Physical Therapy Japan
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Research Reports (Original Article)
Investigation of Admission Physical Function and Activities of Daily Living Associated with Improvement in Sarcopenia among Patients with Sarcopenia in a Convalescent Rehabilitation Ward
Kei WASHIDA Dai NAKAIZUMIShingo MIYATA
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JOURNAL OPEN ACCESS FULL-TEXT HTML

2026 Volume 53 Issue 3 Pages 201-208

Details
要旨

【目的】回復期リハビリテーション病棟のサルコペニア患者において,退院時のサルコペニア改善と関連する入院時身体機能指標を明らかにすることを目的とした。【方法】Asian Working Group for Sarcopenia(AWGS)2019の基準でサルコペニアと判定された87例を対象に,退院時に重症度が1段階改善を改善群,維持・悪化を非改善群とした。入院時の骨格筋量指数(Skeletal Muscle mass Index:SMI),位相角,筋力,機能的自立度評価法(Functional Independence Measure:以下,FIM)を群間比較し,サルコペニア改善を目的変数とするベイズロジスティック回帰分析を行った。【結果】回帰分析では入院時運動FIMがサルコペニア改善と関連する指標として推定された。【結論】回復期リハ病棟において,入院時運動FIMはサルコペニア改善と関連する可能性があり,回復期アウトカム把握の参考となる可能性がある。

Abstract

Objective: To identify admission physical function indicators associated with improvement in sarcopenia status at discharge among patients with sarcopenia in a convalescent rehabilitation ward.

Methods: Eighty-seven patients diagnosed with sarcopenia according to the Asian Working Group for Sarcopenia (AWGS) 2019 criteria were included. Patients whose sarcopenia severity improved by one stage at discharge were classified as the improved group, whereas those whose severity was maintained or worsened were classified as the non-improved group. Admission skeletal muscle mass index (SMI), phase angle, muscle strength, and the Functional Independence Measure (FIM) were compared between groups. Bayesian logistic regression was performed with sarcopenia improvement as the dependent variable.

Results: In the regression analysis, admission motor FIM was estimated as an indicator associated with sarcopenia improvement.

Conclusion: In a convalescent rehabilitation ward, admission motor FIM may be associated with improvement in sarcopenia status and may serve as a reference for understanding convalescent rehabilitation outcomes.

はじめに

サルコペニアは,加齢や疾患などを背景として生じる骨格筋量の減少および筋力・身体機能の低下を特徴とする進行性かつ全身性の筋疾患であり,超高齢社会において重要な健康課題の一つとなっている。サルコペニアは,高齢者における転倒や骨折,要介護状態への移行,さらには死亡率の上昇とも密接に関連しており,医療および介護の両面に影響を及ぼすことが明らかにされている13

疫学研究によればサルコペニアの有病率は,地域在住高齢者では約10%4,介護施設入所者では30–50%,入院患者では23–24%と報告5されており,特に医療・介護資源の集中的な活用が必要な集団での発症率が高いことが示されている。なかでも,入院患者においては,サルコペニアの存在が入院期間の延長,日常生活動作(Activities of Daily Living:以下,ADL)の低下,再入院率の上昇,医療費の増加といった不利益な転帰と関連することが複数の研究で報告されている36

回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)は,急性期治療後の機能回復と在宅復帰を目指す重要な機能を有している。回復期リハ病棟では,機能的自立度評価法(Functional Independence Measure:以下,FIM)スコアを用いたADLのアウトカムが2016年度から実績指数として導入され,入院料区分に反映される指標としても位置づけられている。加えて,回復期リハ病棟では,FIM利得や自宅退院率などを用いたアウトカム評価が求められており,これらの指標の改善は極めて重要な課題となっている7。一方で回復期リハ病棟においては,サルコペニアの有病率が50%程度と高く,機能回復の遅延やFIMスコアの改善度低下といった臨床的課題が指摘されており89,サルコペニアの実態や予後への影響を明らかにすることは重要である。

