溶接学会誌
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被覆鉄板の軟ろう接における剥離強さに関する研究
川勝 一郎大沢 直
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1971 年 40 巻 5 号 p. 441-447

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抄録

炭素鋼板,錫メッキ鋼板および亜鉛メッキ鋼板母材の軟ろう接における剥離強さに関して検討した結果以下の結論を得た.
(1)剥離強さはろう接間隙に関係せずろう接幅に比例する.
(2)炭素鋼板および錫メッキ鋼板母材における剥離強さは鉛―錫合金のろう成分比に影響され,共晶組成附近で最小になりろう接部の引張強さとは負の相関関係にある.しかし亜鉛メッキ鋼板母材の場合は鉛―錫合金ろうの成分比に影響されずほとんど一定でありその値は0.38kg/mmであった.
(3)炭素鋼板および錫メッキ鋼板母材の剥離強さはろう材の成分比に影響され,その剥離は母材鋼板の表層部に形成される合金層FeSn2,または合金層とろう材の界面に形成される鉛濃度の高い薄層で進行し,それらが接するろう材が剥離時の応力に対して一種の緩衝材となるためろう材が軟いほど剥離強さが大きい.
(4)亜鉛メッキ鋼板母材の場合は亜鉛メッキ処理過程において鉄と亜鉛との界面にすでにぜい弱なFeZn7相が形成されこの相で剥離がなされるのでろう材成分の影響がない.

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© 一般社団法人 溶接学会
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