2026 Volume 53 Issue 3 Pages 168-174
【目的】位相角(Phase angle:以下,PhA)は筋質と関連する指標であり,定期的なレジスタンストレーニングにより改善する。しかし,そのようなトレーニングが困難な対象者には,骨格筋電気刺激(Electrical muscle stimulation:以下,EMS)が,代替手段のひとつと考えられるが,EMSがPhAに及ぼす影響は未検討である。【方法】対象は,健康な成人男性12名であり,PhAの測定は,Baseline, 4週間のControl期間後,8週間のEMS介入後,4週間のDetraining後にそれぞれ実施した。介入期間におけるEMSは最大耐性強度で1日30分,週2回,8週間,両側の大腿部に実施した。【結果】下肢PhAは,Baselineと比較してEMS後,EMS前と比較してEMS後,EMS前と比較してDetraining後に有意に増加した。上肢のPhAは変化が認められなかった。【結論】健康な成人男性において,下肢に対する定期的なEMS介入は下肢PhAを改善させる。
Objective: Phase angle (PhA) is an indicator associated with muscle quality and is known to improve with regular resistance training. However, for individuals who have difficulty engaging in such training, electrical muscle stimulation (EMS) may serve as an alternative method. Nevertheless, the effects of EMS on PhA have not been fully investigated.
Methods: Twelve healthy adult males participated in this study. PhA of the upper and lower limbs was measured at baseline, after a 4-week control period, after an 8-week EMS intervention, and following a 4-week detraining period. During the intervention period, EMS was applied to both thighs at the maximum tolerable intensity for 30 minutes per day, twice a week, for 8 weeks.
Results: Lower limb PhA significantly increased compared to baseline, after the EMS intervention compared to before the intervention, and after the detraining period compared to before the intervention. No significant changes were observed in upper limb PhA before and after the intervention.
Conclusion: Regular EMS applied to the lower limbs improves lower-limb phase angle in healthy adult males.
人間の「立つ」,「歩く」といった基本的動作の実行において,主たる役割を担っている臓器のひとつが骨格筋である。その骨格筋機能を判断する代表的な指標として,「筋力」,「筋量」,「筋質」があり,多くの臨床場面で,さまざまな手段を用いて評価されている1)。加齢に伴い筋質は,筋力および筋量に先行して低下することが報告されており,骨格筋機能の低下を早期発見する上で重要な指標といえる2)3)。さらに,European Working Group on Sarcopenia in Older People(以下,EWGSOP)によると,筋質は「筋の構造および組成」を指す用語であり,筋萎縮時には筋内脂肪および結合組織の増加など質的な変化も起こりうることから,その評価を重要視している1)。
この筋質は,骨格筋への脂肪浸潤の程度により判定されると定義されており,Magnetic resonance imaging(MRI)およびComputed tomography(以下,CT)を用いた画像の減衰による評価がゴールドスタンダードとされている1)。しかし,撮影にかかるコスト,測定時間,侵襲を考慮すると骨格筋評価を目的とした撮影をルーチンに実施することは困難である上に,測定可能な施設も多くない。そのような状況において,近年,短時間で測定可能であり,測定スキルを問わず非侵襲的な,生体電気インピーダンス(Bioelectrical impedance analysis:以下,BIA)法により測定される位相角(Phase angle:以下,PhA)が筋質に関連することが多く報告されている1)4)。また,EWGSOPガイドラインにおいても,PhAが筋質の評価として使用できる可能性が記載されている1)。