回復期リハ病棟において,リハビリテーションなどの介入によりサルコペニアが改善した場合には,FIMスコアの有意な向上や自宅退院率の上昇といったポジティブな転帰が報告10されている。他領域においては,通所リハ(デイケア)利用の要介護高齢者を対象とした研究により,初期評価で得られた栄養状態や下肢周径が6カ月後のサルコペニア改善と関連する可能性が報告されている11。これらのことからも,回復期リハ病棟における早期の評価と適切な介入は重要な課題である。しかし,回復期リハ病棟には脳血管疾患,運動器疾患,廃用症候群など複数の病態を有する患者が含まれるにもかかわらず,先行研究の多くは脳卒中など特定の疾患群に対象を限定している。そのため,これら複数の疾患を包含する回復期リハ病棟入院患者におけるサルコペニア改善に関連する知見は,必ずしも十分に整理されていない。したがって,回復期リハ病棟においてサルコペニアを有する患者のうち,どのような身体的・機能的特徴を有する患者が入院期間中にサルコペニアの改善に至りやすいかは十分に明らかでない。加えて,サルコペニアの改善には筋量,筋力,ADL,栄養状態など複数の要因が関与する可能性があり,これらのサルコペニア改善と関連する指標を同時に考慮して関連を推定する必要がある。これらを明らかにすることは,改善が見込まれる患者像の把握や早期介入の推進にも寄与すると考えられる。

そこで本研究では,金沢赤十字病院(以下,当院)回復期リハ病棟に入院した患者のうちサルコペニアと判定された患者を対象とし,サルコペニアの改善に関連する入院時の身体機能指標を明らかにすることを目的とした。

対象および方法

1. 研究デザインおよび対象

本研究は,単一施設において実施した前向き観察コホート研究である。対象は,2023年7月から2024年7月までの期間に,当院回復期リハ病棟へ入院した患者のうち,研究参加への同意が得られた者とし,解析対象者は,入院時にサルコペニアと判定された患者とした。除外基準は,病状急変や合併症などにより転棟した者,回復期リハ病棟の在院期間が1カ月未満であった者,評価項目の大部分が欠測し,サルコペニアの判定が困難であった者とした。なお,本研究は当院回復期リハ病棟に入院した患者を対象とする探索的な前向き観察研究であり,事前の仮説検証に基づくサンプルサイズ設計は行わなかった。サンプルサイズは,研究期間内に適格基準を満たし,入院時にサルコペニアと判定された患者数により規定した。バイアス低減のため,対象期間内の適格症例のうち研究参加に同意が得られた連続症例を登録し,選択バイアスの最小化に努めた。一方で,研究参加に同意が得られなかった患者については研究用データを収集しておらず背景の比較ができないため,同意取得に起因する選択バイアスは否定できない。また,転棟例や短期在院例,評価欠測が多くサルコペニア判定が困難であった症例を除外したことにより,解析対象は病状が比較的安定し,一定期間在棟し,評価が実施可能であった患者に偏っている可能性がある。

そのため同意が得られた患者に限り,解析対象者と除外基準により除外された患者のベースライン背景を結果に示し,選択の偏りを確認した。

2. 基本情報の収集

解析対象者の診療録から,疾患分類(脳血管疾患・運動器疾患・廃用症候群),年齢,性別,身長,体重,Body Mass Index(以下,BMI),FIMスコア,発症から回復期リハ病棟入棟までの日数,在院日数,実績指数,退院先(自宅/自宅外)ならびに栄養障害の有無を収集した。

FIM12はADLの自立度を総合的に評価する尺度で,18項目(運動13項目・認知5項目)から構成される。各項目は1~7点で評価され,合計点は18~126点となり,得点が高いほどADL自立度が高いことを示す。FIM評価は回復期リハ病棟入棟時および退院時に,各患者の担当リハビリテーションスタッフ(理学療法士など)と病棟看護師が共同で実施した。

実績指数は,入院中のFIM利得(運動FIM項目の退院時と入院時の差)を分子とし,分母は在院日数を算定上限日数で割った値であり,規定の計算式13から値を算出したものを診療録から抽出した。

