日本古生物学會報告・紀事 新編
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818. 日本産テンプスキアの新種について
西田 治文
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1986 年 1986 巻 143 号 p. 435-446_1

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抄録

岩手県三戸群種市町八木大浜の潮間帯付近の砂岩より, 地元採集家が収集した硅化木が, 本邦未記載の木生シダ, テンプスキア(Tempskya)属の直立根茎とわかった。標本は種市層中部層からの産出とみられ, 時代は同層併産の動物化石と, 久慈地域に分布する久慈層群との生層序学的比較から, 上部白亜系サントニアンと推定された。ピール法による組織解剖の結果, 直立茎に背腹性が無いこと, 木部柔組織が多いこと, 葉柄の髄に厚膜組織が発達せず, かわりに膜の厚い柔組織があることなどから, 新種, Tempskya iwatensisとして記載した。同属の他種の分布を含め, 白亜紀の古気候図上での分布から, Tempskyaの生育環境を推定した。沿岸性の低山からやや高地に生育し, 従来考えられたような熱帯域よりはむしろ, 温帯域に分布したことがうかがわれる。属内の分類群についても是非を論じた。

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