Physical Therapy Japan
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Research Reports (Original Article)
Construct Validity Based on Hypothesis Testing and Predictive Validity of the Trunk Impairment Scale in Patients with Subacute Stroke in Japan
Maito EGUCHI, Kosuke SEKI, Kazuhiro MIYATA
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JOURNAL OPEN ACCESS FULL-TEXT HTML

2026 Volume 53 Issue 5 Pages 329-336

Details
要旨

【目的】本研究の目的は,Trunk Impairment Scale(以下,TIS)の構成概念妥当性および予測的妥当性を検証することである。【方法】対象は亜急性期の脳卒中片麻痺患者とした。評価尺度はTIS, Trunk Control Test, Fugl-Meyer Assessment, Berg Balance Scale, Functional Independence Measureとした。構成概念妥当性はSpearmanの順位相関係数,予測的妥当性はreceiver operating characteristic curve(以下,ROC解析)により検討した。【結果】TISは各尺度と中等度~強い相関を示した(r=0.58~0.76)。ROC解析では中等度の識別能力を示した。【結論】TISは本邦の亜急性期脳卒中患者において良好な構成概念妥当性を示し,退院時歩行自立の予測においても一定の識別能力を示した。

Abstract

Objective: To examine the construct and predictive validity of the Trunk Impairment Scale (TIS).

Methods: Participants included patients with subacute stroke and hemiparesis. Outcome measures included the TIS, Trunk Control Test, Fugl-Meyer Assessment, Berg Balance Scale, and Functional Independence Measure. Construct validity was examined using Spearman’s rank correlation coefficients and predictive validity was assessed using receiver operating characteristic (ROC) curve analysis.

Results: The TIS showed moderate to strong correlations with the outcome measures (r=0.58–0.76). ROC analysis revealed a moderate discriminative ability for predicting walking independence at discharge.

Conclusion: The TIS showed good construct validity in Japanese patients with subacute stroke and moderate discriminative ability for predicting walking independence at discharge.

はじめに

脳卒中は国際的にも後遺障害の主要な原因の一つとされており,損傷部位や損傷範囲によって運動麻痺,感覚障害,高次脳機能障害などの多様な症状を呈する。脳卒中患者に対するリハビリテーションは,機能回復の促進および生活自立度の向上を目的として実施されており,その過程では回復に関与する身体機能を適切に評価することが重要である。なかでも体幹機能は,姿勢制御やバランス,四肢運動の協調に重要な役割を果たし,歩行能力や日常生活動作の回復における基盤的要素として示されている1–4)。このように,体幹機能は脳卒中後の機能回復の過程において重要な要因の一つであり,臨床現場において体幹機能を適切かつ定量的に評価することが求められている。

脳卒中患者の体幹機能障害を定量的に評価する尺度としては,2004年にVerheydenら5)によって開発されたTrunk Impairment Scale(以下,TIS)がある。TISは座位姿勢における体幹の安定性や選択的運動の制御を3領域から評価する尺度とされている。近年では,脳卒中患者における体幹機能を評価する標準化された評価尺度の一つとして使用が推奨されており6)7),脳卒中患者の体幹機能評価として臨床で広く用いられている。TISはこれまで多くの研究において心理測定学的特性の検証が行われており,脳卒中患者を対象とした信頼性は高い値(Intraclass Correlation Coefficients:ICC=0.96~0.99)を示すことが報告されている5)8–11)。また,妥当性についても,Trunk Control Test(以下,TCT),Berg Balance Scale(以下,BBS),Functional Independence Measure(以下,FIM)などの臨床尺度と中等度から強い相関(r=0.56~0.86)が示されており,体幹機能とバランス能力および日常生活動作との関連を反映する評価尺度としての妥当性が支持されている1)4)5)8)9)11–16)。

本邦においては,2020年に楠本ら17)によってTISの日本語版が作成されており,痙直型脳性麻痺患者を対象とした信頼性および妥当性の検証がなされている。しかし,信頼性および妥当性の検証は,異なる国や文化圏で開発された尺度を自国の同一疾患に適応するために対象集団に即した検証が求められており,評価尺度は言語のみならず,評価手順や臨床環境の違いの影響を受ける可能性があるため,原版と同様の心理測定学的特性が維持されているかを検証することが重要視されている18)。そこで,われわれは本邦の亜急性期脳卒中患者を対象として日本語版TISの検者内信頼性および検者間信頼性を検証し,高い信頼性を有することを報告した19)。しかしながら,評価尺度を臨床的に活用するためには,信頼性のみならず妥当性の検証も不可欠である。特に,本邦において日本語版TISの妥当性を検証した研究はみられず,亜急性期脳卒中患者を対象として構成概念妥当性や歩行能力との関連性を検討した報告もない。そのため,日本語版TISを本邦の脳卒中患者に対して臨床的に適用可能な評価尺度として確立するためには,さらなる心理測定学的特性の検証が必要である。

