年次大会講演要旨集
Online ISSN : 2432-7131
セッションID: 2A24
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2A24 サイエンス型産業における持続的発展の研究:「知識と人」産学循環モデル(<ホットイシュー>イノベーション・システムの変遷と今後の展望(4),一般講演)
飯嶋 秀樹中田 喜文山口 栄一
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抄録

日本の物理分野の論文数が2003年から突然、減少した。1990年代前半に企業論文数が減少したあと1996年に大学院博士課程で学生数が減少し始め、2003年から大学論文数が減少した-このような連鎖反応の進行は、大学と企業を囲む研究・開発環境の構造と性質に起因すると考える。大学院博士課程学生数と論文数のあいだに高い相関性があるが、学生数の変動は高校物理の履修率の低下や高校生世代人口の減少の影響を受けている可能性がある。そこで上級物理科目(理系志望者が学習)の履修率と高校生世代人口の変動を考慮して「物理系大学院博士課程進学率」(物理系進学率)を求めた。物理系進学率は学生数と同様に1996年から減少しており、論文数とのあいだに高い相関性があった。同様に評価した1990年代後半の化学系進学率は反対に上昇しており、物理分野と化学分野における研究・開発環境の構造的な違いが示唆された。大学と企業のあいだには、「知識」と「人」が流れる3つの経路があり、「知識」と「人」は質と形を変えながら大学と企業のあいだを往還し循環していると考える。これを"「知識と人」産学循環モデル"として提唱した。今後、このモデルを用いてサイエンス型産業における持続的発展の在り方を探る。

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© 2015 研究・イノベーション学会
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