Physical Therapy Japan
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Research Reports (Original Article)
Comorbidity Count and Early Neurological Deterioration in Branch Atheromatous Disease
A Single-center Retrospective Cohort Study
Daisuke KOMIYA Kousei OOTSURU
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2026 Volume 53 Issue 3 Pages 183-191

Details
要旨

【目的】本研究の目的はBranch atheromatous disease(以下,BAD)における早期神経学的悪化(early neurological deterioration:以下,END)と併存疾患数の関連を検討することである。【方法】単施設・後方視的観察研究としてBAD患者132例を解析した。ENDは入院後72時間以内に,National Institutes of Health Stroke Scale (NIHSS)スコアが総合2点以上,または運動項目が1点以上悪化した場合と定義し,併存疾患数は入院時点で治療中または経過観察中の疾患件数と定義した。併存疾患数とENDの関連を多変量ロジスティック回帰分析で評価した。【結果】併存疾患数はENDと独立して関連した(オッズ比1.44)。【結論】併存疾患数はENDと関連した。予測指標としての有用性は今後の検証を要する。

Abstract

Objective: We investigated whether the number of comorbidities at admission is associated with early neurological deterioration (END) in patients with Branch atheromatous disease (BAD).

Methods: We retrospectively analyzed 132 consecutive patients with BAD admitted between April 2014 and November 2022. END was defined as an increase of ≥2 points in the total National Institutes of Health Stroke Scale (NIHSS) score or ≥1 point in the NIHSS motor subscore within 72 hours of admission. Comorbidity count was defined as the number of chronic conditions under active treatment and/or those observed at admission. Associations were assessed using multivariable logistic regression with missing data handled through multiple imputation (m=20). The results were pooled using Rubin’s rules. The primary model was adjusted for the serum uric acid/serum creatinine ratio, neutrophil-to-lymphocyte ratio, female sex, NIHSS score at admission, and low-density lipoprotein cholesterol. A supplementary analysis used an additionally adjusted model including hypertension, argatroban use, and B-type natriuretic peptide.

Results: END occurred in 52 patients (39.4%). The median comorbidity count was higher in the END group than in the non-END group (2.5 [interquartile range (IQR), 2.0–3.25] vs. 2.0 [IQR, 1.0–3.0]; p=0.004). In the primary model, the comorbidity count was independently associated with END (odds ratio [OR], 1.44; 95% confidence interval [95%CI], 1.08–1.93; p=0.013). In the additionally adjusted model, the comorbidity count remained independently associated with END (adjusted OR, 1.58; 95% CI, 1.13–2.20; p=0.007).

Conclusions: In this single-center retrospective cohort of patients with BAD, a higher comorbidity count at admission was associated with END in multivariable analyses. The prognostic value of comorbidity count should be interpreted cautiously and requires further validation.

はじめに

Branch atheromatous disease(以下,BAD)は,穿通動脈起始部におけるアテローム性プラークによる閉塞を特徴とする虚血性脳卒中の一亜型である1。BADは初期症状が軽微であっても,発症後数日以内に早期神経学的悪化(early neurological deterioration:以下,END)をきたしやすく,ENDの発生率は14.7–39.4%と報告され,ENDはその後の機能低下とも関連している24

ENDの早期同定は,急性期診療における治療選択や管理方針の検討において臨床上重要である。例えば,進行性脳梗塞に対する治療介入は転帰改善と関連すると報告される一方5,出血リスクなどを踏まえた適応判断については見解が分かれている67。このため,ENDハイリスク患者を入院早期に層別化できれば,治療選択の検討に役立つ可能性がある。また理学療法においても,離床計画や運動療法の進行,神経症状モニタリングの頻度を検討するうえで,ENDリスクの早期層別化は安全管理に有用となる可能性がある。

既報においてはEND関連因子として,テント下病変,女性,2型糖尿病(type 2 diabetes mellitus:以下,T2DM)などの臨床因子810,血清尿酸/クレアチニン比(serum uric acid-to-creatinine ratio:以下,SUA/SCr)などのバイオマーカー31113,中大脳動脈プラークなどの血管所見1416が報告されている。しかし,これらの一部は追加の検査や高度な画像診断を要し,日常診療での適用には制約がある。

