結果, 最大変位に比べ, 最大加速度や最大速度で観測値が距離減衰式を下回る程度が顕著であることがわかった. 増幅については, 既往の経験式と相対的な位置関係を比較すると, 紀伊半島南東沖地震では他の地震に比べ, サイト増幅を過小評価する傾向にあることがわかった. これらの結果は, 周期の長い地震動では, 既往の距離減衰式やサイト増幅評価式を使った場合に比べ, 地震動強度が小さくなる可能性を示している.