栄養障害の有無は,管理栄養士が入退院時に実施した栄養評価に基づき判定した。具体的には,Subjective Global Assessment(SGA)およびGlobal Leadership Initiative on Malnutrition(GLIM)基準を用いて総合的に評価し,管理栄養士が栄養障害ありと判定した場合を栄養障害ありとした。これらの情報は,診療録から抽出した。

3. 身体機能評価

1)握力

スメドレー握力計(TTM,東京,日本)を使用し,立位または座位にて左右2回ずつ測定し,最大値を代表値とした。

2)5回立ち上がりテスト

肘掛けのない椅子を使用し,上肢を胸の前で組んだ状態から起立動作を5回繰り返した所要時間をストップウォッチにて計測した。2回測定し,最速値を代表値とした。

3)膝伸展筋力

ハンドヘルドダイナモメーター(アニマ株式会社,μTas F-100)を用いて測定した。被検者は検査台上で端座位となり,大腿が水平位となるよう調整後,膝関節屈曲90°で左右各2回ずつ最大随意等尺性収縮を実施し,最大値を代表値とした。端座位が困難な場合は車いす座位(下腿下垂・膝屈曲約90°)で同手順により測定した14

これら3つの身体機能評価の測定は同一の測定室で,同一機器・固定具・同一検者により実施した。

4. 体組成の評価

体組成の測定には生体電気インピーダンス法(Bioelectrical Impedance Analysis:以下,BIA)を用いた体成分分析装置(インボディ・ジャパン株式会社,InBody S10)を使用した。評価項目として,骨格筋量指数(Skeletal Muscle Mass Index:以下,SMI, kg/m2),位相角(Phase Angle:PhA,°)を記録した。測定はすべて背臥位で実施し,食後直後および運動直後を避け,夕方の時間帯に統一して行った。

5. サルコペニアの判定

サルコペニアの判定には,Asian Working Group for Sarcopenia 2019(以下,AWGS2019)の基準を用いた1。握力,5回立ち上がりテストを評価し,骨格筋量の低下を必須条件とし,これに加えて筋力低下または身体機能低下のいずれかが認められた場合を「サルコペニア」,両者が認められた場合を「重症サルコペニア」と判定した。

骨格筋量の低下については,BIAで得られた四肢筋肉量からSMI(kg/m2)を算出し,AWGS2019に準拠して男性<7.0 kg/m2,女性<5.7 kg/m2を低下ありとした。筋力低下の基準は握力を用い,男性<28 kg,女性<18 kgとした。身体機能低下は5回立ち上がりテストの所要時間が12秒以上とした15

入院時および退院時にそれぞれサルコペニア重症度(非サルコペニア/サルコペニア/重症サルコペニア)を判定した。

6. 評価時期

すべての評価は,入院後1週間以内および退院前1週間以内にそれぞれ実施した。

7. 統計解析

サルコペニアと判定された者は入院から退院までのサルコペニア重症度が少なくとも1段階改善した者を「改善群」,重症度が維持または悪化した者を「非改善群」と定義した。

患者背景はサルコペニア改善群と非改善群の2群に分けて要約し,連続変数は平均・標準偏差または中央値・四分位範囲,カテゴリー変数は人数・割合で示した。患者背景の差の程度を評価するため,標準化平均差(standardized mean difference:SMD)を算出した。

サルコペニア改善群と非改善群の2群間で,入院時の身体機能および臨床指標を比較した。群間比較は連続変数については分布を確認した上で手法を選択した。BMI, SMI,膝伸展筋力,位相角にはt検定を用い,握力,5回立ち上がりテスト,運動FIM,認知FIM, FIM合計,実績指数にはWilcoxon順位和検定を用いた。カテゴリー変数については,栄養障害にはχ2検定を,退院先(自宅/自宅外)にはFisherの正確確率検定を用いた。群間比較の結果(平均差,中央値差,比率差およびオッズ比)は95%信頼区間とともに示し,有意水準は5%とした。