併存疾患負荷の高さは,脳卒中後の障害,死亡,生活の質の低下と関連することが知られている1719。他領域では,併存疾患や関連臨床因子を取り入れた予後スコアが広く用いられており,Charlson Comorbidity Index(以下,CCI)20に加え,がん領域のAdult Comorbidity Evaluation-27,同種造血細胞移植前評価のhematopoietic cell transplantation (HCT)-specific comorbidity index,整形外科領域のNottingham Hip Fracture Scoreが代表例である2123。また,対象疾患や測定時点が研究により異なる点に留意を要するが,プライマリケア領域の系統的レビューでは,併存疾患の単純件数が広く用いられ,多くのアウトカムで複雑な指標に匹敵する予測能を示し,実装も容易と報告されている24。一方,BADにおけるENDとの関連についての報告は限られている。入院時の併存疾患数(以下,併存疾患数)は入院早期に把握でき,追加の特殊検査を要しない。そこで本研究では,併存疾患数とBADにおけるENDとの関連を検討し,簡便で実装しやすいリスク層別化指標としての可能性を評価した。

対象および方法

1. 研究デザインと対象

本研究は,320床を有する日本の急性期病院である地方独立行政法人大牟田市立病院(以下,当院)における単施設・後方視的観察研究である。対象は,2014年4月~2022年11月にBADと診断され,入院後24時間以内の磁気共鳴画像法における拡散強調画像で,レンズ核線条体動脈または橋穿通枝領域に限局する急性期脳梗塞を確認できた症例とした2。診断は専門医が臨床・画像所見に基づき確定した。大血管閉塞または心原性塞栓が疑われる症例は,磁気共鳴血管撮影法・心電図・経胸壁心エコーで除外した。また,発症から入院まで4日以上を経過した症例,および院内死亡例を除外した。研究の性質上,事前のサンプルサイズ設計は行わず,期間内の適格例を連続例として登録した。以上の基準により,142例をスクリーニングし,10例を除外後,132例を最終解析対象とした。

ENDは,入院後72時間以内にNational Institutes of Health Stroke Scale(以下,NIHSS)スコアが総合2点以上,または運動項目が1点以上増悪した場合と定義した12。入院時NIHSSが欠測の場合は,脳卒中専門医が入院時の神経診察記録に基づき,NIHSSの各項目(意識,視線,視野,顔面麻痺,上肢運動,下肢運動,運動失調,感覚,言語,構音,消去・無視)を後方視的にスコア化して入院時NIHSS総合点および運動項目スコアを再構成した。再構成した入院時スコアと入院後72時間以内に記録されたNIHSS評価を比較し,上記定義に基づいてENDの有無を判定した。

2. ベースラインデータの収集

1)患者背景・臨床特性

年齢,性別,発症前modified Rankin Scale(以下,mRS),Body Mass Index(BMI),喫煙(現喫煙の有無),病変部位(テント上/テント下),入院時NIHSSスコアを収集した。

2)併存疾患評価

併存疾患数は,入院時点で治療中または経過観察中の慢性疾患の件数として定義した。併存疾患の抽出は主治医の診療録を基本とし,必要に応じて入院時問診記録,既往歴欄,紹介状,入院時持参薬,過去の病名登録履歴を情報源として確認した。慢性疾患は,入院時点で継続的な管理(治療または定期的フォローアップ)を要する病態とし,急性期の一過性変化のみで継続管理を要しないものは除外した。カウントは原則として疾患単位で行い,同一病態の重複記載(例:糖尿病性腎症と慢性腎臓病)は1件として扱った。さらに,判別可能な記載がある場合,同一臓器系の疾患であっても病態機序が明らかに異なる慢性疾患を併存している場合(例:経過観察中のウイルス性肝炎とアルコール性肝障害)は別疾患としてカウントした。

