抄録
ガザミ亜科Portuninaeに属するベニツケガニThalamita prymnaの抱卵個体を御前崎沿岸の岩底に設置した刺網によって捕獲し,実験室で飼育した。孵化したゾエア幼生にはアルテミアのノープリウスを充分に給餌し,ゾエアIV期までを得ることができた。得られたゾエア各期幼生につき,全形と付属肢の形態を詳細に記載,図示した。本種ゾエアIV期の形態は今までに調べられた種類のそれに酷似しているので,間違いなくゾニア終期であろう。本種ゾエア幼生をフタバベニツケガニT.simaやミナミベニツケガニT.danaeと比較したところ,ゾエア期の数,甲側縁部の色素胞,顎脚Iの基節毛数,両顎脚の外肢遊泳毛数,尾節の分節時期などに若干の違いが認められ,これらの部位により,3種幼生の識別は可能である。