本研究では,患者数が限られていることおよび欠測値を多重代入で補完したデータを用いて推定精度と不確実性を適切に評価することを重視したため,頻度主義的なロジスティック回帰分析ではなくベイズ推定を採用した。ベイズ推定により,オッズ比の事後分布と95%信用区間を提示することで,各共変量とサルコペニア改善との関連の不確実性を直感的に解釈できるようにした。サルコペニア改善の有無(二値)を目的変数としてベイズロジスティック回帰分析を行った。欠測値は多重代入法を用いて処理し,20個の代入データセットを作成した。目的変数(サルコペニア改善の有無)は代入しなかった。各代入データセットに4チェーン・4,000反復(ウォームアップ2,000)でマルコフ連鎖モンテカルロ法を実行し,チェーンを結合して事後分布を得た。事前分布は回帰係数に対してCauchy(0, 10)の弱情報事前分布を設定し,切片には正規分布:Normal(0, 10)の弱情報事前分布を設定した。回帰係数の推定値は事後中央値と95%信用区間で求め,オッズ比に変換して示した。オッズ比の95%信用区間が1を含まない場合を,関連があることを示す指標として解釈した1617。収束はR-hatを用いて確認した。共変量として年齢,性別,疾患分類,BMI,運動FIM,認知FIM,握力,SMI,位相角,栄養障害を投入した。廃用症候群が1名のみであったため,記述統計,群間比較および回帰分析の一貫性を保つ目的で運動器疾患に含めて扱った。事前分布の違いによる影響を確認するため,より平坦な事前分布を用いた感度分析も実施した。

なお,本研究の主解析は,サルコペニア改善の有無を目的変数としたベイズロジスティック回帰分析である。群間比較は探索的解析(補足的解析)として,入院時評価の分布と群間差の概要把握を目的に実施し,多重比較による補正は行わなかった。

統計解析はR(version 4. 5. 2;R Foundation for Statistical Computing, Vienna, Austria)を用い,brms, rstan, miceパッケージを使用した。

8. 倫理的配慮

本研究は,ヘルシンキ宣言に基づき倫理的配慮を行い,金沢赤十字病院倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:632-2023)。すべての対象者に対して,研究の目的・内容・個人情報の取扱いについて説明を行い,文書による同意を取得した。参加は自由意志に基づき,同意後もいつでも撤回できる旨を説明した。

結果

研究期間中に当院回復期リハ病棟へ入院した204名のうち,研究参加同意が得られなかった21名を除外し,対象者は183名であった。次に,除外基準に該当した63名を除外し,解析対象者は120名となった。このうち,入院時にAWGS2019基準にてサルコペニアと判定されなかった33名を除外し,最終的な解析対象者は87名となった(図1)。解析対象者(n=87)と除外者(n=63)のベースライン背景の比較を表1に示す。除外者では,解析対象者と比べて入院時FIM(合計,運動,認知)が低値であり,ADL能力が低い傾向がみられた。入院時にサルコペニアを認めた87名のうち,サルコペニア改善群は29名(33%),重症度が維持または悪化した非改善群は58名(67%)であった(表2)。

図1 フローチャート
表1 解析対象者と除外者のベースライン背景の比較

項目解析対象者,n=87除外者,n=63SMD
疾患分類,n (%)0.21
廃用1 (1.1%)0 (0%)
脳血管40 (46%)25 (40%)
運動器46 (53%)38 (60%)
性別,n (%)0.00
33 (38%)24 (38%)
54 (62%)39 (62%)
年齢(歳)−0.21
平均(SD)79.6 (11.1)82.0 (10.7)
中央値(IQR)82.0 (74.0–86.0)85.0 (75.0–89.0)
体重(kg)0.15
平均(SD)50.7 (9.0)49.2 (11.6)
中央値(IQR)50.0 (44.6–54.8)46.8 (41.6–57.5)
BMI (kg/m20.14
平均(SD)20.9 (2.9)20.5 (3.5)
中央値(IQR)21.1 (19.3–22.9)20.6 (17.9–22.4)
栄養障害,n (%)0.17
なし29 (33%)16 (25%)
あり58 (67%)47 (75%)
入院時FIM
FIM合計(点)0.54
平均(SD)64.7 (22.8)52.9 (21.1)
中央値(IQR)63.0 (47.0–83.0)50.0 (37.0–67.0)
運動FIM(点)0.52
平均(SD)39.4 (17.1)31.0 (15.3)
中央値(IQR)39.0 (23.0–51.0)30.0 (18.0–41.0)
認知FIM(点)0.40
平均(SD)25.3 (8.3)21.9 (8.8)
中央値(IQR)27.0 (19.0–33.0)22.0 (15.0–29.0)

