抄録
汽水域に生息するトゲオヨコエビ(Eogammarus kygi)の雄成体の精巣より染色体を観察した。コルヒチン処理の後,背部を切開して生体のまま組織を低張処理することにより組織の喪失を防ぎ,本種のような体長約9-17mmのごく小型の生物でもフレームドライ法によって明瞭な核板を得ることができた。染色体数は2n=56,n=28でこれとは別に微小染色体(B-chromosome)が存在した。染色体の大きさは平均16μmでほとんどの染色体が中部着糸型染色体であった。また,第一成熟分裂中期像では全ての染色体が二価染色体を形成し,性染色体の存在は認められなかった。本種の染色体数について,Gammaridaeの近縁グループおよび同属近似種の染色体数,地理的分布との関係を検討した。