2026 Volume 53 Issue 2 Pages 103-110
【目的】高齢外来患者を対象に,30秒椅子立ち上がりテスト(30-second Chair Stand Test:以下,CS-30)の年齢・性別別5段階評価(以下,CS-30グレード)を構築し,基本チェックリスト(Kihon Checklist:以下,KCL)との関連から妥当性を検証する。【方法】みなみ野循環器病院外来を受診した65歳以上の高齢者1753名を対象に,年齢・性別別パーセンタイルに基づいて5段階のCS-30グレードを設定し,KCL分類との関連性をχ2検定およびCochran-Armitage検定で分析した。【結果】構築したCS-30グレードでは,中央値帯(Grade 3)が最も多く,加齢に伴い低グレードの割合が増加した。KCL分類とは有意な関連が認められた。グレード上昇に伴いKCL分類におけるFrailの割合は段階的に減少した。【結論】CS-30グレードは現代高齢者の身体機能水準を反映し,フレイルの層別評価や初期スクリーニングにおける指標として有用である可能性が示唆された。
Objective: In this study, we aimed to develop a five-level grading system (CS-30 grade) for the 30-second chair stand test (CS-30) in older outpatients, stratified by age and sex, and assess its validity through its association with the Kihon Checklist (KCL).
Methods: In total, 1,753 outpatients aged ≥65 years were classified into five newly developed CS-30 grades based on age- and sex-specific percentiles. Association between the CS-30 grades and KCL classification was analyzed using the chi-square and Cochran–Armitage trend tests.
Results: The newly developed CS-30 grades showed a distribution wherein the majority of patients were classified into grade 3, and lower grades became increasingly prevalent with advancing age. We observed a significant association between the CS-30 grades and KCL classification. The proportion of individuals classified as frail decreased progressively with higher CS-30 grades.
Conclusion: The newly developed CS-30 grading system reflects the current physical functioning of older outpatients and may serve as a practical tool for stratifying frailty and supporting early screening. Further investigation is warranted to confirm its clinical utility in the community and clinical settings.
わが国では世界に類を見ない速度で超高齢社会が進行しており,2030年には65歳以上の人口が約30%,2045年には35%を超えると予測されている1)。このような急速な人口構造の変化は,医療・介護需要の増大をもたらし,健康寿命の延伸が喫緊の課題となっている。健康寿命を短縮させる要因として注目されているのがフレイルである。フレイルは,加齢に伴う身体的・心理的・社会的脆弱性が重なって生じる可逆的な状態であり2),早期にリスクを把握し,適切な身体活動や運動介入を行うことによりフレイルの進行を抑制し,健康寿命の延伸に寄与することが示されている3)。特に,下肢機能の低下は歩行障害や転倒リスクの増加とも深く関連しており,身体的フレイルの主要因として位置づけられている2)4)。このため,高齢者の下肢機能を簡便かつ客観的に評価できるツールの開発と普及が強く求められている。