SMD:標準化平均差,SD:標準偏差,IQR:四分位範囲.

BMI: Body Mass Index, FIM: Functional Independence Measure.

 

表2 解析対象者の背景

項目全体,n=87改善群,n=29非改善群,n=58SMD
年齢(歳)−0.61
平均(SD)79.6 (11.1)75.0 (13.9)82.0 (8.6)
中央値(IQR)82.0 (74.0–86.0)77.0 (73.0–84.0)83.0 (76.0–88.0)
性別,n (%)0.32
女性54 (62%)15 (52%)39 (67%)
男性33 (38%)14 (48%)19 (33%)
疾患,n (%)0.28
脳血管40 (46%)16 (55%)24 (41%)
運動器・廃用47 (54%)13 (45%)34 (59%)
発症から入院までの日数−0.02
平均(SD)30.2 (20.6)29.9 (24.3)30.3 (18.6)
中央値(IQR)27.0 (16.0–39.0)21.0 (16.0–37.0)27.0 (18.0–39.0)
在院日数−0.22
平均(SD)70.0 (33.2)65.3 (30.8)72.4 (34.3)
中央値(IQR)67.0 (43.0–87.0)63.0 (42.0–77.0)72.0 (45.0–88.0)

SMD:標準化平均差,SD:標準偏差,IQR:四分位範囲.

年齢は改善群で低く(SMD −0.61),性別では非改善群で女性が多かった(SMD 0.32)。疾患については非改善群で運動器疾患・廃用症候群が多く,改善群では脳血管疾患が多かった(SMD 0.28)。発症から入院までの日数の差は小さく(SMD −0.02),在院日数は非改善群が長かった(SMD −0.22)。

主解析として,サルコペニア改善の有無を目的変数としたベイズロジスティック回帰分析の結果を表3に示す。入院時運動FIMはサルコペニア改善と関連し,オッズ比は1.06(95%信用区間:1.02–1.12)であった。他の共変量(年齢,性別,疾患分類,BMI,入院時認知FIM,握力,SMI,位相角,栄養障害)は,いずれも95%信用区間が1を含んでいた。事前分布を変更して実施した感度分析でも推定値はおおむね同様であり,主要な結果は変わらなかった。

表3 サルコペニア改善と関連する因子のベイズロジスティック回帰分析

変数オッズ比(95%信用区間)
年齢(歳)0.96 (0.89–1.03)
性別
女性参照
男性0.25 (0.02–2.42)
疾患分類
脳血管参照
運動器・廃用0.37 (0.08–1.57)
BMI (kg/m21.15 (0.86–1.55)
運動FIM(点)1.06 (1.02–1.12)
認知FIM(点)1.04 (0.93–1.17)
握力(kg)1.13 (0.99–1.31)
SMI (kg/m22.64 (0.64–11.7)
位相角(°)1.43 (0.46–4.53)
栄養障害
あり参照
なし0.56 (0.12–2.36)

BMI: Body Mass Index, FIM: Functional Independence Measure, SMI: Skeletal Muscle Mass Index.

