日本古生物学會報告・紀事 新編
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753. 中生代アンモナイト類2種の連室細管-隔壁襟構造の形成と機能
棚部 一成福田 芳生小畠 郁生
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1982 年 1982 巻 128 号 p. 433-443

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抄録

ジュラ紀前期Eleganticeras elegantulumおよび白亜紀後期Reesidites minimusに同定される保存のよい標本(それぞれドイツ, ハンブルグ, および北海道万字地域産)について, 殻体内部構造をSEMを用いて検討し, 現生有殻頭足類のものと比較した。その結果, 上記2種の連室細管-隔壁襟構造はオウムガイのものとよく類似することがわかった。観察結果およびオウムガイの新気室形成に関する研究成果から, "殻皮"の形成い始まり隔壁真珠層の分泌に終わる新気室形成のモデル(第1図)が導かれる。現生オウムガイ類やトグロコウイカでは, 形成直後の新気室は血液の成分に似た液体(cameral liquid)によって満たされており, 隔壁の完成後その液体は順序に連室細管上皮に排出される。このことから, おそらくアンモナイト類においても新気室は液体で満されていたと推定される。この液体は後に"殻皮"を経由し, 隔壁襟付近の多孔質稜柱層を通って気室外へと排出されたであろう。アンモナイト類と似た殻体構造を持つ現生オウムガイの機能形態から考えると, アンモナイト類の気室液体は新隔壁の形成のみに関係し, 生体の浮沈には関与しなかったと思われる。

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