Physical Therapy Japan
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Research Reports (Original Article)
Prognostic Factors in Patients with Severe Stroke: A Clinical Study
Yushi MITANI
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2026 Volume 53 Issue 1 Pages 18-22

Details
要旨

【目的】重症脳卒中患者において,急性期の段階で回復期以降の日常生活活動改善に寄与する項目を明らかにする。【方法】急性期病院退院時のFunctional Independence Measure(以下,FIM)が55点以下の患者を対象とし,回復期病院でのFIM利得16点を基準に2群に分け,調査項目で比較した。統計分析は,単回帰分析,及び多重ロジスティック回帰分析を行った。【結果】改善群と非改善群の2群間で有意差が見られたのは,年齢,Body Mass Index(以下,BMI)分類,在院日数,急性期退院時FIMの運動,認知,総得点だった。また,多重ロジスティック回帰分析において独立因子に選択されたのはBMI分類(オッズ比0.26),FIM総得点(同0.92)と在院日数(同1.07)の3項目であった。【結論】重症脳卒中患者の回復期における改善因子として急性期病院入院中での修正可能因子がより関わる可能性が示された。重症であっても急性期病院での全身状態管理や適切な機能訓練が重要と言えるかもしれない。

Abstract

Objective: To identify factors that contribute to improvement in the recovery phase of patients with severe stroke during the acute phase.

Methods: This study targeted patients with a Functional Independence Measure (FIM) score of 55 or below at the time of discharge from an acute phase hospital. Patients were divided into two groups based on a 16-point gain in FIM scores during the recovery phase. Various factors were compared between the groups. Statistical analysis was conducted using the Kruskal–Wallis test, chi-squared test for independence, and multiple logistic regression analysis.

Results: Significant differences between the improvement group and the non-improvement group were observed in age; body mass index (BMI) classification; length of hospital stay; and motor, cognitive, and total FIM scores at discharge from the acute phase hospital. Multiple logistic regression analysis identified three independent factors: BMI classification (odds ratio [OR], 0.26), total FIM score (OR, 0.92), and length of hospital stay (OR, 1.07).

Conclusion: These findings suggest that modifiable factors during acute hospitalization play an important role in the subsequent recovery of patients with severe stroke. Even in severe cases, appropriate systemic management and functional training during the acute phase may be essential for recovery.

はじめに

人口の高齢化等に対応し,患者の症状に応じた適切な医療を効率的に提供するための医療施設機能の体系化を主旨に,厚生労働省は2018年度から開始された第7次医療計画で,都道府県が策定中の地域医療構想を通じて病床の高度急性期・急性期・回復期・生活期の機能分化を進めており,急性期から生活期へのシームレスな医療体制の構築を目指している1

そのため,急性期病院において急性期治療が終了した患者が自宅退院困難であった場合,回復期機能を持つ回復期病院に転院させるのか,療養機能を持つ療養型病院に転院させるのか等の判断は予後予測も交えて適切に行わなければならないが,その判断は医療環境や医療者によってばらつきがあることが報告されている2

さらに,患者が重症脳卒中であった場合,治療担当医師による6カ月時点の死亡リスクまたは予後不良な機能的転帰の推定値は比較的不正確であり,生活の質(Quality Of Life:QOL)の予測においてはさらに不正確であると報告されており3,高度急性期病院である当院でも同様に重症脳卒中患者の転帰として,回復期病院,または療養型病院かの判断に難渋することがしばしばある。

一方,回復期病院においては,厚生労働省の診療報酬A308回復期リハビリテーション病棟入院料の施設基準において,「新規入院患者のうちの,重症の患者の割合」,「入院時に重症であった患者の退院時の改善度」,「自宅等に退院する割合」等がアウトカムとして定められており4,改善の見込みの高い重症患者を積極的に受け入れていくことに大きな期待が寄せられている。