30秒椅子立ち上がりテスト(30-second Chair Stand Test:以下,CS-30)は短時間で実施可能な下肢機能評価法として,医療機関のみならず地域におけるスクリーニングや介護予防の場でも広く用いられている5–7)。CS-30はJonesらにより考案され8),日本では中谷らにより普及・研究が進められ,年齢・性別別の5段階評価基準が提示され,多くの研究や実務で参照されてきた9)10)。しかし,この中谷らの従来基準は20年以上前に作成されたものであり,近年の高齢者に見られる身体機能水準や生活習慣の変化を反映していない可能性が示唆される。実際,令和5年度体力・運動能力調査では,平成10年頃と比較して高齢者の筋力や歩行機能など多くの指標で有意な向上が報告されており11),従来基準が現在の高齢者集団を過小評価している可能性がある。加えて,従来基準に基づく5段階評価が,現在の高齢者におけるフレイル状態をどの程度反映しているかについても,十分な検証は行われていない。したがって,従来基準が現代高齢者に適用可能かどうかを再検証し,必要に応じて新たな評価基準を再構築することが求められる。地域高齢者を対象としたフレイル評価として,基本チェックリスト(Kihon Checklist:以下,KCL)が広く活用されている。KCLは身体機能・栄養・口腔・認知・心理・社会的要因を含む25項目から構成される多面的評価指標であり,医療・介護現場における標準的な評価法として普及している12)。近年では,CS-30の成績がKCLによるフレイル評価と有意な関連を示すことが報告されており13),多面的フレイル評価との一定の整合性を有することが,下肢機能評価およびフレイル評価基準としての妥当性を担保する上で重要であると考えられる。
以上を踏まえ,本研究では,まず従来の中谷らによるCS-30評価基準を現代高齢者に適用した際の分布特性およびフレイル指標(KCL)との関連を検証し,その妥当性を再評価する。次に,年齢および性別階級に基づき新たなCS-30の5段階評価基準(以下,CS-30グレード)を構築し,KCLによるフレイル分類との関連性を検討することで,現代高齢者に適した下肢機能評価指標としての妥当性と実践的有用性を明らかにすることを目的とした。
本研究は,2021年3月から2025年2月の期間に,みなみ野循環器病院(以下,当院)の生活習慣病外来を受診した65歳以上の高齢者のうち,医師が全調査項目の実施が可能と判断し,同意が得られた1825名を対象とした。このうち,ペースメーカー装着者35名およびKCLまたはCS-30測定値に欠損のあった37名を除外し,最終的に1753名を解析対象とした。なお,身体機能や認知機能に関する明確な除外基準は設けていないが,医師の判断により調査手順の遂行が困難とされた者は対象外とした。本研究は身体的侵襲を伴わない横断研究であり,外来診療時にすべての対象者からインフォームド・コンセントを取得した。対象者には,研究参加を拒否しても不利益を受けないこと,およびいつでも自由に同意を撤回できることを説明した。研究の実施にあたっては,ヘルシンキ宣言に基づき,みなみ野循環器病院倫理審査委員会(承認番号:MJ-088)の承認を得た。診療録から得た個人情報は,研究目的の範囲内で匿名化のうえ厳重に管理した。
2. 調査項目1)基本情報年齢,性別,身長,Body Mass Index(以下,BMI),および主疾患に関する情報を,診療録より収集した。
2)フレイル評価(KCL)KCLは,「日常生活関連動作」「運動器機能」「低栄養」「口腔機能」「閉じこもり」「認知機能」「抑うつ気分」の7領域から構成される全25項目の自記式質問票である。各項目は「はい」「いいえ」で回答し,リスクがあると判断される選択肢に1点を付与する。総合得点が高いほど生活機能の低下が示唆されるため,本研究ではこの総合得点を用いた。KCLによるフレイルの分類は先行研究に基づき,0~3点をRobust, 4~7点をPrefrail, 8点以上をFrailと定義した5)。なお,Cochran-Armitage検定は2群を前提とした傾向性の検定であるため,同検定ではKCLをFrailと非Frail(Robust+Prefrail)に再分類して解析を行った。
3)体組成InBody S10(インボディ・ジャパン社製)を用いた多周波数生体電気インピーダンス法により,四肢筋肉量を測定し,身長の二乗で除した値をSkeletal Muscle Mass Index(以下,SMI)として算出した。
4)握力握力は油圧式握力計(Baseline® Hydraulic Hand Dynamometer)を用いて測定した。対象者は座位とし,肘関節は90°屈曲,前腕は中間位の姿勢から開始し,左右それぞれ2回ずつ測定し,そのうちの最大値(kg)を握力値として解析に用いた。