そこで,本研究ではCOnsensus-based Standards for the selection of health Measurement INstruments(以下,COSMIN)20)に基づいた方法論を用いて,本邦の亜急性期脳卒中患者を対象に,TISの仮説検証における構成概念妥当性を検証するとともに退院時の歩行自立の予測に関する予測的妥当性についても検討することを目的とした。

対象および方法

1. 研究デザイン

本研究は,前向き観察研究であり,COSMINに基づいて実施し,Strengthening the Reporting of Observational Studies in Epidemiology(STROBE)声明21)に準じて報告する。

2. 設定

本研究は,2023年1月から2025年2月の間にいわてリハビリテーションセンター(以下,当センター)回復期リハビリテーション病棟に入院した亜急性期脳卒中患者を対象とした。

3. 対象

選択基準は,脳出血もしくは脳梗塞の診断で,片麻痺を呈している症例とした。除外基準は,重度の失語症などで指示理解が困難な症例,呼吸器疾患などの重篤な合併症を有している症例,担当医師または理学療法士が研究参加に不適当と判断した症例とした。また,解析に必要なデータが欠損している症例は解析対象から除外した。

4. 評価項目

対象者の特性としては,性別(男性または女性),年齢,診断名(脳出血または脳梗塞),麻痺側(右片麻痺または左片麻痺),受傷日から評価日までの日数,下肢のBrunnstrom Recovery Stage(以下,下肢BRS)を使用した。

TISは,上肢支持のない端座位を開始肢位とし,静的座位バランス3項目(7点満点),動的座位バランス10項目(10点満点),協調動作4項目(6点満点)の全17項目(23点満点)で構成されている5)。静的座位バランスは,上肢支持のない端座位を10秒間保持する課題,検者が症例の麻痺側下肢の上に非麻痺側下肢を組ませ,10秒間保持する課題,症例が自力で麻痺側下肢の上に非麻痺側下肢を組み,10秒間保持する課題を評価するものである。動的座位バランスは,一側ずつ肘を座面に接地し開始姿位に戻る課題,骨盤を一側ずつ挙上させる課題を評価するものである。協調動作は,開始姿位で上部体幹を6回回旋させる課題,下部体幹を6回回旋させる課題を評価するものである。各動作は最大3回まで試行し,規定動作が不十分な場合は減点される。

妥当性検証のための比較尺度としては,体幹機能を評価するTCT,脳卒中患者の運動機能を包括的に評価するFugl-Meyer Assessment(以下,FMA),立位および動的バランス能力を評価するBBS,および日常生活動作能力を評価するFIMを使用した。

TCTは体幹機能を評価する尺度であり,患側および健側への寝返り,仰臥位からの起き上がり,座位保持の4項目から構成される。各項目は0~25点で評価され,総得点は0~100点である。得点が高いほど体幹機能が良好であることを示す22)。

FMAは脳卒中患者の運動機能を評価する尺度であり,上肢運動機能,下肢運動機能,感覚機能,関節可動域,関節痛などの項目から構成される。本研究では上肢運動機能(以下,上肢FMA)および下肢運動機能(以下,下肢FMA)を評価する運動項目を使用した。運動項目は上肢FMA66点,下肢FMA34点の計100点満点で評価され,得点が高いほど運動機能が良好であることを示す23)。

BBSは立位および動的バランス能力を評価する尺度であり,立ち上がり,立位保持,片脚立位など14項目から構成される。各項目は0~4点の5段階で評価され,総得点は0~56点である。得点が高いほどバランス能力が良好であることを示す24)。

FIMは日常生活動作能力を評価する尺度であり,セルフケア,排泄管理,移乗,移動などの運動項目と,コミュニケーションおよび社会的認知を評価する認知項目から構成される。本研究では運動項目合計と歩行項目の得点を使用した。運動項目は13項目から構成され,各項目は1~7点の7段階で評価され,総得点は13~91点である。得点が高いほど日常生活動作能力が高いことを示す25)。