そして,前述したシームレスな医療体制の構築手段のひとつとして脳卒中地域連携クリティカルパス(以下,地域連携パス)があり,2008年度の診療報酬改定において保険診療としても認められている。日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院(以下,当院)が使用している名古屋脳卒中地域連携協議会作成の脳卒中地域連携パスにおいても,身体機能や動作能力のみならず,栄養状態,認知機能,既往歴,併存疾患等多岐にわたる項目が含まれているが,これらの項目の中で急性期の段階での予後予測に特に関与している因子を明らかにできれば,上述のような転帰判断の一助になるのではないかと考えた。

そこで,本研究では重症脳卒中患者の急性期における予後予測の精度向上を目指し,地域連携パスに記載されている項目の中から,回復期以降の日常生活活動(Activities of Daily Living:以下,ADL)改善に寄与する因子を特定することを目的とする。

対象および方法

1. 研究デザイン

本研究は当院から転院した患者の名古屋脳卒中地域連携協議会脳卒中パスver.401から収集した診療情報のみを用いた後方視的観察研究である。

2. 対象

対象は2021年1月から2023年12月までの間に,当院に入院後,地域連携パスを用いて転院し,後方病院を退院後に地域連携パスデータが戻ってきた脳卒中患者917名のうち,選択基準および除外基準を満たした213名とした。選択基準は脳卒中重症例とし,重症の基準としては,厚生労働省の診療報酬A308回復期リハビリテーション病棟入院料における「アウトカムに関する施設基準」で定められている重症患者割合において,重症患者をFunctional Independence Measure(以下,FIM)総得点55点以下と定めていること4を参考に,急性期病院退院時(以下,急退)FIM総得点が55点以下とした。除外基準はデータ欠損例とした。

3. 調査項目

地域連携パスより得られる基本情報,医学情報を調査項目とした。具体的には,年齢,性別,Body Mass Index(以下,BMI)分類(18.5未満を低栄養,18.5以上–25未満を標準,25以上を肥満として分類),病型(アテローム血栓性脳梗塞,ラクナ梗塞,心原性脳塞栓症,その他の脳梗塞,脳出血,くも膜下出血),発症時National Institutes of Health Stroke Scale(以下,NIHSS),各併存疾患の有無(高血圧,脂質異常症,糖尿病,心房細動),前記の併存疾患数,脳血管疾患既往の有無,心大血管疾患既往の有無,急性期病院在院日数,急退FIM運動項目得点数,認知項目得点数,および総得点数とした。

4. 群分け

厚生労働省の診療報酬A308回復期リハビリテーション病棟入院料1-2の施設基準において,重症患者の「改善」は日常生活機能評価4点以上,またはFIM16点以上の改善をさすことを参考にして4,FIM利得(回復期退院時FIM−急退FIM)16点以上を改善群,15点以下を非改善群とした。

5. 統計学的処理

研究対象者を上記の2群に分類し,調査項目のうち,年齢・発症時NIHSS・在院日数・急退FIM・並存疾患数に対してはKruskal–Wallisの検定を行い,性別・BMI分類・病型・並存疾患(高血圧,脂質異常症,糖尿病,心房細動)の有無・既往疾患(脳血管疾患,心大血管疾患)の有無に対してはχ2独立性の検定をそれぞれ行った。

続いて,回復期病院での改善の有無を従属変数とし,今回の調査項目を独立変数として,尤度比による変数増加法を用いた多重ロジスティック回帰分析を行い,予測式を作成した。統計学的解析にはIBM SPSS. Statistics ver.27を使用し,いずれの統計解析も有意水準は5%とした。

6. 倫理的配慮

「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に従い,筆頭著者の所属機関である日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院の倫理審査委員会による承認を得て実施した(整理番号:第1613号)。個人情報においては,研究対象者個人とは無関係の番号(対象識別番号)を付して管理した。研究対象者に関する情報と対象者識別番号とは,対応表を作成して照合可能とした。個人情報の秘密保護には十分配慮するとともに,対応表は研究責任者が厳重に保管している。また公表する情報には氏名や電話番号等の,研究対象者を直ちに特定できる情報を含まないようにした。

