甲殻類の研究
Online ISSN : 2433-0108
ISSN-L : 0287-3478
アナジャコ類の3新種の記載
酒井 勝司
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1967 年 3 巻 p. 39-51

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抄録
本報告において筆者はアナジャコ類の3新種を記載した。即ち,Fam. Axiidae Calocaris(Calastacus) mimasensis sp. nov. Fam. Upogebiidae Upogebia(Upogebia) acanthochela sp. nov. Fam. Callianassidae Callianassa(Callichirus) nakasonei sp. nov.第1の種は筆者自ら土佐湾御畳瀬の底曳漁船の残滓から採集したもので,日本からは最初に記載される属,第2の種類は東支那海から長崎市西海区水産試験場の山下秀夫氏によって採集されたもの,第3種は沖縄本島に近い渡名喜島の砂浜にて九大大学院学生,仲宗根幸男氏によって採集されたものである。これら3種の模式標本は,九大農学部動物学教室に保管されている。種の特徴の概略は下記の通りである。1.Calocaris(Calastacus) mimasensis sp. nov.体長は30mm,額角は細長く,その両側に2小歯がある。甲背の前半部には正中線とその両側に各2条の小歯をもった隆起線が走っている。第1脚は左右ほぼ相称で,その外面は毛に被われ,掌節の上縁に3棘がある。尾脚の外肢に小葉があること,甲背の後半部の後縁近くに正中線上の隆起があること,触角棘が長いことなどからCalocarisと認められる。日本近海からは初めて知られた属で,高知市御畳瀬の底曳漁船で得られた。2.Upogebia(Upogebia) acanthochela sp. nov.体長27mmに達する。第1脚の掌節の上縁には1列の,叉内面には3列の極めて顕著な棘が列生している。額角は良く発達していて,その下縁には2〜3棘がある。甲殻前縁の左右の突起は極めて短かい。甲殻前側縁には7〜8個の小歯があり,頸溝の後方には1対の顕著な棘がある。長崎市の西海区水産試験所の山下秀夫氏によって,東支那海からドレッジによって採集された。3.Callianassa(Callichirus) nakasonei sp. nov.体長39mm。尾脚の外肢は良く発達していて,槍形の内股よりも長く伸びている。額角は鋭い棘状,又甲殻前縁の両側には額角と同様な鋭い棘がみられる。第1脚は左右不相称で,その大鉗の長節は下縁に沿って4個の粒状突起が並ぶ。叉座節は上縁,下縁ともに滑らかである。第3顎脚の前節は内縁が良く突出している。大学院学生の仲宗根幸男氏が沖縄本島に近い渡名喜島の砂浜で採集したものをいただいた。
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© 1967 日本甲殻類学会
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