5)30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30)CS-30は中谷らの方法に準じて実施した9)。対象者は高さ40 cmの台に座り両腕を胸の前で組んだ状態を開始姿勢とした。「はじめ」の合図で台からの立ち上がりを開始し,完全伸展位での立位を1回とカウントした。測定は30秒間行い,終了時点で動作途中であってもその回数を1回として数えた。なお,測定前には立ち座り動作を5回練習し,十分な休息後に本測定(1回のみ)を行った。
3. 統計解析連続変数の正規性はShapiro-Wilk検定により確認し,正規分布に従う場合は平均値±標準偏差,非正規分布の場合は中央値[四分位範囲]で記述した。カテゴリ変数は件数(%)で示した。統計解析は,分布特性の分析,CS-30グレードの構築,および妥当性の検証の3段階で実施した。
1)従来基準による分布特性の確認従来のCS-30評価基準9)に基づく5段階分類を本研究の対象者に適用し,現代高齢者における身体機能の分布特性を確認した。
2)CS-30グレードの構築と分布比較先行研究を参考に10),年齢および性別階級ごとのCS-30測定値から25・50・75・90パーセンタイル値を算出し,Grade 1(非常に弱い)~Grade 5(非常に良好)に分類する新たな5段階評価基準(CS-30グレード)を構築した。構築したCS-30グレードの分布を図示し,Shapiro-Wilk検定により正規性を評価したうえで,従来基準との分布特性の違いを比較・検討した。
3)CS-30グレードの妥当性検証CS-30グレードの妥当性を検証するため,KCL得点に基づき対象者をRobust(0~3点),Prefrail(4~7点),Frail(8点以上)の3群に分類し,CS-30グレードとの関連性をクロス集計およびχ2検定により検討した。順序尺度変数間の線形的関連を確認するためにLinear-by-Linear Associationを算出し,両指標間の一致度はCramérのVで評価した。さらに,CS-30グレードの上昇に伴うフレイル(KCL分類)の傾向性についてはCochran-Armitage検定を用いて検証した。
KCL分類の3群(Robust/Prefrail/Frail)による背景因子の比較にはKruskal-Wallis検定(連続変数)またはχ2検定(カテゴリ変数)を使用し,性別および年齢階級別における身長の比較にはWelchの分散分析を実施した。統計解析にはIBM SPSS Statistics(ver.27)を使用し,Cochran-Armitage検定のみJMP Pro(ver.18)を使用した。有意水準は5%とした。
解析対象者は1753名(男性1114名,女性639名,平均年齢75.0歳)であり,男性が全体の63.5%を占めていた。主疾患では虚血性心疾患が55.7%と最も多かった(表1)。KCLの総合得点に基づく分類では,Robust群828名(47.3%),Prefrail群601名(34.2%),Frail群324名(18.5%)であった(表1,図1)。
| 全体 | |
|---|---|
| n=1753 | |
| 年齢(歳) | 75.0 (71.0–80.0) |
| 男性n(%) | 1114 (63.5) |
| KCL(点) | 4.0 (2.0–6.0) |
| Robust, n(%) | 828 (47.3) |
| Prefrail, n(%) | 601 (34.2) |
| Frail, n(%) | 324 (18.5) |
| 身体組成 | |
| 身長(cm) | 161.4 (154.0–167.0) |
| BMI(kg/m2) | 23.5 (21.6–25.5) |
| SMI(kg/m2) | 7.2 (6.3–7.9) |
| 主疾患,n(%) | |
| 虚血性心疾患 | 976 (55.7) |
| 心不全 | 73 (4.2) |
| 不整脈 | 283 (16.1) |
| 高血圧 | 335 (19.1) |
| 脂質異常症 | 79 (4.5) |
| 糖尿病 | 7 (0.4) |
| 運動機能 | |
| 握力(kg) | 30.0 (23.0–37.0) |
| CS-30(回数) | 20.0 (16.0–24.0) |
平均値±標準偏差または中央値(四分位範囲)またはn(%).
KCL:Kihon Checklist,BMI: Body Mass Index, SMI: Skeletal Muscle Mass Index, CS-30: 30-second Chair Stand Test.

