日本古生物学會報告・紀事 新編
Online ISSN : 2186-0963
Print ISSN : 0031-0204
ISSN-L : 0031-0204
643. 北海道からシュードキャライコセラスの発見
松本 達郎河野 正志
著者情報
ジャーナル フリー

1975 年 1975 巻 97 号 p. 7-21

詳細
抄録

Pseudocalycocerasはアカントセラス科の1属で, THOMEL (1969)が提唱した。模式種のAmmonites harpax STOLICZKAは, インド・マダガスカル・モロッコ・フランス南東部などに知られる。THOMEL(1972)は最近フランス南東部産の種をいくつか記載し, またチュニジア・中東などにも若干種が産することを指摘した。他方北アメリカでは, COBBAN & SCOTT(1972)が本属の実例を記載した。同じ年に北海道の幾春別から珍しいアンモナイトを河野が採集し, 松本が研究した結果, これはPseudocalycocerasの好例であり, しかも北アメリカ産のP. dentonenseにきわめて近いものであることが分かった。本属の日本におけるはじめての認定である。松本はAm. harpaxの模式標本を観察したことがあるので, これを基礎に, この際同属に入れるべき種を整理し直し, Pseudocalycocerasを再定義する。本属はフランスではセノマニアン最上部に産するとされているが, 北海道産の種はKanabiceras septemseriatum, Sumitomoceras faustumに伴い, Inoceramus labiatusらしきものをも伴うので, チューロニアン最下部の可能性はなお否定できない。最近国際的に問題となっているセノマニアン・チューロニアン境界の定義と対比に関連して, きわめて興味深い材料であるので, 論議を試みる。

著者関連情報
© 日本古生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top