併存疾患の分布は再現性の観点から,あらかじめ定義した13カテゴリに集約して記述した。加えて,CCIを算出した20。高血圧(hypertension:以下,HT),T2DM,脂質異常症(dyslipidemia:以下,DL)は,13カテゴリの枠組みに含めたうえで,主要な心血管・代謝性併存症として解析上の解釈を明確にする目的で個別にその有無を抽出した。

3)血液・生化学検査

すべての検査値は入院1日目に採取した血液検体を用い,当院の標準検査法で測定した。血液学的指標はヘモグロビン,血小板数,白血球数,好中球・リンパ球百分率,好中球/リンパ球比(neutrophil-to-lymphocyte ratio:以下,NLR)とし,生化学的指標はクレアチニン,推算糸球体濾過量,尿酸,SUA/SCr,C反応性タンパク,脳性ナトリウム利尿ペプチド(B-type natriuretic peptide:以下,BNP)とした。加えて,ヘモグロビンA1c,プロトロンビン時間,プロトロンビン時間国際標準比,活性化部分トロンボプラスチン時間,総タンパク,アルブミン,総コレステロール,低密度リポタンパクコレステロール(low-density lipoprotein cholesterol:以下,LDL-C),中性脂肪を収集した。なお,発症から採血までの期間は記録していない。

4)薬物治療

入院中の薬物治療は診療録および処方記録から抽出した。収集対象薬剤はアルガトロバン,ヘパリン,オザグレル,エダラボン,デキストラン,組換え組織型プラスミノーゲンアクチベータ(recombinant tissue plasminogen activator:以下,rt-PA)とした。抗血小板療法は二剤併用抗血小板療法または単剤抗血小板療法に分類し,具体的な薬剤の組合せまたは単剤の内訳,ならびにデキストラン併用の有無を記録した。治療選択は担当医の裁量によった。

3. 統計学的処理

解析対象をEND群と非END群に群別し,連続変数は分布に応じてt検定またはMann–WhitneyのU検定,カテゴリ変数はχ2検定またはFisherの正確確率検定で群間比較した。

欠測値は多重代入により補完した。代入モデルには,背景因子,血管危険因子,併存疾患指標,入院時重症度,転帰(END),検査値,治療内容,および時間関連変数を含めた。時間関連変数のうち,入院からENDまでの日数は欠測補完の補助変数として代入モデルに含めたが,主要解析の説明変数としては用いなかった。SUA/SCrは派生変数であるが,本研究では比(SUA/SCr)そのものを代入対象とした。多重代入の設定は代入回数m=20,反復回数10とした。代入後の推定値はRubinのルールにより統合し,オッズ比(odds ratio:以下,OR),95%信頼区間(95% confidence interval:以下,95%CI),p値を算出した。主要な欠測率は,発症前mRS(21.2%),入院時NIHSS(19.7%),BNP(12.1%),SUA/SCr(13.6%)およびLDL-C(6.8%)であった。多重代入モデルに投入した変数一覧と欠測率は補遺表にまとめた。

ENDとの独立した関連は多変量ロジスティック回帰分析で評価した。主要説明変数は併存疾患数とし,既報および臨床的重要性に基づき,SUA/SCr,NLR,性別(女性),入院時NIHSSスコア,LDL-Cを共変量として同時に投入し,これをベースモデルと定義した。また,2群比較で有意差を認め,交絡の可能性がある変数(HT,アルガトロバン使用,BNP)を追加した追加調整モデルでの補足解析を実施し,主要説明変数の推定値が追加調整後も大きく変化しないかを確認した。さらに,欠測補完の影響を補足的に評価するため,ベースモデルと同一共変量を用いて,すべての共変量が欠測のない症例に限定した完全ケース解析による多変量ロジスティック回帰分析を実施した。

