国内港湾の底質から高濃度のダイオキシン類が検出されており, 周辺海域への拡散と水生生物の汚染が懸念されている.東京湾に対する市原港の底質ダイオキシン類汚染が及ぼす影響を把握するために, ダイオキシン類の発生源における組成および市原港内から東京湾全域にわたる底質調査の定量結果を用いた重回帰分析を行った.解析は, OCDDを除いたPCDD/Fsの全異性体の濃度データを用い, 市原港の高濃度地点の異性体組成比を発生源のひとつとした.解析の結果, 市原港の影響は, 市原港から南方沿岸に広がり, さらに湾中央部に広がっていた.市原港の東京湾に対する負荷フラックスは32-65g-TEQ/yr (1993-2003年頃の表層堆積物からの推定) であり, 東京湾への全負荷フラックスの6.1%程度と推定された.