PhAは,細胞の健常性を反映するリアクタンス(reactance),体水分量に反比例するレジスタンス(resistance)から得られる指標であり,値が大きいほど細胞の構造的完成度が高いことを示す5)。生体における細胞膜は電荷を蓄積する能力を有しており,電流と電圧の位相の差を作りだし,細胞の構造的完成度が高いと大きな位相差が生じることで位相角は大きくなる6)。PhAは,女性より男性で大きく,加齢とともに低下し,Body mass index(以下,BMI)および筋量が大きいとPhAも大きな値となりやすい5)。Katoら4)によると,筋横断面積,年齢,BMI,性別で調整後も大腿部におけるCT画像におけるX線の吸収減衰度を示すCT値は独立して下肢のPhAに関連する因子であったと報告されており,PhAは筋質と関連する指標であることが示されている。
このPhAは定期的なレジスタンストレーニングにより改善することが報告されているが,これらの研究は健康な若年者や高齢者を対象に中強度で実施されたものであり,疾病者や低体力者にはトレーニングの実施が困難な可能性がある7–10)。そこで,疾病者および低体力者の筋質の改善へ向けたレジスタンストレーニングの代替策のひとつとして,骨格筋電気刺激(Electrical muscle stimulation:以下,EMS)を用いた介入が挙げられる。EMSは骨格筋に対して経皮的に電気刺激を行うことで,骨格筋が一定サイクルで収縮-弛緩を繰り返す物理療法のひとつであり,メタアナリシスにおいて,筋力および筋量の改善に有用であると報告されている11)12)。EMSは対象者の努力なく臥位もしくは座位で実施可能であるために,前述したPhAの改善へ向けた中強度以上のレジスタンストレーニングが実施困難な疾病者および低体力者であっても用いることが可能である。また,心肺機能に対する負担に関しても,高齢心不全患者を対象としたランダム化比較試験において,EMS実施前後で血圧や心拍数に有意差はなく,致死性不整脈も認められず安全性が示されている13)。さらに,従来のレジスタンストレーニングであればトレーニング中の転倒予防およびトレーニング実施状況の確認ために監視が必要であるが,EMSであればそのような実施者側の負担も軽減され,実施者および対象者の双方に有益であるといえる。
これらのことから,EMSは十分なレジスタンストレーニングが実施困難な対象者における筋質の改善の有効な手段となる可能性があるが,その効果は十分に検討されていない。そこで本研究では,将来的な低体力者および疾病者への応用を見据えた前段階として,健康な成人男性を対象に,定期的なEMSによる介入が筋質と関連するPhAに及ぼす影響を検討した。
対象は,健康な成人男性であり,現在の服薬,競技レベルの運動習慣がある者,研究の参加に同意が得られなかった者は除外し,12名(年齢:26.1±3.7歳,身長:173.0±5.0 cm,体重:65.3±8.4 kg,体脂肪率:15.0±4.1%)とした。
2. 実験のプロトコール実験のプロトコールは図1に示すとおりであり,Baselineの後,4週間のControl期間,8週間のEMSによる介入期間,4週間のDetraining期間を設けた単群の前後比較試験である。Baseline(以下,Base),Pre-training(以下,Pre-TR),Post-training(以下,Post-TR),Detraining(以下,DeTR)における4時点で下記の骨格筋機能評価を実施した。なお,先行研究に準じ,Post-TRの骨格筋機能評価は,最後のEMS実施から72時間後以降に実施した7–9)。また,対象者には,DeTR期間はControl期間と類似した生活を送るように指示し,身体活動制限および食事制限などは設けなかった。

Baselineの骨格筋機能の評価を行い,その後4週間のControl期間,8週間のEMSによる介入期間,4週間のDetraining期間を設けた.Base, Pre-TR, Post-TR, DeTRにおける4時点で骨格筋機能の評価を実施した.
Base: Baseline, Pre-TR: Pre-training, Post-TR: Post-training, DeTR: Detraining.
EMS介入は,介護トレーニング用EMS装置(パルスケアGMS-01,株式会社ホーマーイオン研究所)を使用した。下腹部に腰ベルト,両側大腿に膝上ベルトを装着し,経皮的に両側の大腿部に電気刺激を行った(図2)。電極部分のベルト幅は5.4 cmであり,事前に水またはぬるま湯で濡らしたものを装着した。EMS装置は,刺激周波数は20 Hz,パルス幅は100–250 μ sec,刺激波形は指数関数的漸増波,刺激時間サイクルは5秒on–2秒offに設定されたものを使用した。EMSのプロトコールは,最大耐性強度(11.2±2.5 mA)で1日30分,週2回,8週間,両側の大腿部に実施した。EMS介入は気温20–25°Cに設定された室内において,パソコン作業中に椅子座位で実施し,作業に支障をきたさない範囲の最大耐性強度に各々で設定するように指示した。なお,パソコン作業は,座位作業のひとつであり,低体力者および疾病者に対する介入を見据えた上で,在宅環境,リハビリテーション施設などにおいても置換可能であると考えられる。

図に示す通り,腰および両側の膝上に刺激ベルトを装着し,両側の大腿部に電気刺激を行った.
