2006 年 43 巻 p. 245-254
メコン流域の一部の地域では, 安全な水供給を目的として, 先進国と同様に浄水場と管路網からなる広 域水道と, 集落単位で地下水をくみ上げて配水する簡易な水道 (集落水道) がそれぞれ整備されている。これらの水供給システムによる感染リスク低減効果を明らかにするために, 2つのケーススタディを実施した。タイにおけるケーススタディでは, 広域水道と集落水道の整備地域で, 飲用水起因の感染症のリスクを比較した。その結果, 塩素消毒後の安全な水が供給される広域水道整備地域のリスクは, 集落水道整備地域の約1/8であった。カンボジアにおけるケーススタディでは, 集落水道整備地域と水道未整備地域のリスクを比較し, 集落水道整備地域の方が1/5程度にリスクが低下する結果を得た。