2024 Volume 51 Issue 4 Pages 145-152
回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期病棟)では,運動器疾患は理学療法を実施する主要な対象疾患の1つであり1),生活機能の改善,日常生活活動(activities of daily living:以下,ADL)の再獲得,および早期の自宅退院を目指したリハビリテーション(以下,リハ)が実施される。回復期病棟におけるリハの効果をより加速的に高めるためには,症例に対して理学療法士などの療法士が個別に行う個別療法とともに,多職種連携に基づく自主練習の実践が重要である。多職種連携でのリハの有用性に関するエビデンスは必ずしも高くない2)が,入院中の多職種連携によるリハによって更衣や清潔といったADLの向上と社会参加の増加3)が認められている。回復期病棟は,配属されるリハ専門職の従事者数が多く,個別療法とともに自主練習を習慣的に実施し,退院後の生活を視野に入れた運動や生活の習慣の定着を図るための環境として適しており,より充実した自主練習の指導・処方が求められている。
本稿では,理学療法の対象となる頻度が高い運動器疾患のうち,下肢の骨折や関節疾患の手術後に回復期病棟に入院した症例に対して実施する自主練習についての処方や指導の要点を概説し,多職種連携を踏まえた実際の方法や内容について例示する。
下肢の骨折や関節疾患の手術後のリハでは,骨の癒合を妨げずに促すようリスク管理しつつ,生活機能改善を図ることが求められる。人工股関節全置換術後,人工膝関節全置換術後,大腿骨近位部骨折術後などの場合は,手術とその後の経過が良好である場合は急性期病院において術後翌日の早期から立位における全荷重が許され,速やかな離床と立位動作や歩行の練習が実施される。そのため,良好な経過を辿った場合は回復期病棟へ転院することなく,急性期病院から直接自宅へ退院することが可能となる症例が多い。一方で,下肢の骨折の中でも骨癒合過程に応じて部分荷重を段階的に実施する必要がある場合は急性期医療後に回復期病棟へ転院し,荷重を調整しながら骨癒合を促し,自宅退院に向けて立位動作や歩行の練習が実施される4)。また,運動器疾患はその特性上,疼痛とともに,立位動作や歩行における動作主動筋の筋出力低下,拮抗筋の過剰な同時収縮や防御性収縮が生じやすく,局所および全身の廃用症候群を惹起させる可能性がある。そのため,免荷時期に応じた個別療法と自主練習を実施し,疼痛軽減,筋出力や協調運動機能の改善,身体活動の増加を図るための方略が求められる。回復期病棟に入院した下肢の骨折や関節疾患の手術後の症例に対して自主練習を実践することによって,生活機能の加速的改善,運動や練習の機会増加による身体活動量の増加,望ましい運動や動作の習慣化といった効果の促進が期待できる。
骨折後の骨治癒過程とリハビリテーションの一般的な流れを図1に示した。回復期病棟入院直後から理学療法士による初回評価と病棟でのカンファレンスが実施され,個別療法開始後に自主練習が開始される。一般的に,病期が急性期から回復期へ進むにつれて,骨折部では炎症期から修復期における仮骨形成とリモデリング期における仮骨癒合と骨癒合が進行する。骨の回復を妨げずに促すためにも,単純X線をはじめとする画像所見や医師の判断に基づいた運動と荷重が必要であり,自主練習においても,骨折部の経過に応じた練習内容に設定する必要がある。また,実際の回復期病棟における自主練習は,主として個別療法の時間帯以外に実生活の場である病室や病棟で実践することになり,かつ,自主練習の実践補助,リスク管理,実行状況のモニタリングを着実かつ効率的に行うためにも多職種連携は必須となる。
自主練習は,対象者の問題点を解決するためのものである必要があり,かつ,安全で実行可能性が確保されたものを選択する。理学療法士が個別療法として直接実施する理学療法プログラムと同様に,個別療法ではない自主練習プログラムについても,その立案のためには,改善する必要のある動作や活動の問題点と障害像を明らかにする理学療法評価が重要となる。特に,回復期病棟退院後の生活を見据えたADL獲得のためは,困難となっている動作の実用性を実生活において高める必要があり,その実用性を低下させる要因を解決する狙いが盛り込まれている自主練習を設定する必要がある5)。