多重共線性は分散拡大係数(variance inflation factor:以下,VIF)で評価し,VIF≧5を多重共線性ありと判定した。併存疾患数については,臨床での運用を想定して二値分類のcutoffを検討した。併存疾患数を0–6の各cutoffで「cutoff以上」を陽性として二値化し,判別的中率を算出した。判別的中率が最大となるcutoffを採用し,同cutoffにおける感度,特異度,陽性的中率(positive predictive value:以下,PPV),陰性的中率(negative predictive value:以下,NPV)を算出した。統計解析はPython(scikit-learn)およびEZRを用いて実施した。モデル適合はHosmer–Lemeshow検定により確認した。すべての検定は両側検定とし,有意水準はp<0.05とした。

4. 倫理的配慮

本研究は,大牟田市立病院倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:第2415号)。研究はヘルシンキ宣言に準拠し,診療情報は個人が特定されないよう匿名化して取り扱った。本研究は後方視的観察研究であり,侵襲的介入および患者への直接的な接触を伴わないため,文書によるインフォームドコンセントは取得しなかった。研究実施に関する情報は公開し,対象者が診療情報の研究利用を拒否できる機会を保障した。

結果

1. 患者背景

研究フローチャートを図1に示す。最終解析対象は132例で,END群52例(39.4%),非END群80例(60.6%)であった。患者背景・臨床特性(表1)では,いずれにも有意な群間差を認めなかった。

図1 研究対象選定と群別化のフローチャート

END: early neurological deterioration.

表1 ベースライン特性および臨床転帰の比較

全体 
(n=132)
END群 
(n=52)
非END群 
(n=80)
p値
患者背景・臨床特性
年齢(歳)73[66.00–82.00]73[66.00–80.25]73[66.00–82.00]0.434a
女性,n(%)63(47.7)28(53.8)35(43.8)0.257b
発症前mRS0[0–1.00]0[0–1.00]0[0–1.00]0.628a
BMI(kg/m222.04[19.98–25.22]21.80[20.30–25.10]22.14[19.55–25.22]0.616a
現喫煙,n(%)26(19.7)9(17.3)17(21.2)0.578b
テント下病変,n(%)34(25.8)16(30.8)18(22.5)0.288b
入院時NIHSSスコア5[3.00–6.00]5[2.00–6.00]4[3.00–6.00]0.941a
入院からENDまでの日数1[0–1]
併存疾患
併存疾患数2[1.00–3.00]2.5[2.00–3.25]2[1.00–3.00]0.004a**
CCI0[0–1.00]0[0–0.25]0[0–1.00]0.469a
HT,n(%)103(78.0)46(88.5)57(71.2)0.020b*
T2DM,n(%)47(35.6)22(42.3)25(31.2)0.195b
DL,n(%)36(27.3)17(32.7)19(23.8)0.260b

連続変数は「中央値(四分位範囲[25–75%])」で,カテゴリ変数は「n(%)」で示した.入院からENDまでの日数はEND群のみで定義されるため,全体・非END群は非該当(—)とし,群間比較は行わなかった.

統計学的検定:a=Mann–WhitneyのU検定,b2検定,有意水準:* p<0.05,** p<0.01.

END: early neurological deterioration, mRS: modified Rankin Scale, BMI: body mass index, NIHSS: National Institutes of Health Stroke Scale, CCI: Charlson comorbidity index, HT: hypertension, T2DM: type 2 diabetes mellitus, DL: dyslipidemia.

2. 併存疾患

併存疾患数はEND群で高値であった(中央値[四分位範囲(25–75%)]:2.5[2.00–3.25]vs 2.0[1.00–3.00],p=0.004,表1)。一方,CCIには群間差を認めなかった。主要な心血管代謝性併存症のうち,HTはEND群で頻度が高かった(88.5% vs 71.2%,p=0.020)。T2DMおよびDLの頻度には有意差を認めなかった。併存疾患のカテゴリ別頻度を表2に示す。表2は再現性の観点から,併存疾患を13カテゴリに集約して示し,カテゴリの包含関係および「その他」に含めた疾患は脚注に明示した。全体ではHTが103例(78.0%)と最多で,T2DM 47例(35.6%),DL 36例(27.3%)であった。

