日本古生物学會報告・紀事 新編
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898. 白亜紀アンモナイト属 Hauericeras について
松本 達郎利光 誠一川下 由太郎
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1990 年 1990 巻 158 号 p. 439-458

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抄録

本属は世界諸地域の上部白亜系に産し広く知られている。しかし私は次の3点が未解決であることに気付いた。これに対する研究結果を記す。(I)模式種Ammonites pseudogardeniの概念が不明確であった。今回後模式を指定して再定義した。外側部に短肋(時に小突起)があるのが本種の1特質である。(II)二型性の存否が問題であった。本邦産H. angustumについて殼口縁の保存されているM殼・m殼の好例を示し, 模式種やH. gardeniにおいても二型のあることを説いた。(III)本属の系統上の位置付けが未解決であった。本属における二型M・m殼の大きさの比とM殼の絶対値はPuzosiaのそれにほぼ匹敵するが, Desmocerasの場合(研究中)とは異なる。コニアシアンにキールは無いが殼形がHauericerasに似て狭い平板形で肋の発達の悪いPuzosiaの種, 他方キールがあり短肋がその両側にあるHauericerasの種が産する。さらに稀ではあるがチューロニアンに短肋が外面部だけにあり初生的のキールをもつ種(Puzosia serratocarinata)が最近報告されている。また個体発生をたどるとHauericerasの幼殼はキールを欠きその形質はPuzosiaの幼殼と酷似する。これらの諸事実から, Hauericerasの初期の種はPuzosiaの中で殼形が挾い平板状で肋の発達が不十分な部類(subgroup)の種から由来したとみなされる。短肋や小突起は亜属H.(Hauericeras)では残存しているが, 亜属H.(Gardeniceras)では全く消失した。また亜科PuzosiinaeとHauericeratinaeとを併せて, 科Puzosiidaeとするのがよい。

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