霊長類研究
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Comparative Anatomy of Caudal Musculature Attachments in Catarrhines with Different Tail Length
Sayaka TOJIMA
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2015 年 31 巻 2 号 p. 129-135

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抄録

霊長類における尾は,環境への適応や系統を反映する重要な形態のひとつである。特に一部の狭鼻猿類では尾が極端に短縮・喪失しており,その進化過程を解明するためこれまで尾長変異と骨格形態変異について研究がなされ,仙尾部骨格形態が尾長を反映して変異することが知られるようになった。こうした骨格形態変異は,尾長の変化に伴う尾の機能変異を反映していると考えられるが,尾の機能に重要な影響を及ぼす尾筋が尾長変異によりどのように変異するのかについては,知見が不足していた。そこで本研究では,狭鼻猿の尾筋に関する知見の更新ならびに尾長変異に伴う尾筋の形態変異の解明を目的とし,尾長の異なる狭鼻猿5種5体の腰部から尾部を剖検,尾筋付着部位を観察した結果、以下の知見を得た。1)観察した全ての尾筋は,短尾な種ほど頭側で停止・腱様化する,2)尾屈筋群はベニガオザルより短尾の種に存在しない,3)骨盤尾筋群は尾が無い種にも存在する,4)背側尾伸筋群は非常に短い尾をもつニホンザル,ベニガオザルでは1種類しか見られず,尾のないチンパンジーにはない,5)背側尾外転筋群は尾を持つ全ての種で2種類独立に存在する。これらは,従来の骨格形態変異に関する知見と併せ,狭鼻猿の尾長短縮過程解明に重要な役割を果たすだろう。

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© 2015 日本霊長類学会
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