5. データ収集方法

本研究のデータは,当センターで実施している定期的な臨床評価の枠組みの中で,研究参加に同意を得た患者を対象に,あらかじめ定めた評価時点において前向きに収集した。対象者の特性に関する情報(性別,年齢,診断名,麻痺側,評価日)は,医療カルテから抽出した。TIS, TCT, FMA, BBS, FIM(運動項目および歩行項目),BRSの各理学療法評価は入院1カ月時に実施した。さらに,FIM歩行項目に関しては退院時にも評価した。これらの評価は臨床業務の一環として担当理学療法士が実施した。なお,同一検者が複数の評価尺度を実施する場合もあったが,事前に評価手順の標準化およびトレーニングを行った。

6. サンプルサイズ

本研究は,COSMINの基準を参考に100例以上とした20)。

7. 統計学的分析

構成概念妥当性の検証では,事前に6つの仮説を設定した。仮説検証における構成概念妥当性とは,測定尺度が理論に基づいて設定された仮説通りに他の尺度や変数と関連しているかを検証することである。TISは体幹機能を評価する尺度であることから,同じく体幹機能を評価するTCTとは強い正の相関を示すと仮定した5)8)。また,体幹機能は四肢運動機能や日常生活動作の遂行に関連するものの,評価対象とする構成概念が完全には一致しないことから,上肢FMA,下肢FMA, FIM運動項目およびFIM歩行項目とは中等度の正の相関を示すと仮定した1)26)。さらに,体幹機能は姿勢制御やバランス能力の基盤となることから,BBSとは強い正の相関を示すと仮定した10)。COSMINの推奨に基づき,6仮説中5仮説以上(80%以上)が支持された場合に構成概念妥当性が良好と判定した20)。

また,TISが退院時の歩行能力の回復を予測できるかを検証するため,FIM歩行項目をアウトカムとして予測的妥当性を検討した。これらの検討は仮説検証における構成概念妥当性の一部として評価した。先行研究では,急性期脳卒中患者において体幹機能が退院時の歩行自立を予測することが報告されている。そこで本研究では,Ishiwatariら27)の報告を参考に,TISは歩行能力に対して有用な予測能力を有するという仮説を設定した。なお,退院時FIM歩行項目6点以上を歩行自立群,5点以下を非自立群と定義し,この定義はIshiwatariら27)の先行研究に準拠した。

予測的妥当性の検証にはreceiver operating characteristic curve(以下,ROC解析)を用い,曲線下面積(area under the curve:以下,AUC),感度,特異度,カットオフ値を算出した。各尺度間の関連性の検討にはSpearmanの順位相関係数を用いた。相関係数の解釈は,Akogluら28)の基準に準じ,r≧0.70を強い相関,r=0.40~0.69を中等度の相関,r<0.40を弱い相関とした。また,AUCの解釈は,Swetsら29)の基準に準じ,AUCが0.90~を高い精度,0.70~0.89を中程度の精度,0.50~0.69を低い精度,~0.49を偶然とした。統計解析はR version 4.2.2を用いた。

8. 倫理的配慮

本研究は茨城県立医療大学倫理委員会(受付番号:1077)(承認日:令和5年1月4日),いわてリハビリテーションセンター倫理委員会(承認番号:いわリ倫R4-8)(承認日:令和4年11月7日)の承認を受けた後,対象者に対して直接本研究の目的および内容を説明し,研究参加への書面同意を得た上で実施した。

結果

1. 対象者

本研究には,199名の脳卒中患者が登録された。除外基準に該当した64名(重篤な失語症などで指示理解が困難な症例49名,重篤な合併症を有している症例10名,担当医師または理学療法士が研究参加に不適当と判断した症例5名)および欠損データ13名を除外し,最終的に122名を解析対象とした。対象者の基本情報を表1に示す。対象者の平均年齢は約60歳であり,性別や病型に大きな偏りは認められなかった。入院1カ月時における各評価尺度の結果では,本研究の対象者は体幹機能,運動機能,バランス能力および日常生活動作において中等度の機能レベルを有する集団であった。また,FIM歩行項目の平均値は,入院1カ月時と比較して退院時に高値を示していた。