KCLの3群(Robust/Prefrail/Frail)による背景因子の比較では,年齢,性別,SMI,握力,CS-30,KCL(すべてp<0.001),BMI(p=0.005)において有意な差が認められた。一方,主疾患については3群で有意な差は認められなかった(表2)。
| KCL(点) | Robust群(0–3) | Prefrail群(4–7) | Frail群(≥8) | p値 |
|---|---|---|---|---|
| n(%) | n=828 | n=601 | n=324 | |
| 年齢(歳) | 74.0 (70.0–79.0) | 76.0 (72.0–80.0) | 78.0 (73.0–82.0) | <0.001 |
| 性別(男),(%) | 590 (71.3%) | 342 (56.7%) | 182 (56.2%) | <0.001 |
| KCL(点) | 2.0 (1.0–2.0) | 5.0 (4.0–6.0) | 9.0 (8.0–11.0) | <0.001 |
| 身体組成 | ||||
| 身長(cm) | 160.9 (153.4–167.0) | 161.8 (154.3–167.0) | 162.4 (155.1–167.7) | 0.117 |
| BMI(kg/m2) | 23.3 (21.4–25.4) | 23.5 (21.6–25.6) | 24.1 (21.9–26.0) | 0.005 |
| SMI(kg/m2) | 7.5 (6.7–8.1) | 7.0 (6.2–7.9) | 6.8 (5.9–7.6) | <0.001 |
| 主疾患,n(%) | ||||
| 虚血性心疾患 | 461 (55.6) | 333 (55.4) | 182 (56.1) | 0.975 |
| 心不全 | 28 (3.4) | 25 (4.2) | 20 (6.2) | 0.103 |
| 不整脈 | 146 (17.6) | 93 (15.5) | 44 (13.6) | 0.209 |
| 高血圧 | 143 (17.3) | 128 (21.3) | 64 (19.8) | 0.153 |
| 脂質異常症 | 47 (5.7) | 20 (3.3) | 12 (3.7) | 0.117 |
| 糖尿病 | 3 (0.4) | 2 (0.3) | 2 (0.6) | 0.786 |
| 運動機能 | ||||
| 握力(kg) | 34.0 (26.0–39.0) | 28.0 (22.0–36.0) | 26.0 (21.0–32.4) | <0.001 |
| CS-30(回数) | 23.0 (19.0–26.8) | 19.0 (16.0–22.0) | 16.0 (13.3–19.8) | <0.001 |
平均値±標準偏差または中央値(四分位範囲)またはn(%).
統計学的解析:Kruskal-Wallis検定,χ2検定.
KCL:Kihon Checklist,BMI: Body Mass Index, SMI: Skeletal Muscle Mass Index, CS-30: 30-Second Chair Stand Test.
図2に,中谷らの従来基準に基づくCS-30の5段階評価を本研究対象者に適用した結果を示す。Grade 5(非常に良好)に分類された対象者が605名(34.5%)と最も多く,一方でGrade 1(非常に低い)に該当した者は24名(1.4%)にとどまった。

CS-30: 30-second Chair Stand Test.
KCL分類(Robust/Prefrail/Frail)との関連をχ2検定により検討した結果,有意な関連が認められた(χ2=288.7, df=8, p<0.001)。また,グレード上昇に伴いフレイル割合が減少する線形傾向が確認された(Linear-by-Linear Association=268.0, p<0.001)。効果量(CramérのV)は0.29であり,中程度の関連を示していた。
図3には,本研究で新たに構築したCS-30グレードに基づくスコア分布を示す。Grade 3(中央値帯)に分類された対象者が482名(27.5%)と最も多く,Grade 1(非常に弱い)419名(23.9%),Grade 2(やや弱い)392名(22.4%)と続いた。Grade 4(やや良好)249名(14.2%),Grade 5(非常に良好)211名(12.0%)であった。

CS-30: 30-second Chair Stand Test.