2. 回復期病棟における自主練習プログラムの方針本来,回復期病棟は,病棟での生活そのものがリハであるという捉え方が基本であり,生活の中にいかに効果的に運動や練習を取り入れ,習慣化と定着を図っていくかが重要である。回復期病棟では患者1人当たり1日平均3.9±1.0単位の理学療法が実施されており1),時間に換算すると1日当たり約60~80分の個別理学療法が実施されていることとなるが,1日に予定される個別療法以外の数十時間の活動ができるだけ不活動状態に陥らないように,個別療法を実施する時間以外の時間が有効に活用できることが望ましい。これまでに,回復期病院入院患者における離床時間の増加による機能的能力の回復6)や,大腿骨頚部骨折入院患者における時間外,週末,または休日での付加的なリハの実施による機能回復7)8)または入院期間の短縮7)8)といった効果が報告されており,回復期病棟では,離床,自主練習,積極的な活動,障害肢の使用といった習慣が回復期病棟の患者に対して肯定的に影響する要因として重要視されている9)。また,運動器疾患患者は,中枢神経疾患患者などと比較して認知機能に問題が生じていないことが多いため,口頭での十分な説明やフィードバック,配布資料や掲示資料などの活用を行い,運動や練習の習慣化や定着のための目的意識,動機付け,活動意欲,自己効力感の向上を図る10)ことが重要である。
回復期病棟に入院した患者に対する自主練習は,入院当初の早期から開始し,患者の病態に応じた内容の修正を行いながら病棟の実生活における習慣化と定着を図る。毎日の病棟生活の中で,いかに運動や練習を習慣化していくかが重要であり,自主練習として,どのような動作を,どのような場面で,どのような様式で実施するかを検討し,ADLに要する動作の一部が自主練習に自然と組み込まれるようなプログラムを検討するとよい。ADLに着眼した自主練習では実際の生活環境が自主練習の場であり,例えば,台所で鍋を沸かしている最中に横歩きの練習や,ベッドからトイレまで行く途中の手すりでステップの練習など,改善や定着が必要な動作の実践場面に遭遇した機会を自主練習の機会にすることが有効であると考える。
いずれ回復期病棟から地域へと在宅復帰する症例の多くは,住み慣れた町で,自助・互助を行いながら生活していくこととなる。退院後においても,リハ専門職が直接的にリハを実施して機能維持するのではなく,患者自身が自ら独力で実践し,次の活動に発展するような自主練習を,在宅での日常生活において自主的に行っていくことができるように,回復期病棟において処方・指導していくことが大切である。
3. 自主練習プログラムの内容患者本人が独力で実践可能な自主練習は,患者が実行可能な範囲の運動や動作練習の内容に限られる。狭義の自主練習とは異なるが,患者が独力では実施できず見守りや介助が必要となる課題を設定する場合は,病棟の看護職員や介護職員が支援しながら実施し,自主練習として実施する準備をする。いずれの自主練習の実施についても,安全管理を徹底し,すでに推奨されている安全基準11)を参考に対象者の状況に応じたリスク管理を合わせて指導する。
自主練習の内容は,個別療法で患者に指導し実践したものの中で「患者が独力で実践できる内容に簡素化したもの」に設定し,個別療法で実践した内容を病棟での日常生活で一般化させる狙いを持つとよい。個別療法を実施する際に,自主練習の実行状況をモニタリングし,不適切な運動や動作の方法で自主練習を実施していないか確認する5)。自主練習には,関節可動域運動や筋力増強運動のような機能障害の改善を目的としたものや,姿勢調整や動作練習のような活動制限の改善を目的としたものが設定される。いずれにせよ運動や活動を処方することになるため,FITTの原則を目安に①頻度(Frequency),②強度(Intensity),③時間(Time),④種類(Type)を設定する12)。姿勢調整や動作練習では運動強度または活動強度の厳密な設定が難しいことがあるが,その場合は強度の代わりに難易度(補装具を使用しない,座面高を下げるなどの環境調整を含む)で調整する。また,患者本人が実行しきれないほどの自主練習プログラムを処方することは避ける5)ことが望ましく,まずは1つの練習から開始し,継続実践が可能であることを確認した後に順次,項目,頻度,強度,難易度を漸増する。
4. 自主練習プログラムとしての筋力増強運動運動器疾患では,課題とする動作障害の原因として筋力低下を挙げ,その解決のための筋力増強運動を処方する機会が多い。筋力低下の原因は,主動作筋の神経学的要因と形態学的要因(筋萎縮),拮抗筋の過剰収縮や固定筋の筋力低下が挙げられる13)。自主練習として筋力増強運動を行う際には,筋力低下の原因に応じた方法を選択する(表1)。
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文献13)より作成.