探索的解析として,入院時の身体機能および臨床指標の群間比較の結果を表4に示す。SMI,握力,膝伸展筋力,運動FIM,認知FIM, FIM合計,位相角はいずれも改善群で高かった。BMIと5回立ち上がりテストには有意差は認められなかった。栄養障害の割合は非改善群で高かったが,差は明確ではなかった。実績指数は改善群で高く,中央値差は21.82(95%信頼区間:8.57–34.44)であった。退院先については改善群で自宅退院が多く,オッズ比は7.55(95%信頼区間:2.33–34.15)であった。

表4 入院時の身体機能および臨床指標の群間比較

項目改善群,n=29非改善群,n=58推定値(95%信頼区間)1p値2
BMI(kg/m2,入院時)0.2
平均(SD)21.5 (2.9)20.6 (2.8)0.89 (−0.42–2.20)
SMI(kg/m2,入院時)<0.001
平均(SD)5.6 (0.8)4.9 (0.9)0.76 (0.37–1.15)
握力(kg, 入院時)<0.001
中央値(IQR)18.0 (13.0–24.0)11.5 (7.5–15.0)6.50 (3.50–10.00)
欠測04
膝伸展筋力(n・m/kg, 入院時)<0.001
平均(SD)0.8 (0.2)0.6 (0.3)0.21 (0.09–0.33)
欠測018
5回立ち上がり(秒,入院時)0.5
中央値(IQR)16.1 (12.4–24.0)22.8 (17.0–25.9)−3.10 (−12.43–5.91)
欠測1453
運動FIM(点,入院時)<0.001
中央値(IQR)51.0 (45.0–60.0)32.0 (20.0–43.0)17.00 (10.00–25.00)
認知FIM(点,入院時)0.008
中央値(IQR)31.0 (25.0–33.0)24.5 (17.0–31.0)4.78 (1.00–9.00)
FIM合計(点,入院時)<0.001
中央値(IQR)78.0 (67.0–91.0)58.0 (41.0–68.0)22.00 (13.00–32.00)
位相角(°,入院時)<0.001
平均(SD)4.0 (0.6)3.4 (0.7)0.57 (0.27–0.86)
栄養障害(入院時),n (%)−0.22 (−0.46–0.02)0.064
あり15 (52%)43 (74%)
なし14 (48%)15 (26%)
実績指数0.001
中央値(IQR)54.3 (36.2–78.1)31.2 (12.1–48.2)21.82 (8.57–34.44)
退院先 n (%)7.55 (2.33–34.15)<0.001
自宅26 (90%)31 (53%)
自宅外3 (10%)27 (47%)

1推定値は,各項目に応じて平均差,中央値差,比率差,またはオッズ比を示す.

2 p値はt検定,Wilcoxon検定,χ2検定,またはFisherの正確確率検定により算出した.

SD:標準偏差,IQR:四分位範囲.

BMI: Body Mass Index, SMI: Skeletal Muscle Mass Index, FIM: Functional Independence Measure.

考察

本研究は,脳血管疾患,運動器疾患および廃用症候群を含む回復期リハ病棟入院中のサルコペニア患者を対象に,入院時身体機能指標から入院期間中のサルコペニア改善に関連する要因を検討した。ベイズロジスティック回帰分析の結果から,入院時運動FIMがサルコペニア改善と関連する指標として示された。異なる疾患背景を有する回復期リハ病棟入院患者を対象としてサルコペニアの改善に着目し,入院時身体機能指標との関連を多変量で推定した報告は限られており,本研究はその点について一定の手がかりを示したものと考える。

主解析として行ったベイズロジスティック回帰分析では,入院時運動FIMがサルコペニア改善と関連する指標として抽出された。運動FIMは基本的ADLを評価する指標であり,そのスコアには筋量や筋力に加えて,バランス能力,全身持久力,疾患の重症度など多様な要因が反映される。本研究では,筋量(SMI),位相角,筋力など複数の指標で群間差を認めたにもかかわらず,多変量推定では,運動FIMのみがサルコペニア改善との関連を示した。この結果から,筋量や筋力といった単一の筋指標そのものよりも,それらを背景とした運動FIM(ADL遂行能力)を有していることがサルコペニア改善にとって重要である可能性が考えられる。先行研究では,1日あたりの起立回数が多い群ほどサルコペニア有病率の低下や筋量・筋力の改善が大きかったことから,全身抵抗運動を十分な頻度で実施できることがサルコペニア改善の一要因であることが示されている20。本研究において入院時運動FIMが高い患者では,起立運動など比較的高頻度の全身運動を安全に実施しやすく,病棟内での移動や自主練習を含めた日常的な身体活動量も確保されやすい可能性がある。

