2002 年 8 巻 p. 3-18
この論文の目的は、日本では開拓の遅れている「宗教と男性性」というテーマについて、現代日本で静かに流行している一般大衆の内観サークル系宗教運動の実証データを提供するとともに、形成途上にある日本の男性学理論に対して問題提起をすることにある。この論文の事例研究の対象である内観サークル系宗教運動「エルランティの光」では、女性参加者と異なり男性参加者に対しては、「オトコを崩せ」という指導が時々行われる。この論文では、「オトコを崩せ」という指導の実際を紹介する。次に、そうした指導法を指導者の中年期における回心体験と関係付けて説明する。最後に、内観サークル系宗教運動を日本のメンズリブ運動と比較検討し、1.今後、新宗教の一部のメンズリブ化と一部のメンズリブの宗教化が同時に進行することが予想される、2.伊藤公雄の「鎧理論」には、主として中年男性を対象とした「母の息子の男性学」の性格〈がある、ことを示唆する。