表2 併存疾患のカテゴリ別頻度

併存疾患カテゴリn(%)
HT103(78.0)
T2DM47(35.6)
DL36(27.3)
精神疾患17(12.9)
筋骨格系疾患13(9.8)
CAD10(7.6)
腎疾患10(7.6)
泌尿器疾患7(5.3)
肝疾患6(4.5)
神経・脳疾患5(3.8)
不整脈4(3.0)
PAD3(2.3)
その他38(28.8)

併存疾患は入院時点で治療中または経過観察中の慢性疾患と定義し,主治医診療録を基本に,問診,既往歴,紹介状,持参薬,過去病名履歴などを参照して確認した.急性一過性の病態は除外した.カウントは疾患単位で行い,同一病態の重複記載は1件として扱った.一方,同一臓器系であっても病態機序が明らかに異なる慢性疾患は別疾患としてカウントした.HT/T2DM/DLは13カテゴリに含めたうえで,主要併存症として解析上の解釈を明確にする目的で個別に抽出した.精神疾患には認知症を,筋骨格系疾患には骨粗鬆症および関節リウマチ(RA)を,その他には悪性腫瘍,緑内障,甲状腺疾患,GERD,めまい症候群,便秘症,および低頻度の併存疾患を含めた.

HT: hypertension, T2DM: type 2 diabetes mellitus, DL: dyslipidemia, CAD: coronary artery disease, PAD: peripheral artery disease, RA: rheumatoid arthritis, GERD: gastroesophageal reflux disease.

3. 血液・生化学検査

血液・生化学検査所見(表3)では,BNPがEND群で高値であった(81.80[31.55–163.95]vs 38.00[21.30–73.90],p=0.005)。SUA/SCr,NLR,LDL-Cを含むその他の血液学的・生化学的指標には有意差を認めなかった。

表3 血液・生化学検査所見の比較

全体 
(n=132)
END群 
(n=52)
非END群 
(n=80)
p値
血液学的検査
ヘモグロビン(g/dL)14.00[12.78–15.20]13.75[12.78–14.93]14.25[12.78–15.20]0.317
血小板(×104/uL)22.00[17.80–26.10]22.40[18.53–25.85]21.70[17.05–26.30]0.610
WBC(×103/uL)6.80[5.57–8.29]6.57[5.54–8.29]6.91[5.59–8.29]0.904
好中球分画(%)67.00[57.15–76.00]68.40[56.62–77.55]66.40[57.35–74.80]0.711
リンパ球分画(%)25.35[18.23–33.92]23.60[18.98–35.90]26.30[18.10–33.62]0.838
NLR2.68[1.71–4.04]2.86[1.54–3.99]2.56[1.71–4.04]0.876
生化学検査
クレアチニン(mg/dL)0.73[0.57–0.91]0.72[0.58–0.95]0.73[0.57–0.88]0.443
eGFR(mL/min/1.73m271.50[57.80–86.20]67.90[56.53–78.47]74.50[59.05–87.00]0.142
SUA(mg/dL)5.40[4.30–6.60]5.30[4.40–6.60]5.55[4.30–6.57]0.895
SUA/SCr4.87[4.09–5.78]4.59[4.05–5.55]5.17[4.11–5.99]0.135
CRP(mg/dL)0.15[0.06–0.35]0.17[0.06–0.33]0.15[0.07–0.35]0.625
BNP(pg/mL)47.75[23.22–96.83]81.80[31.55–163.95]38.00[21.30–73.90]0.005**
HbA1c(%)6.05[5.67–6.93]5.95[5.60–6.47]6.10[5.70–7.17]0.149
PT(秒)11.35[10.70–11.90]11.40[10.70–11.80]11.30[10.80–11.90]0.787
PT-INR0.99[0.95–1.04]0.98[0.94–1.03]0.99[0.95–1.04]0.624
APTT(秒)26.90[25.4–29.00]26.60[25.48–28.30]27.30[25.40–29.45]0.315
TP(g/dL)7.30[7.00–7.60]7.30[7.00–7.65]7.25[6.97–7.60]0.910
アルブミン(g/dL)4.25[4.00–4.50]4.20[4.07–4.50]4.30[4.00–4.43]0.978
T-cho(mg/dL)208.5[173.25–235.25]209.50[175.00–245.00]208.00[172.75–229.75]0.563
LDL-C(mg/dL)123.00[98.00–148.50]119.50[101.25–151.50]131.00[95.00–145.00]0.900
TG(mg/dL)120.5[77.00–181.00]121.00[89.00–171.00]120.00[74.00–192.00]0.902

