抄録
前回の秋の発表会ではライフサイクルコスティングの健全な評価分析活動の条件、1)適正なデータ収集、2)見積評価手法、3)コストモデルの設定及び4)コスト見積評価プロセスの設立の必要性を提言し、より適正な見積評価値を創出する為にはこれら要素の当該ライフサイクルを通した完全性と継続的で首尾一貫した活動理念の必要性を説いた。先般の社会資本に関する総務省の通達と報告書は、現存社会資本の延命化を図りコスト低減を目指すライフサイクルコストの最小化を目標において耐用寿命の延命を考えている勧告である。そのため、工学的側面からの論証の根拠が明記されていない場合があり、ライフサイクルコスト評価に基づいた経済的トレードオフの検証の必要性が課題となる。延命用件や基本的な概念の定義は発展途中であり、用語に統一性がない場合がある。安全性や信頼性の確保をせず延命化を目標とするならばこれらの社会的思潮の流れは、工学的問題というよりも重大な社会的課題として捉えるべきである。ここではこれらの課題認識を明確にし、その問題解決の立場に立って、当該アイテムの耐用寿命を評価する場合について特化し、基本設計思想、時間的経緯、諸環境変動、保全活動の継続等不確実要因を含む変動に対応する工学的視点から考察し、既存社会資産の耐用寿命について、ライフサイクルコスティングの見積評価分析活動の視点から、そして社会的要求としての諸社会資本の延命の可能性とその課題解決について検討する。健全なライフサイクルコスティングの技術的支援となる提案を試みる。又、調査実績データを踏まえて、耐用寿命と保証された安全寿命とを定義し、検討する。特に河川施設の水門、ポンプ系を基に具体例を吟味検討し、一般論への展開を試みる。