今回,限られた患者数の中でサルコペニア改善と関連する因子をベイズロジスティック回帰分析を用い推定した。ベイズ法は従来の頻度主義的手法に比べて,小規模サンプルでも適用しやすく,また複数の相関する説明変数を含むモデルにも対応できるとされている21。対象者数が限られ,測定される身体機能指標も多岐にわたることが多いリハビリテーション領域では,このようなベイズ法を用いたアプローチは有用であると報告されている21。したがって本研究で得られた入院時運動FIMは,オッズ比が1を上回る方向に分布し,信用区間も含めて効果の方向性が明瞭であったことから患者数が多くない条件下においても,入院時運動FIMとサルコペニア改善との関連について一定の推定結果が得られたと考える。

一方,探索的に行った群間比較の結果では,サルコペニア改善群は,サルコペニアの構成項目である筋量(SMI),位相角に加えて,筋力(握力),FIMスコア,実績指数がいずれも非改善群より高値であり,自宅退院率も高かった。先行研究では,サルコペニアを有する患者では退院時運動FIMの回復が不良であり,自宅退院率と関連すること18,サルコペニアが実績指数の独立した予測因子であることが報告されている19。さらに,サルコペニア改善群では,FIM総得点および自宅退院割合が高いことが示されている10。本研究においてもサルコペニア改善群で自宅退院率と実績指数が高く,既報と整合的であった。ただし,群間比較の結果は探索的解析であり,解釈には慎重を要すると考える。

最後に本研究の限界点を述べる。1つ目に本研究の解析対象は,研究期間中に当院回復期リハ病棟へ入院した患者のうち,研究参加同意が得られ,除外基準に該当せず,サルコペニア判定が可能であった症例に限定される。したがって,同意が得られなかった患者や病状急変・短期入院・評価困難などにより除外された患者が存在しており,より重症で臨床経過が不安定な症例が解析対象に含まれにくい可能性がある。実際に解析対象者と除外者のベースライン背景を比較したところ,除外者では入院時FIM(合計,運動,認知)が低値であり,ADL能力が低い患者が解析から除外されやすかった可能性が考えられる(表1)。2つ目に単一施設の観察研究であり,結果の一般化には慎重な解釈が必要である。3つ目にサルコペニアの改善を重症度カテゴリーの変化で定義しているため,閾値付近の変化など連続量としての筋量・筋力変化を十分に反映できていない可能性がある。4つ目に本研究では年齢・性別・疾患分類は考慮したものの,栄養療法の詳細,入院前ADLなどの未測定因子による残余交絡の影響を十分に除去できていない可能性がある。今後は多施設研究などにより,大規模なデータを用いてサルコペニア改善の要因と各種評価指標,自宅退院率,実績指数との関連を検証することが必要である。あわせて,リハビリテーション介入量や内容,栄養療法の詳細を含めた介入プロセスがサルコペニアの改善ならびに在宅復帰,実績指数と関連するかを検討する必要がある。

結論

本研究では,回復期リハ病棟入院中のサルコペニア患者を対象に,入院期間中のサルコペニア改善に関連する入院時身体機能指標を検討した。その結果,入院時運動FIMがサルコペニア改善と関連する指標として示された。回復期リハ病棟においては,入院時のADL能力の評価が,サルコペニア改善の見込みを予測するうえで有用である可能性がある。今後は多施設データや介入研究により,その妥当性を検証する必要がある。

謝辞

本研究の実施にあたり,測定およびデータ収集にご協力いただいた当院回復期リハビリテーション病棟のスタッフ各位に深謝する。また,本研究にご参加いただいた患者の皆様に心より感謝申し上げる。

利益相反

本研究に関連し,開示すべき利益相反はない。

文献
 
© 2026 Japanese Society of Physical Therapy

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