すべての変数は「中央値(四分位範囲[25–75%])」で示した.

統計学的検定:Mann–WhitneyのU検定,有意水準:** p<0.01.

END: early neurological deterioration, WBC: white blood cell count, NLR: neutrophil-to-lymphocyte ratio, eGFR: estimated glomerular filtration rate, SUA: serum uric acid, SCr: serum creatinine, CRP: C-reactive protein, BNP: B-type natriuretic peptide, HbA1c: hemoglobin A1c, PT: prothrombin time, PT-INR: prothrombin time–international normalized ratio, APTT: activated partial thromboplastin time, TP: total protein, T-cho: total cholesterol, LDL-C: low-density lipoprotein cholesterol, TG: triglyceride.

4. 薬物治療

入院中治療では,アルガトロバン使用は非END群で多かった(86.2% vs 67.3%,p=0.009)。その他の治療(rt-PA,抗血小板療法の各レジメンを含む)については,群間差を認めなかった(表4)。

表4 薬物療法の比較

全体 
(n=132)
END群 
(n=52)
非END群 
(n=80)
p値
rt-PA2(1.5)0(0.0)2(2.5)0.519a
アルガトロバン104(78.8)35(67.3)69(86.2)0.009b**
ヘパリン6(4.5)1(1.9)5(6.2)0.402a
オザグレル22(16.7)11(21.2)11(13.8)0.265b
エダラボン114(86.4)44(84.6)70(87.5)0.637b
デキストラン4(3.0)1(1.9)3(3.8)1.000a
DAPT(ASA+CLP)93(70.5)37(71.2)56(70.0)0.887b
DAPT(ASA+CIZ)1(0.8)1(1.9)0(0.0)0.394a
DAPT(CLP+CIZ)1(0.8)1(1.9)0(0.0)0.394a
DAPT(ASA+PRAS)1(0.8)1(1.9)0(0.0)0.394a
DAPT(ASA+CLP) +デキストラン3(2.3)1(1.9)2(2.5)1.000a
SAPT(ASA)17(12.9)10(19.2)7(8.8)0.079b
SAPT(CLP)4(3.0)1(1.9)3(3.8)1.000a
SAPT(CIZ)1(0.8)1(1.9)0(0.0)0.394a
SAPT(PRAS)2(1.5)1(1.9)1(1.2)1.000a
SAPT(CLP) +デキストラン8(6.1)3(5.8)5(6.2)1.000a

すべての変数はn(%)で示した.

統計学的検定:a=Fisherの正確確率検定,b2検定,有意水準:** p<0.01.

rt-PA: recombinant tissue plasminogen activator, DAPT: dual antiplatelet therapy, ASA: aspirin, CLP: clopidogrel, CIZ: cilostazol, PRAS: prasugrel, SAPT: single antiplatelet therapy.

5. 多変量ロジスティック回帰分析

欠測を多重代入で補完し,Rubinの規則により推定値をプールした多変量ロジスティック回帰分析では,併存疾患数がENDと独立に関連した(OR 1.44, 95%CI 1.08–1.93, p=0.013)。一方,SUA/SCr,NLR,女性,入院時NIHSSスコア,LDL-Cはいずれも有意な関連を示さなかった(表5)。モデル適合では不適合を示す所見は認めなかった(p=0.465)。また,いずれの説明変数もVIFは低値であり(最大約1.22),多重共線性は認めなかった。補足的な完全ケース解析(n=86)でも,併存疾患数はENDと独立に関連した(OR 1.76, 95%CI 1.17–2.65, p=0.007)。併存疾患数によるENDの判別では,判別的中率が最大となる閾値は「併存疾患数≧3」であった。この閾値を用いた二値分類における判別的中率は64.4%で,感度は50.0%,特異度は73.8%,PPVは55.3%,NPVは69.4%であった。cutoff検討の結果は図2に示す。