Shapiro-Wilk検定では,従来基準・CS-30グレードのいずれも正規分布からの逸脱が認められた(すべてp<0.05)。CS-30グレードのShapiro-Wilk統計量は従来基準より高値を示し(従来基準:0.915~0.977, CS-30グレード:0.944~0.971),分布のばらつきがより小さかった。
年齢階級別にみると,加齢に伴ってGrade 1およびGrade 2の割合が増加する傾向が認められた(表3)。なお,性別・年齢階級における身長の比較では,有意差は認められなかった(p=0.295)。
| n | 身長 | Grade 1 | Grade 2 | Grade 3 | Grade 4 | Grade 5 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 非常に弱い | 弱い | 普通 | 良好 | 非常に良い | |||
| 男性 | |||||||
| 65–69歳 | 241 | 162.8 cm (156.0–168.2) | ≦19回(10.4%) | 20–22回(15.8%) | 23–27回(32.0%) | 28–30回(28.1%) | ≧31回(13.7%) |
| 70–74歳 | 299 | 161.9 cm (153.8–167.5) | ≦17回(12.0%) | 18–21回(16.5%) | 22–25回(30.4%) | 26–29回(27.1%) | ≧30回(14.0%) |
| 75–79歳 | 301 | 160.6 cm (152.9–166.1) | ≦16回(13.6%) | 17–19回(18.0%) | 20–23回(29.2%) | 24–26回(25.3%) | ≧27回(13.9%) |
| 80–84歳 | 213 | 160.6 cm (155.5–166.0) | ≦14回(14.5%) | 15–17回(19.2%) | 18–22回(27.7%) | 23–25回(24.4%) | ≧26回(14.2%) |
| 85歳以上 | 60 | 158.8 cm (153.5–165.6) | ≦13回(15.0%) | 14–15回(20.0%) | 16–20回(26.7%) | 21–22回(23.3%) | ≧23回(15.0%) |
| 女性 | |||||||
| 65–69歳 | 83 | 161.4 cm (154.6–167.3) | ≦17回(11.2%) | 18–19回(16.3%) | 20–24回(33.7%) | 25–27回(26.1%) | ≧28回(12.7%) |
| 70–74歳 | 151 | 162.2 cm (153.5–168.7) | ≦16回(13.2%) | 17–19回(17.9%) | 20–23回(31.1%) | 24–26回(25.2%) | ≧27回(12.6%) |
| 75–79歳 | 196 | 161.0 cm (152.4–167.0) | ≦14回(14.1%) | 15–18回(19.0%) | 19–21回(30.2%) | 22–24回(23.5%) | ≧25回(13.2%) |
| 80–84歳 | 165 | 161.1 cm (153.4–166.7) | ≦13回(15.0%) | 14–16回(20.2%) | 17–19回(28.5%) | 20–24回(22.3%) | ≧25回(14.0%) |
| 85歳以上 | 44 | 160.6 cm (152.9–168.2) | ≦12回(16.0%) | 13–15回(21.0%) | 16–19回(27.0%) | 20–23回(21.0%) | ≧24回(15.0%) |
年齢および性別階級における身長の比較にはWelchの検定を用いた(p=0.295).
CS-30: 30-second Chair Stand Test.
表4には,CS-30グレードとKCL分類(Robust/Prefrail/Frail)とのクロス集計を示す。Grade 1ではPrefrailの割合が最も高く40.6%,Frailが35.5%,Robustは23.9%であった。対照的にGrade 5ではRobustが79.1%を占め,Frailは僅か5.7%にとどまった(図4)。CS-30グレードとKCL分類との関連性をχ2検定により分析した結果,有意な関連が認められた(χ2=261.58, df=8, p<0.001)。また,両指標の一致度を表すCramérのVは0.27であり,中程度の関連性を示していた。さらに,CS-30グレードの上昇に伴ってFrailの割合が段階的に減少する傾向についてCochran-Armitage検定を行った結果,有意な線形傾向が認められた(Z=11.59, p<0.001)。
| CS-30 Grade | Robust (n) | Pre-frail (n) | Frail (n) | Total (n) |
|---|---|---|---|---|
| Grade 1 | 100 (23.9%) | 170 (40.6%) | 149 (35.5%) | 419 |
| Grade 2 | 150 (38.3%) | 153 (39.0%) | 89 (22.7%) | 392 |
| Grade 3 | 240 (49.8%) | 182 (37.8%) | 60 (12.4%) | 482 |
| Grade 4 | 171 (68.7%) | 64 (25.7%) | 14 (5.6%) | 249 |
| Grade 5 | 167 (79.1%) | 32 (15.2%) | 12 (5.7%) | 211 |
各セル内の値は,該当者数および構成比(%).
χ2=261.58, 自由度=8, p<0.001.
CS-30: 30-second Chair Stand Test, KCL: Kihon Checklist.