マルチ周波数体組成計(株式会社タニタ,MC-780A-N)を用いて測定した。測定方法はガイドラインで推奨されている方法に準じ,運動および食事直後の測定は避け,電極接触領域は直前にアルコール消毒を行った14)。また,すべての対象者において測定時刻は17–18時に統一した。PhAは50 kHz時の値を採用し,両上肢のPhAの平均を上肢PhAの値(°),両下肢のPhAとして出力されたものを下肢PhAの値(°)とした。骨格筋指数(Skeletal muscle mass index:以下,SMI)は,Asian Working Group for Sarcopeniaが推奨している算出方法を参考に,両上肢の筋量の合計を身長の二乗で除した値を上肢SMIの値(kg/m2),両下肢の筋量の合計を身長の二乗で除した値を下肢SMIの値(kg/m2)とした2)。
2)握力測定スメドレー式デジタル握力計(竹井機器工業株式会社,デジタル握力計グリップ-D)を用いて測定した。測定肢位は立位とし,両側上肢で1回ずつ測定した。平均値を体重で除した値(%BW)を算出した。
3)等尺性膝伸展筋力ハンドヘルドダイナモメーター(アニマ株式会社,μTasF-100)を用いて測定した。測定肢位および測定方法は先行研究を参考にした15)。端座位にて両上肢を軽度外転位で検査台に接地し,下腿が下垂する位置で測定した。約5秒間の最大努力による等尺性膝伸展運動を両側下肢でそれぞれ1回ずつ測定し,平均値を体重で除した値を等尺性膝伸展筋力の値(%BW)とした。
5. 主要および副次アウトカム主要アウトカムは,8週間のEMS実施後における下肢PhAの変化とした。また,副次アウトカムは,同地点における下肢SMIおよび等尺性膝伸展筋力の変化とした。
6. 統計解析すべての対象者はプロトコールを予定通り完遂し,得られたデータを解析に使用した。Base, Pre-TR, Post-TR,およびDeTRにおいて測定した各測定項目については,Mauchlyの球面性検定を行い,球面性を仮定できた場合,反復測定による一元配置分散分析を行い,事後検定としてTukeyの多重比較法を行った。
また,Post-TRおよびPre-TRにおける下肢PhA,等尺性膝伸展筋力の値を用いて変化率を算出し,両者の関連を相関分析により検討した。
なお,データの解析には,統計解析ソフト(SPSS ver.29.0.1, IBM社)を使用し,有意水準は5%とした。
7. 倫理的配慮本研究の実施に際して,徳島大学総合科学部人間科学分野における研究倫理委員会の承認後,対象者には事前に文章および口頭にて研究の内容・趣旨,参加の拒否・撤回・中断などについて説明し,書面にて承諾を得た上で実施した(承認番号:151)。
下肢PhA(°)の結果は,図3(右)に示す通りであり,Base, Pre-TR, Post-TR, DeTRにおいて,それぞれ,6.3±0.5(°),6.2±0.4(°),6.6±0.4(°),6.5±0.5(°)であった。反復測定による一元配置分散分析の結果,主効果が認められたため,多重比較を行った。BaseおよびPost-TR, Pre-TRおよびPost-TR, Pre-TRおよびDeTRとの間にそれぞれ有意な差が認められた(F=7.12, p<0.05)。上肢PhA(°)の結果は,図3(左)に示す通りであり,Base, Pre-TR, Post-TR, DeTRにおいて,それぞれ,6.8±0.6(°),6.9±0.5(°),6.9±0.6(°),6.8±0.6(°)であった。反復測定による一元配置分散分析の結果,各測定時期に有意な差は認められなかった(F=0.26, p=0.85)。

*: p<0.05. Base: Baseline, Pre-TR: Pre-training, Post-TR: Post-training, DeTR: Detraining.