結果

1. 単変量解析

2群の患者属性を表1に示す。改善群は105例で年齢76±13歳,男性/女性で59/46名,病型はアテローム血栓性脳梗塞33名,ラクナ梗塞6名,心原性脳塞栓症19名,その他の脳梗塞9名,脳出血33名,くも膜下出血5名であった。非改善群は108例で年齢80±11歳,男性/女性で61/47名,病型はアテローム血栓性脳梗塞28名,ラクナ梗塞3名,心原性脳塞栓症26名,不明の脳梗塞9名,脳出血36名,くも膜下出血6名であった。2群間の比較の結果,年齢(p=0.01),BMI分類(p=0.00),急性期病院在院日数(p=0.02),急退FIM運動(p=0.00)/認知(p=0.00)/総得点(p=0.00)にそれぞれ有意差を認めた。年齢は改善群で有意に低く,BMI分類は改善群に低栄養が少なく,肥満が多かった。急性期病院在院日数は改善群で有意に短く,急退FIMはいずれも改善群が有意に高値であった。

表1 患者属性

項目全体
(n=213)
改善群(n=105)非改善群
(n=108)
P値
年齢(歳)(平均±SD)78±1276±1380±110.01*
性別(男/女)120/9359/4661/470.95
BMI分類(kg/m2
(低栄養/標準/肥満)
30/134/498/64/3322/70/160.00**
病型0.75
アテローム血栓性脳梗塞613328
ラクナ梗塞963
心原性脳塞栓症451926
その他の脳梗塞1899
脳出血693336
くも膜下出血1156
発症時NIHSS(点)(平均±SD)12±911±813±100.29
在院日数(日)(平均±SD)27±1825±1530±200.02*
急性期退院時FIM
運動(平均±SD)19±721±7.318±70.00**
認知(平均±SD)13±615±6.812±60.00**
総得点(平均±SD)32±1135±10.730±110.00**
併存疾患(有/無)
高血圧163/5083/2280/280.39
脂質異常症97/111649/5648/600.75
糖尿病54/15928/7726/820.66
心房細動47/16625/8022/860.55
併存疾患数(0/1/2/3/4)19/76/75/37/66/40/34/23/213/36/41/14/40.33
脳血管疾患既往(有/無)50/16320/8530/780.13
心疾患既往(有/無)38/17519/8619/890.92

*<0.05, **<0.01.

2. 多変量解析

回復期病院での改善の有無を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析の結果を表2に示す。独立変数はすべてにおいて分散拡大係数(VIF)が10以下(1.00–3.19)であり,多重共線性の問題は見られなかった。その上で,独立因子として,BMI分類(オッズ比:0.26,95%信頼区間:0.10–0.66),FIM総得点(オッズ比:0.92,95%信頼区間:088–0.97)と急性期病院在院日数(オッズ比:1.07,95%信頼区間:1.01–1.13)が選択された。その結果,モデル式はSCORE=4.31+(−1.34*BMI分類)+(−0.08*FIM総得点)+(0.06*在院日数)となり,モデルのχ2検定の結果はp<0.00であり,各変数も有意であった。Hosmer–Lemeshow検定の結果はp=0.26であり,判別的中率は71.1%であった。なお,カットオフ値を0.5に設定した場合,感度は39.0%,特異度は70.1%であった。

表2 多重ロジスティック回帰分析結果

項目オッズ比95%CIP値BSE
BMI分類0.260.10–0.660.01−1.340.47
FIM総得点0.920.88–0.970.00−0.080.03
在院日数1.071.01–1.130.020.060.03

考察

重症脳卒中患者を対象に,回復期病院において改善予測ができる因子を検討し,予測式を算出した。改善群を0,非改善群を1とした多重ロジスティック回帰分析の結果,BMI分類,FIM総得点,急性期病院在院日数が独立因子として選択された。これらの因子はいずれも地域連携パスという実臨床に根ざした情報インフラから取得可能な情報であり,急性期段階における予後予測の実用的手段のひとつとして臨床的意義を有すると言える。さらに,本研究では年齢やNIHSSといった予後に関連するとされる既存の重症度指標(修正不可能因子)ではなく,BMIやFIM等,入院後の介入によって変化可能な要素(修正可能因子)が予後と独立して関連した。先行研究ではNIHSSは急性期脳卒中の重症度を反映する有力な指標であり,機能予後との関連性も多く報告されており57,年齢も独立した予後因子として一般的に知られている89。しかし本研究では,これらの因子は予後予測モデルにおいては有意ではなく,代わりに,BMI, FIM総得点,在院日数といった,医療者の介入によって変化しうる要素が予後と独立して関連したことは,「重症であっても適切な介入により機能的回復は促進可能である」可能性が示唆されたと言える。