表5には,従来基準とCS-30グレードの妥当性を客観的に比較するため,両基準におけるKCL分類との関連性および効果量を示した。いずれの基準においてもKCL分類との間に有意な関連および線形傾向が認められた(すべてp<0.001)。CramérのVは従来基準0.29, CS-30グレード0.27であり,いずれも中程度の関連を示した。
| 評価基準 | χ2値 | p値 | Linear-by-Linear Association | CramérのV |
|---|---|---|---|---|
| 従来基準 | 288.7 | <0.001 | 268.0 | 0.29 |
| CS-30グレード | 282.8 | <0.001 | 257.7 | 0.27 |
χ2値およびLinear-by-Linear Associationは,KCL分類(Robust/Prefrail/Frail)とCS-30各グレードとのクロス集計に基づく.
CS-30: 30-second Chair Stand Test, KCL: Kihon Checklist.
両基準間の対応関係を明確化するため,従来基準とCS-30グレードの再分類割合を表6に示した。従来基準でGrade 1に分類された対象者は,全員がCS-30グレードでもGrade 1に該当した。従来基準Grade 3では,CS-30グレードのGrade 1およびGrade 2に再分類された対象者がそれぞれ42.6%,50.3%と大半を占めた。また,従来基準Grade 5の対象者は,CS-30グレードでGrade 5が34.9%,Grade 4が39.1%,Grade 3が26.0%であった。その他の階級(Grade 2・Grade 4)においても,近接するグレードへの再分類がみられ,全体として従来基準より広い範囲に再分布していた。
| CS-30グレード | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| Grade 1 | Grade 2 | Grade 3 | Grade 4 | Grade 5 | ||
| 従来基準 | Grade 1 | 100.0 | ||||
| Grade 2 | 100.0 | |||||
| Grade 3 | 42.6 | 50.3 | 7.1 | |||
| Grade 4 | 31.3 | 66.0 | 2.7 | |||
| Grade 5 | 26.0 | 39.1 | 34.9 | |||
各行は従来基準の分類を示し,横方向にCS-30グレードへの再分類割合(%)を示す.
CS-30: 30-second Chair Stand Test.
本研究は,外来通院中の高齢者1753名を対象に,従来のCS-30評価基準(中谷らの基準)と,新たに構築したCS-30グレードの妥当性について比較検討した。
従来基準に基づいてCS-30の5段階分類を適用した結果,最も高いスコア群であるGrade 5に34.5%が集中し,Grade 1に分類された者は僅か1.4%であった。このように偏った分布では,評価対象者の大多数が高得点群に集中し,階層的な評価が困難となる可能性が示唆された。中谷らが報告した当時の分布では,CS-30の成績は年齢・性別別におおむね正規分布を示しており,評価基準として一定の妥当性を備えていた9)。しかし,本研究ではその分布に明らかな変化が認められ,現代高齢者では身体機能水準が当時より向上している可能性がある。本研究におけるCS-30の中央値は20回であり,2002年に中谷らが報告した70代の平均値(約17回)9)や,2014年のNakazonoらの報告値(18.5回)14)と比較して高い値を示した。この傾向は近年の全国調査における,高齢者の身体機能の向上とも一致する11)。こうした背景を踏まえ,年齢および性別階級ごとのパーセンタイルに基づいて新たなCS-30グレードを構築した。
Shapiro-Wilk検定では従来基準・CS-30グレードともに正規分布からの逸脱がみられたが,CS-30グレードの統計量は従来基準より高値であり,分布のばらつきも小さかった。このことは,CS-30グレードがより均質な階層構造を形成していることを意味し,従来基準で生じていた高得点群への過度な集中が緩和されたことを示している。また,加齢に伴い低グレードの割合が増加していたことから,CS-30グレードは年齢変化に対応した構造的妥当性を備えているといえる。これらの点を踏まえると,CS-30グレードは単なる分布上の修正にとどまらず,現代高齢者の体力水準を段階的に反映しうる評価指標としての有用性が高いと考えられる。