運動器疾患では,動作中の主動筋と拮抗筋の同時収縮がしばしば課題となることがある。例えば,人工膝関節全置換術後において大腿四頭筋の筋出力低下のために歩行中の膝折れが生じる患者には,大腿四頭筋とハムストリングスの同時収縮練習を実施することによって膝折れの改善が期待される14)。また一方で,病変部位周辺に疼痛が生じ,動作に関わる関節の主動筋と拮抗筋に過剰な同時収縮または防御性収縮が生じ,円滑な動作を妨げる場合もある。例えば,変形性膝関節症患者では,関節不安定性の改善と疼痛の緩和のための代償メカニズムとして膝関節周囲筋の同時収縮が生じる15)16)ことがあり,その反面,過剰な同時収縮が動的バランスのパフォーマンスを低下させる可能性もある17)。したがって,動作によっては同時収縮を促して関節の安定性を高めるか,過剰な同時収縮から主動筋と拮抗筋の協調的な収縮と弛緩のタイミングの再学習を促すか,を患者の病態に応じて判断する必要があり,自主練習として筋力増強運動を検討する際にも筋収縮部位と筋収縮のタイミングについて十分に再教育を行うことが重要である。
また,運動器疾患に罹患して回復期病棟に入院する患者は高齢であることが多い。高齢者では骨格筋のうちタイプII線維を多く含む筋が影響を受けやすく18),とくに姿勢保持に関係する抗重力筋を中心に骨格筋量が減少しやすい19)。入院中において座位や立位の抗重力肢位における基本動作やADLの自立度を高め,いずれ退院した後により高強度の身体活動量の増加を図るためには,抗重力筋の筋力増強運動を入院中から自主練習として実践し習慣化することも退院後の介護予防に資する準備として考慮するとよい。
5. 免荷や荷重を考慮した自主練習プログラム立案下肢の骨折や関節疾患の手術後の症例の中には,術後翌日から全荷重が許可されず,術後から荷重制限が必要となる患者もいる。早期荷重と早期の歩行実践は望ましいが2),荷重制限が必要となる患者には免荷期間において,廃用性症候群の予防とともに,いずれ許可される荷重と荷重量増加への準備を進める必要がある。
非荷重で完全免荷を要する時期は,臥位や座位で可能な術側下肢筋群の関節可動域運動や筋力増強運動とともに,術側足部への感覚刺激入力や端座位で行う術側下肢への荷重イメージ練習4)を実施し,自主練習としても導入するとよい。
部分荷重が可能となった後は,荷重の過多と不足,骨癒合の妨げと促進,にそれぞれ留意してリスク管理しつつ,荷重下での運動や動作練習を進める。部分荷重練習は,主として理学療法士との個別療法の際に実施されるが,回復期病棟でのADLに一般化するためにはリスク管理を十分に行うことを前提に自主練習としても取り入れることが望ましい。部分荷重課題では,回復の初期に小さな荷重量負荷を練習する際に患者は過剰な荷重を負荷しやすく,回復の後期に大きな荷重負荷を練習する際に荷重負荷が過少になりやすい20)傾向があるため,自主練習導入の事前に個別療法の場面での試行錯誤が必要となる。その際,適した部分荷重を実現するための教示方法においては,荷重の量よりも荷重の方向が重要な要素になる可能性がある21)ため,教示内容にも配慮を行う必要がある。1/3部分荷重や1/2部分荷重の制御が困難な患者に対しては,必要に応じて,従来から提唱されているtoe touchでの荷重22)23)を活用するとよい。ただし,ガイドライン2)によっては,高齢者では荷重制限指示の遵守が困難であるため,部分荷重を要するような術後指示は避けるべきであるとされており,高齢患者の部分荷重については担当医師と十分に相談して治療や練習の方針を協議する必要がある。
著者が所属する回復期病院において,運動器疾患の患者に対して回復期病棟入院当初から実践する自主練習の取り組みの例について解説する。