その他の測定項目である,体重,体脂肪率,体水分量,上肢SMI,下肢SMI,握力,等尺性膝伸展筋力の結果については,表1に示すとおりである。反復測定による一元配置分散分析の結果,体重および等尺性膝伸展筋力において主効果が認められたため,多重比較を行った。体重は,BaseおよびDeTR, Pre-TRおよびDeTRとの間にそれぞれ有意な差が認められた。等尺性膝伸展筋力は,BaseおよびPost-TR, Pre-TRおよびPost-TRの間にそれぞれ有意な差が認められた。なお,体脂肪率,体水分量,上肢SMI,下肢SMI,および握力においては,主効果が認められなかった。
| 項目 | Baseline | Pre-training | Post-training | Detraining | p | F |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 上肢PhA (°) | 6.8±0.6 | 6.9±0.5 | 6.9 ±0.6 | 6.8±0.6 | 0.85 | 0.26 |
| 下肢PhA (°) | 6.3±0.5 | 6.2±0.4 | 6.6±0.4*† | 6.5±0.5† | < 0.05 | 7.12 |
| 体重(kg) | 65.3±8.4 | 65.7±8.3 | 66.2±8.6 | 66.8±8.7*† | < 0.05 | 7.00 |
| 体脂肪率(%) | 15.0±4.1 | 15.5±4.5 | 15.8±4.6 | 15.6±4.5 | 0.24 | 1.46 |
| 体水分量(kg) | 38.9±4.5 | 38.9±4.6 | 38.6±4.3 | 39.3±4.1 | 0.14 | 2.12 |
| 上肢SMI (kg/m2) | 1.8±0.2 | 1.8±0.2 | 1.8±0.2 | 1.8±0.2 | 0.20 | 1.64 |
| 下肢SMI (kg/m2) | 6.9±0.6 | 6.9±0.6 | 6.9±0.6 | 7.0±0.5 | 0.94 | 2.32 |
| 握力(%BW) | 66.7±9.5 | 65.5±8.3 | 63.9±7.7 | 63.7±7.4 | 0.06 | 2.81 |
| 等尺性膝伸展筋力(%BW) | 55.0±8.8 | 54.0±6.7 | 60.0±9.3*† | 57.7±10.6 | < 0.05 | 6.41 |
*: vs. Baseline (p<0.05). †: vs. Pre-training (p<0.05).
PhA: Phase angle, SMI: Skeletal muscle mass index, BW: Body weight.
また,Pre-TR, Post-TRにおける下肢PhAおよび等尺性膝伸展筋力の変化率(下肢PhA:5.1±3.8%,等尺性膝伸展筋力:11.3±10.5%)の関連について検討した結果,両者に有意な相関関係は認められなかった(r=−0.08, p=0.80)。
BIA法を用いて評価されるPhAは筋質と関連する指標とされ,値が大きいほど筋質が優れていると評される1)4)。本研究では,成人男性を対象に下肢へのEMSによる1回30分,週2回,8週間の介入が筋質と関連するPhAに及ぼす影響を検討したところ,EMSの刺激部位である下肢のPhAが介入前と比較して介入後に改善した。
PhAは,筋質と関連する指標のひとつであり,筋力および筋量とは独立した骨格筋指標として用いられている1)。男性の急性心筋梗塞患者に対する検討においては,握力,等尺性膝伸展筋力および,下肢SMIで調整した場合であっても,下肢PhAが独立して運動耐容能に関連する骨格筋指標であると報告されており,PhAは筋力および筋量とは異なる側面を評価している指標であると考えられる16)。したがって,筋質と関連するPhAの改善は,筋力および筋量の変化とは異なる側面の骨格筋機能に変化が生じた可能性を示唆している。
また,本研究では,トレーニング部位である下肢のPhAのみ改善が認められ,トレーニングを行なっていない上肢のPhAは変化が認められなかったことから,下肢PhAの改善はEMSの影響によるものであると考えられる。すなわち,PhAの変化はトレーニング部位に対して特異的に生じる変化であり,EMSによる局所への介入効果を示していると示唆される。
さらに,改善したPhAは4週間のDetraining期間後においても維持されており,このように改善したPhAが維持される期間に関する検証は十分に行われておらず,新たな知見のひとつであると考えられる。この結果から,PhAの変化はトレーニング直後に生じた一過性の変化ではなく,骨格筋細胞の構造的完成度が高い状態が一定期間保持されることを示している可能性が考えられる。
筋質を反映するPhAがEMSにより改善するメカニズムとして以下の2点が考えられる。1点目に,Iijimaら17)は,レジスタンストレーニングにより骨格筋で発現・誘導されたperoxisome proliferators-activated receptor-γ co-activator-1α(PGC-1α)により,ミトコンドリアでの脂肪酸酸化が促進されることで間葉系前駆細胞の脂肪分化が抑制され,その結果として筋内脂肪が減少するメカニズムを報告している。2点目に,ラットに対して7日間のEMSを行った先行研究において,脂肪酸トランスロカーゼ/CD36と呼ばれる主要な脂肪酸輸送タンパク質の発現が増加することが報告されており18),このような変化は,骨格筋において,脂質成分をエネルギー源として利用する能力が向上したことを示すものであり,PhAが改善したメカニズムである可能性がある19)。
