溶接学会誌
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鋼材の切欠感度と引張試験結果との比較
鋼材の切欠感度識別に関する簡易試験法について(第1報)
渡辺 正紀合田 進
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1952 年 21 巻 4 号 p. 113-124

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抄録

一般に材料の切欠感度を識別するにはいわゆる遷移温度がcriterionとして用いられ,普通の機械試驗(たとえば引張試驗など)で鋼定する事はできないと考えられている
しかしながら工場において材料の遷移温度を求めることは非常に繁雜である.かゝる観点から筆者らは普通の引張試驗結果とUおよびVタイプ標準シヤルピー試驗結果を詳細に調査した.たゞし使用材料は代表的な本邦縁付鋼4種(第I,II表参照)で,試驗は-80℃~+200℃のゆ温度範囲で行つた.
引張試驗結果は第7-13図に示す如くである.もちろんこれらの結果から材料の切欠感度を識別することは困難である.そこで筆者らは次の如き原点および降状点から最大荷重点迄の歪硬化量を表わす量を採用した.(第20図参照)
φ=最大荷重点における真応力/最大荷重点における歪
φ'=(最木荷重点における真応力)-(降状点)/最大荷重点における歪
たゞし最大荷重点の真応力,σtおよび歪,εtはMc Gregorにしたがつて破断後局部收縮部より離れた点の断面積から算定した.(第5章の記号参照)
調査の結果φ,φ'の値について次の如き顯著な特性を得た。
(a)φ,φ'の値は-80℃~+100℃の温度範囲で一定を保ち,+100℃以上温度の上昇するにつれ大となる.(第王8,19図参照)
(b)シヤルピー遷移温度と上記-80℃~+100℃の温度範囲におけるφ,φ'の値との関係については第22,23図に示すごとくφ,φ'の値の大なる材料程遷移温度は高い.
以上の事実に基いて筆者らは材料の切欠感度に対するindexとしてφ,φ'を採用することを提案するものである.

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