2023 年 15 巻 p. 1-27
聴覚障害者は音声へのアクセスが限定されているが、健常者と同等の読解能力を持つ者もいる。本研究では聴覚障害者・母語話者・日本語学習者の読解の異同を精査するため、日本語の格と動詞の自他が対応していない文を読んだ時の反応を聴覚障害者、日本語母語話者、日本語学習者間で実験を行った。
実験の結果、聴覚障害者からは N400 と P600 が、母語話者からは P600 が確認された。一方、学習者からはどちらの成分も確認できなかった。聴覚障害者と健常者で異なる反応が確認されたため、聴覚障害者と健常者では読解処理が異なる可能性が考えられる。この結果を考慮すると、聴覚障害者に対し健常者と同じような識字教育、読解教育を行うべき理由はないと考えられる。