まず,入院後に,週1回の頻度で多職種にて開催している病棟でのカンファレンスにおいて患者の生活状況に合わせた介助や支援の方法について検討を行っている。特に自主練習については,実施すべき生活動作の抽出とそれに合わせた自主練習の内容について,生活動作分析シート(表2, 3)を使用し,表にまとめている。本シートは患者にとって実施困難な生活動作を分節的に複数の相に細分化し,いずれの場面におけるいずれの動作が問題なのかを整理・抽出し,自主練習の内容や実施するための工夫,リスク管理について記載している。また,基本動作を相に分け簡潔に整理したものとなっているため,療法士以外でも簡単に使用可能となっている。シートによって問題となる動作の相を抽出し,カンファレンスで検討した上でそれぞれの患者に合った自主練習を決定する。自主練習の導入については,問題として抽出された相について軽介助もしくは見守りで動作の反復練習を実施し,安定して実施可能となれば,十分なリスク管理の上,自主練習として独力で実施できるようにする。最終的には自宅へ退院した際に,自主練習の要素が日常生活の中に組み込まれているように習慣化させる。
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1例目は,立ち上がり困難な事例(図2)である。入院5日目の評価において,端座位から体幹前傾不十分で重心を下肢に移動することが困難で離殿できていない状態であり,生活動作分析シート(表2)で評価を実施すると,第1相「座位~体幹前傾」において体幹前傾が不十分で離殿できない要因が起立動作の実用性を低下させていた。多職種でのカンファレンスで情報共有し,毎食時の車椅子への移乗の際に座位から体幹前傾し離殿直前までの練習を自主練習として実施することを方針とした。導入準備として,主動作筋である体幹屈曲筋と拮抗筋である体幹伸展筋それぞれの筋の収縮と弛緩について患者本人の実感と経験を促し,筋収縮の部位とタイミングを理学療法士が確認した。体幹伸展筋の筋収縮が過剰となっており,弛緩困難であったため,体幹前傾練習と体幹後傾練習を数回繰り返した後,体幹伸展筋の過剰な筋収縮の状態を認識させ,弛緩するように口頭指示で促した。その後,体幹前傾練習を反復して10回実施した。同時に,体幹前屈の適正な角度や体幹前傾筋や殿筋の適切な筋収縮のタイミング,足部の位置を口頭指示した。当日中に離殿直前までの動作であれば転倒の危険性は少ないと判断し,体幹前傾の自主練習を毎食時の移乗前に10回実施するように指導した。入院17日目で体幹前傾が十分に行えるようになり,見守りで離殿を実施可能となった。しかしながら立位となる際に,体幹伸展途中でやや不安定となっていたため,この動作についても多職種で可視化するためにシートを活用し,第3相の「離殿から体幹伸展(立位)」の動作を抽出して多職種カンファレンスで自主練習の方針について共有した。なお,離殿から体幹伸展までの動作については,練習開始時不安定であったため,ベッドの高さを少し高く調整し,最初の3日間は離殿から体幹伸展への動作の切り替わりのタイミングの教示を行いながら見守りで実施した。その後,安全性を確保する目的で前方に手すりを設置し,姿勢バランスが不安定になった際に把持できるように環境調整を実施した上で,独力での自主練習を開始した。自主練習開始後20日間で手すりの使用なしで立ち上がりが自立した。退院後も機能低下が生じないように,退院前自宅訪問を実施し,自宅での生活の流れの中で自主練習を取り入れることができるように場所の確保と環境調整を実施した。退院後の調査では,3か月後もベッド前にテーブルを設置して,起床してトイレに行く前に座位からの体幹前傾練習と離殿後からの体幹伸展練習を10回ずつ自主練習として実施しており,立ち上がり能力が保たれていた。