本研究では下肢へのEMS介入により筋力の指標である等尺性膝伸展筋力の改善も認められた。EMSによる介入の効果を示したメタアナリシスにおいても,EMSは筋力の改善に有効であると示されている11)。また,レジスタンストレーニングにより,PhAおよび膝伸展筋力の両者が改善したという報告があり,EMSを用いた本研究と同様の結果であった7)10)。一方で,レジスタンストレーニングによる筋力の改善は,神経学的な要素である動員される運動単位の増加が先行し,その後,筋の肥大に起因すると報告されているが20),EMSによる筋力の改善に,上記のいずれの要素が主たる要因であるか報告されたものはない。本研究において,Pre-TR, Post-TRにおける下肢PhAおよび等尺性膝伸展筋力の変化率の関連について検討した結果,PhAと筋力の改善に関連性があるとはいえず,それぞれの改善は異なる要素が影響している可能性が考えられる。
さらに,本研究では筋量の指標としてBIA法によるSMIを評価したが,上肢および下肢のいずれにおいても有意な変化は認められなかった。レジスタンストレーニングによる介入の効果を検討した先行研究においても,CTにより評価した筋量の変化なしに筋質が改善したもの8),また,筋量が低下したにもかかわらず,筋質が改善したものが報告されており21),両者の変化は乖離する可能性がある。その原因として,CTおよび骨格筋エコーによる測定では筋内脂肪も含めた筋の大きさを評価するため,筋内脂肪の減少が筋量を減少させることが指摘されており,筋量とは別にPhAの評価を行うことが重要であると示唆される21)。
本研究の限界および課題として以下の4点が挙げられる。1点目に,対象者を若年の健常者としたため,高齢者,疾病者,低体力者,運動器疾患患者などにおいても,EMSの介入のみでPhAの改善が得られるか否かは不明である。一方で,EMSは,従来の中~高強度レジスタンストレーニングが実施困難な対象者に対して,臥位もしくは座位のまま安全に実施できる点が利点である。特に,入院中の高齢者の活動量は極めて低く22),下肢筋活動の不足は筋質低下につながると考えられ,そのような対象者で今後検討していく必要がある。2点目に,本研究はPhAの改善を目的にしたEMSを高齢者および疾病者などに適応していくことが将来的に可能か否かを検討したパイロットスタディであり,サンプルサイズの決定方法に関する明確な根拠がない。また,対象者数が少なく,非介入群を設定できていない点も課題である。今後は,非介入群を設けた無作為化比較試験を行い,EMSによる介入効果を強く示すことが必要である。しかし,EMSによる介入を行わなかった上肢のPhAは研究期間を通して変化は認められず,このことから下肢PhAの改善は刺激部位である下肢へのEMS介入の影響を受けたものと示唆された。3点目に,EMS刺激強度および時間に関して,確立されたプロトコールがない点である。入院患者の筋力および筋量に対するEMSの効果を検証したシステマティックレビューにおいて,各研究に用いられた刺激周波数は10~200 Hzと幅広く,1回の実施時間においても30分未満の実施が9件,30~60分の実施が19件,60分以上の実施が7件であったと報告されている11)。刺激強度および刺激時間は運動処方を行う上で重要な要素であり,今後はEMSにより筋質を改善させるためのプロトコールを検討する必要がある。また,EMS刺激装置に関して,近年は本研究で用いたベルト型の刺激装置が多く用いられているが,従来は小さな電極を貼付することで筋収縮を誘導していた。後者は,少量の電流で効果的な筋収縮を得るには神経筋接合部(motor point)の近傍に正確に電極を設置する必要があるうえに,ベルト型と比較してより局所への刺激となるために疼痛も伴いやすい23)。したがって,刺激方法の異なる両者に使用された刺激強度を一概に比較することは難しく,骨格筋機能の改善効果も含めて検討していく必要がある。4点目に,本研究で筋質を反映する指標として用いたPhAは筋質の変化のみならず,うっ血,炎症および細胞量の変化も反映する指標とされている点である24)。また,BIAによる測定は,ペースメーカー留置後の対象者には禁忌とされている点14),大部分の測定機器は立位保持が困難な対象者では測定困難である点,筋量および筋質の両者を同一の測定方法で可視化できる点を踏まえると骨格筋エコーの評価を用いた筋質の検討も行なっていくべきである。
健康な成人男性を対象にした定期的な下肢へのEMS介入が筋質と関連するPhAに及ぼす影響を調査した結果,EMSの刺激部位である下肢のPhAが改善した。今後,レジスタンストレーニングが実施困難な低体力者および疾病者において,EMSによる介入がPhAの変化に及ぼす影響を検討する必要がある。
本研究に対して,全著者において利益相反関係にある企業,団体などはない。