表5 早期神経学的悪化の関連因子

ベースモデル追加調整モデル
OR(95%CI)p値aOR(95%CI)p値
併存疾患数1.44(1.08–1.93)0.0131.58(1.13–2.20)0.007
SUA/SCr比0.90(0.72–1.13)0.3660.88(0.69–1.13)0.321
NLR1.03(0.87–1.21)0.7621.04(0.86–1.25)0.719
女性1.45(0.69–3.03)0.3231.46(0.66–3.22)0.348
入院時NIHSSスコア0.98(0.86–1.12)0.8081.02(0.88–1.18)0.812
LDL-C1.00(0.99–1.01)0.5181.00(0.99–1.01)0.412
HT6.06(1.84–19.96)0.003
アルガトロバン使用0.26(0.10–0.72)0.009
BNP1.00(0.99–1.00)0.948

Hosmer–Lemeshow検定の結果は,ベースモデルでp=0.465,追加調整モデルでp=0.124であった.併存疾患数によるENDの判別的中率が最大(64.4%)となる閾値は「併存疾患数≧3」であり,感度50.0%,特異度73.8%,陽性的中率55.3%,陰性的中率69.4%であった.ベースモデルは併存疾患数,SUA/SCr,NLR,女性,入院時NIHSSスコア,LDL-Cで調整した.追加調整モデルはこれらに加えてHT,アルガトロバン使用,BNPを追加した.表中の「—」は当該モデルに投入していないことを示す.欠測は多重代入(m=20)で補完し,推定値はRubinのルールにより統合した.

OR: odds ratio, aOR: adjusted odds ratio, CI: confidence interval, SUA: serum uric acid, SCr: serum creatinine, NLR: neutrophil-to-lymphocyte ratio, NIHSS: National Institutes of Health Stroke Scale, LDL-C: low-density lipoprotein cholesterol, HT: hypertension, BNP: B-type natriuretic peptide.

図2 併存疾患数によるEND判別におけるcutoffの探索的検討

併存疾患数による早期神経学的悪化(END)の二値分類におけるcutoffの検討.併存疾患数を各cutoff(0–6)で二値化し,判別的中率,感度,特異度を算出した.判別的中率が最大(64.4%)となるcutoffは「併存疾患数≧3」であった.

実線+●=判別的中率,破線+▲=感度,点線+■=特異度,一点鎖線=最大判別的中率のcutoff.

END: early neurological deterioration.

6. 追加調整モデルによる補足解析

2群比較で有意差を認めたHT,アルガトロバン使用,およびBNPを共変量として追加した追加調整モデルでも,併存疾患数はENDと独立に関連した(調整オッズ比[adjusted odds ratio:以下,aOR]1.58, 95%CI 1.13–2.20, p=0.007)。このモデルでは,HTはENDと正に関連し(aOR 6.06, 95%CI 1.84–19.96, p=0.003),アルガトロバン使用はENDと負に関連した(aOR 0.26, 95%CI 0.10–0.72, p=0.009)。BNPは有意ではなかった(表5)。モデル適合では不適合を示す所見は認めなかった(p=0.124)。VIFはいずれも低値であり(最大約1.22),多重共線性は認めなかった。

考察

本研究では,BAD患者において併存疾患数がENDと有意に関連した。併存疾患の集積は脳小血管性変化と関連し,特にHT,T2DM,DLの併存が白質高信号や微小構造障害と累積的に関連するという地域住民研究の知見は,この結果と整合する25。また,多疾患併存が疾患横断的に増悪や不良転帰と関連するという先行報告とも一致する2628