BMIに関しては,慢性期脳卒中患者における肥満と生命予後との逆相関(いわゆる「肥満パラドックス」)が報告されており10,急性期入院時の体重による「肥満パラドックス」の報告もあるが1112,急性期から回復期への移行期におけるBMIの機能予後への影響を明らかにした研究は少ない。低栄養状態が非改善群と関連した本研究の結果は,早期の栄養評価と介入の必要性を示したと推察できた。Paquereauらの報告13においても,脳卒中患者は通常急性期病院で約3 kg(BMI1–3)減少すると報告されており,また急性期入院中に低栄養となってしまうとする報告1415も見られることからも,急性期は低栄養状態に陥るリスクが高いと言えるため,急性期からの栄養管理がリハビリの効果を高めることに繋がる可能性を示していると考える。

次に,急退FIM総得点が予後予測の独立因子として挙げられたが,FIMは患者の身体機能と認知機能を包括的に評価できる指標であり,急性期でのFIM得点が高いほど,回復期での自立度が高くなる傾向にあることが先行研究でも示されている16。重症例であってもその傾向と同様の結果が示されており,改めて,「重症だから様子を見る」ではなく,「重症だからこそ早期から多職種で介入し,可塑性のある機能を最大限に引き出す」ような,急性期入院中のFIM得点の維持・改善を目的とした介入が,回復期での予後改善に影響する可能性が考えられた。

さらに,急性期病院での在院日数が短いことも独立因子として選択された。これについては,急性期病院から回復期病院への適切なタイミングでのシームレスな転院が,回復期リハビリの質的・量的確保に寄与し,最終的なADL自立度に好影響を与えると考えられた。先行研究においても,急性期からの適時転院がリハビリ成果に影響することが指摘されており17,本研究の結果はこれらの報告と一致する。本研究の対象は重症例であるが,重症であっても,急性期における必要十分な治療と合併症予防を迅速に行い,全身状態が安定し次第,早期に回復期リハビリへと移行することの重要性が示唆され,また適切なタイミングを逃すと患者の状態が安定していてもリハビリの機会が制限される可能性があったとも考えられる。いずれにせよ,急性期病院から回復期病院への適切なタイミングでのシームレスな転院が,回復期リハビリの質的・量的確保に寄与し,最終的なADL自立度に好影響を与えると考えられた。

一方,本研究は単施設における後方視的観察研究であり,感度分析や外部データによる検証を行っておらず,モデルの一般化可能性には限界がある。また,本モデルの感度は39.0%と限定的であるため,予後予測のスクリーニング単独指標としては限界があり,臨床では他の評価指標や多職種による総合的判断と併用することが望ましいと言える。今後は多施設共同研究や前向きコホート研究等によって,予測モデルの汎用性や因子の妥当性を検証する必要があると考える。

結論

重症脳卒中患者の回復期予後改善に関する独立因子として,BMI分類,急退FIM総得点,急性期在院日数が抽出された。これらは医療者が早期から介入可能な要素であるため,栄養管理や適切なリハビリの必要性が示唆された。一方で,本モデルは感度39.0%,特異度70.1%と予測精度に限界があるため,単独での臨床判断には不十分であり,リハビリ計画の一助としつつも臨床では他の評価指標や多職種による総合的判断と併用することが望ましいと考える。

謝辞

本研究にあたり,地域連携パスデータの運用,収集にご協力いただいた当院および連携病院の地域連携室の皆さま,助言をいただいた稲沢厚生病院脳神経外科の荒木芳生先生に感謝申し上げる。

利益相反

本研究に関して,開示すべき利益相反はない。

文献
 
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