2例目はトイレ動作で下衣の着脱が困難であった事例であり,トイレでの下衣着脱時,片手で膝上まで下衣を下げる動作までは可能であったが,膝上まで下がった下衣を膝下まで下げることが困難であり,無理に下衣を膝下まで下げようとすると姿勢の動揺が生じていた。生活動作分析シート(表3)を使用し,第2相「膝上まで下がった下衣を膝下まで下げる」を抽出し,多職種がカンファレンスで情報共有と,自主練習の方針を検討した。その後,生活動作分析シートを個別トイレ内に掲示し,トイレ動作の介助を実施する際に,排泄の前後で問題のあった相の動作を事例1と同様に重点的に反復練習を行った。この際に下肢への荷重量の配分や重心移動のタイミングの口頭指示を行った。特に荷重をかける方向についての指示と重心を移動させて姿勢バランスを保持できる最終位置について,患者本人の実感と経験を促した。初めは5回から,少しずつ回数を増加させ,次第に動作に合わせた重心移動も可能となり動作が徐々に安定した。その後,数日でズボンの着脱が自立となった。動作自体は自立したが,下衣の上げ下げに時間がかかり実用性が低下していたため,便座前のスペースに不安定になった際に把持できる椅子を設置して安全性を確保した後,独力でその動作を自主練習として反復して実施できるようにした。退院時には下衣の上げ下げが以前の約半分の時間で実施可能となり,実用性も向上した。下衣の着脱には表3にも示すように,座位で実施する方法もあり,ADLの種類によっては様々な方法があるが,個々の患者に合った方法で自主練習を実施することが大切である一方で,生活動作分析シートのような多職種間で理解しやすい共通のツールの作成も必要である。
これらの2例の結果から,当然,並行して行っていたリハ室での個別療法も改善に影響があったのは間違いないが,実際の生活場面において実施困難な動作の反復練習を行うことは,リハ時間以外の不活発予防になるとともに,その動作のパフォーマンス向上にも様々な面で資することなった。また,生活動作を相で分けて見ることを多職種で習慣化することができれば,入院生活で症例に寄り添い支援している看護職員や介護職員の視点も変化し,自主練習について生活動作に直結して考えるきっかけとなる。さらに,生活動作の反復練習の方法を回復期病院において,実際の生活場面で行っておくことは,退院後に自宅で生活する際に生活の中に運動を取り入れる一助となると思われ,このことを想定して入院中の自宅訪問の際に,実際の自宅の生活環境で自主練習を実施できる場所を探しておき,生活動作の中に自主練習の要素を組み込む計画を立案しておくことも重要であると考える。
回復期病院の入院患者の約8割を占める高齢者1)は比較的,療法士が行うリハ室での個別療法に依存しやすく,ベッド・椅子上に不活発でいることが多くなりがちである。回復期病院入院患者がスムーズな在宅生活への移行を図るためには入院中の身体活動量が不足しており,体力向上を目的とした理学療法プログラムや,病棟での身体活動量向上を図る介入が必要であることが指摘されている24)。また,個別リハに加え自主練習の提供も積極的に行うことで,よりADL能力の効率向上が得られ,病棟生活において車椅子から歩行への移動手段獲得が早期にできる可能性があり,低負荷(自覚的運動強度の10~13「楽である~ややきつい」)の自主練習であっても,生活上での活動性低下に伴う廃用性要素の改善や受傷部位の機能回復の一助としての効果が報告されている25)。つまり,生活の中に自主練習を組み込むことができれば,それは習慣化されやすく,仮に低負荷であったとしても身体機能の維持・改善に一定の効果が期待できると考えられる。運動器疾患に対する自主練習の考え方についても,単にその疾患の治療のみならず,再発予防や介護予防の観点からも,生活の中での運動を重視する必要があり,入院中から実践した自主練習を退院後も有効活用することが重要である。