一方,本研究ではCCIに群間差がみられず,併存疾患数のみがENDと関連した。CCIは疾患ごとの重み付けにより長期予後,特に死亡を念頭に設計されており,ENDのような急性期の神経学的増悪を説明するための重み付けとは一致しない可能性がある。したがって,本研究の目的に対しては,併存疾患数の方がより適合していたと解釈できる。

2群比較で差を認めたHT,アルガトロバン使用,BNPを共変量に追加した追加調整モデルでも,併存疾患数とENDの関連は大きく変化しなかった。同モデルではHTがENDと正に関連し,アルガトロバン使用が負に関連した。HTは既知の血管危険因子であり,BADの病態と関連する可能性がある。一方,アルガトロバン使用については,出血リスク,発症からの時間,施設方針などを反映した適応交絡を考慮する必要がある。

本研究ではEND群でBNPが高値であった一方,多変量解析ではBNPは有意な関連を示さなかった。BNPは心室壁伸展や圧負荷に応答して心筋から分泌され,心不全に限らず,高血圧性心疾患や潜在的な心機能障害,腎機能障害など複数の要因の影響を受けて上昇する29。本研究でEND群にHTが多かったことを踏まえると,同群で観察されたBNP高値は,HTを背景とした心負荷を反映していた可能性がある。さらに,急性期脳梗塞ではBNPが上昇し,臨床重症度や心機能指標,病型などと関連することが報告されている30。本研究では発症から採血までの時間を記録できなかったため,採血時点の違いに伴う急性期反応や循環動態の変動がBNPに影響した可能性も否定できない。このように,BNPの解釈にはHTによる交絡と測定時点の影響を考慮する必要がある。

併存疾患数は簡便であり,定義が明確で運用しやすい一方24,判別的中率は高くなく,単独指標としてリスク層別化を担うには限界がある。これは,併存疾患数が全身状態を簡便に要約する反面,ENDに関連する可能性がある病態情報を十分に反映していないことによる可能性がある。本研究では血管所見や病変の解剖学的特徴など1416,既報で関連が示されている因子を解析に組み込めておらず,残余交絡が存在する可能性がある。

本研究にはいくつかの限界がある。第一に,単施設・後方視的観察研究である点に由来する一般的制約がある。連続登録により選択バイアスの抑制を図ったが,後方視的デザインのため完全には排除できない。特に,発症から入院まで最大3日を許容したため,入院前に神経症状が進行していた症例が含まれ,入院後72時間以内の悪化として定義したENDの発生率を過小評価した可能性がある。第二に,事前のサンプルサイズ設計を行っていないため,推定値の不安定性や検出力不足の懸念が残る。第三に,日本の単施設データであり,診療体制や治療方針が異なる集団への外部妥当性には限界がある。第四に,一部変数に欠測があり,推定バイアスが残る可能性がある。特に入院時NIHSSが欠測した症例では,診療録情報に基づき専門医が後方視的に再構成したため,評価時点や記録の正確性・詳細度に依存した誤差が生じ,入院時重症度の調整に影響した可能性がある。第五に,本研究では併存疾患数のcutoffを事後的に最適化しており,本解析は探索的解析であるため,特定のサンプル(n=132)に対して過学習(overfitting)や性能の楽観的推定が生じている可能性がある。以上より,併存疾患数はBADにおけるENDと関連する簡便な指標候補であるが,単独での運用は避け,他の臨床情報と統合して解釈することが望ましい。今後は,診療体制や治療方針の異なる集団を含む多施設データでの外部検証を実施し,加えて,未測定因子の交絡の影響を検討する必要がある。

結論

本研究では,併存疾患数はBAD患者における入院後ENDと独立して関連し,診療録情報から簡便に算出できる評価指標の候補であることが示された。その有用性の確立には今後の検証を要する。

謝辞

本研究の実施にあたり,ご協力いただいた対象者ならびに関連施設の職員の皆様に深く感謝申し上げる。

利益相反

本研究に関して開示すべき利益相反はなく,特定の研究助成も受けていない。

文献
 
© 2026 Japanese Society of Physical Therapy

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