CS-30グレードはKCL分類との間に有意な関連を示し(p<0.001),グレードの上昇に伴いFrailの割合が段階的に減少した。効果量(CramérのV=0.27)は従来基準(0.29)と同等であり,CS-30グレードが従来の妥当性を維持しつつ,層別化の均質性を改善したと考えられる。
KCLは包括的なフレイル指標として広く用いられているが,主観的な回答に基づくため,身体機能の定量的評価には限界があるとされている15)。本研究では,CS-30グレードとKCL分類との間に有意な関連が認められ,身体機能評価と多面的フレイル評価との間に一定の整合性が確認された。今後は,KCLの身体機能下位項目との関連をより詳細に検討する必要がある。
本研究におけるKCL分類によるFrail有病率は18.5%であり,地域在住高齢者の報告(7.4~10.4%)16–18)より高く,医療機関利用者の報告(16.6%)19)に近い傾向を示した。生活習慣病を有する集団ではフレイルリスクが高まることが知られており17),本研究対象の特性を踏まえると,妥当な水準と考えられる。
中谷ら9)の対象は地域在住の自立高齢者であり活動的な者を含む一方,本研究は医療機関受診者を対象とする全調査を実施できた集団であった。中谷らの研究では生活習慣病の有無は明示されておらず,両者の健康背景を完全に同一視することはできない。したがって,対象特性の違いが成績に一部影響している可能性は否定できないが,本研究におけるCS-30の成績が中谷らの報告値と同等あるいはそれを上回ったことは,単なる対象差では説明しきれず,近年の高齢者全体の身体機能向上を反映している可能性が高いと考えられる。
従来基準とCS-30グレードの再分類割合でも,従来基準で高得点群に集中していた分布が,CS-30グレードでは広範な階層に再分布されていた。これらの結果は,CS-30グレードが現代高齢者に適した評価指標であり,従来基準の発展的改訂版としての意義を有することを示唆すると考えられる。
本研究にはいくつかの限界がある。
第一に,本研究の対象は,単一施設の生活習慣病外来を受診している高齢者であり,生活習慣病の罹患率は高齢者において一般的であるものの20),医療機関を受診していない地域在住高齢者を必ずしも代表するものではない。また,医師の診察において全調査項目の実施が可能と判断された者のみを対象としており,身体機能や認知機能に関する明確な除外基準は設けていない。このため,対象集団における機能的ばらつきの影響を完全には排除できない可能性がある。
第二に,本研究では薬剤情報を収集していない。薬剤の種類や服薬状況はフレイルや身体機能に影響を及ぼす重要な要因であるが,当院以外を主治医とする外来患者が多数含まれており,網羅的かつ正確な薬剤情報の把握が現実的に困難であった。そのため,薬剤の影響を十分に考慮できていない。
第三に,本研究で構築したCS-30グレードは身体機能に特化した単一指標に基づくものであり,KCLが評価する栄養,認知,心理・社会的側面を直接的には反映していない。実際,CS-30の成績が良好であってもKCL分類によりFrailと判定される例も確認されており,CS-30グレードはあくまでフレイルの一側面をとらえる補助的評価指標として活用することが望まれる。今後は,CS-30グレードの多施設・他地域における再現性の検証に加え,地域包括ケアや介護予防の現場における実装可能性の評価,および他の多面的評価指標や薬剤情報との組み合わせによる有用性の検討が求められる。
本研究では,高齢外来患者を対象に,CS-30に基づいて年齢および性別階級別の新たな5段階評価(CS-30グレード)を構築し,KCLによるフレイル分類との関連性および臨床的妥当性を検証した。その結果,CS-30グレードはフレイルの階層的把握に有効であり,KCLと統計的に有意な関連を示した。本研究で構築したCS-30グレードは,従来の基準を改善し,現代高齢者の身体機能水準を反映した簡便な評価指標として有用であることが示唆された。今後は,地域包括ケアや介護予防の現場における活用に加え,多面的評価に先立つ身体機能評価ツールとしての応用が期待される。
本研究にご協力頂いた患者様,データの収集にご協力頂いたみなみ野循環器病院リハビリテーション科のスタッフ,循環器内科の医師の皆様に深謝申し上げる。
本研究に関連しすべての著者に開示すべき利益相反はない。