表1 対象者の基本情報

(n=122)
性別(名)男/女68/54
年齢(歳)61.8±12.4
診断名(名)脳出血/脳梗塞65/57
麻痺側(名)右片麻痺/左片麻痺66/56
評価日(日)入院1カ月時54.7±13.3
退院時119.1±39.1
下肢BRS(名)I/II/III/IV/V/VI4/27/8/25/25/28
TIS(点)13.7±5.9
TCT(点)78.5±27.0
FMA(点)上肢39.6±24.7
下肢23.9±10.3
BBS(点)34.5±18.8
FIM運動項目(点)64.0±22.3
FIM歩行項目(点)入院1カ月時3.8±2.5
退院時5.5±1.9

BRS: Brunnstrom Recovery Stage, TIS: Trunk Impairment Scale, TCT: Trunk Control Test, FMA: Fugl-Meyer Assessment, BBS: Berg Balance Scale, FIM: Functional Independence Measure.

2. 仮説検証における構成概念妥当性

TISとすべて尺度との間に正の相関が認められ,体幹機能が良好であるほど,上下肢の運動機能,立位バランス,日常生活動作や歩行能力が高い傾向を示した(図1)。TISと各尺度との相関係数は,TCTでr=0.76(95%信頼区間[以下,CI]:0.62~0.85),上肢FMAでr=0.60(95%CI:0.47~0.70),下肢FMAでr=0.72(95%CI:0.62~0.80),BBSでr=0.75(95%CI:0.66~0.82),FIM運動項目でr=0.68(95%CI:0.57~0.76),FIM歩行項目でr=0.58(95%CI:0.48~0.69)であった(表2)。本研究では下肢FMAのみ仮説と異なる結果を示したが,残りの5つの尺度において仮説通りの結果を示し,全体の80%以上で仮説が支持された。

図1 TISと各評価尺度との関係

横軸はTIS得点,縦軸は各評価尺度の得点を示す.各点は対象者1名を示す.FIM歩行項目との関係を示した図では,バブルの大きさは退院時FIM歩行得点を表す.実線は回帰直線,灰色帯は95%信頼区間を示す.TIS: Trunk Impairment Scale, TCT: Trunk Control Test, FMA: Fugl-Meyer Assessment, BBS: Berg Balance Scale, FIM: Functional Independence Measure.

表2 TISと各評価尺度との相関係数

仮説r値(95%CI)
TCT0.70~0.76 (0.62~0.85)
上肢FMA0.40~0.690.60 (0.47~0.70)
下肢FMA0.40~0.690.72 (0.62~0.80)
BBS0.70~0.75 (0.66~0.82)
FIM運動項目0.40~0.690.68 (0.57~0.76)
FIM歩行項目0.40~0.690.58 (0.48~0.69)

TIS: Trunk Impairment Scale, TCT: Trunk Control Test, FMA: Fugl-Meyer Assessment, BBS: Berg Balance Scale, FIM: Functional Independence Measure.

3. 予測的妥当性

TISによる退院時歩行自立の予測に関するROC解析の結果,AUCは0.79(95%CI:0.71–0.88)と中等度の識別能力を示した。また,感度は0.64,特異度は0.80,カットオフ値は12.5点であった(図2)。

図2 TISによる退院時歩行自立の予測に関するROC曲線

TIS: Trunk Impairment Scale, ROC: receiver operating characteristic, AUC: area under the curve.

考察

本研究は,本邦における亜急性期脳卒中患者を対象にTISの仮説検証における構成概念妥当性および退院時の歩行自立の予測に関する予測的妥当性を検証した。事前に設定した仮説に基づいた検証を行った結果,TISは体幹機能評価の比較尺度として位置づけられるTCTと強い相関を示し,さらに他の尺度との相関について事前に設定した仮説の大半が支持されたことから,体幹機能の構成概念を反映する尺度として妥当である可能性が示された。さらに,ROC解析の結果,TISは本研究の対象集団において退院時歩行自立に対する中等度の識別能力を示し,歩行能力との関連を支持する結果が得られた。これらの結果は,TISが本邦における脳卒中患者の体幹機能評価ツールとして有用であることを示唆するものであり,TISの心理測定学的根拠を補完する成果といえる。

仮説検証における構成概念妥当性について,TISとTCTとの間に認められた強い相関(r=0.76)は,原版を用いた先行研究で報告されている相関係数と一致していた5)。TCTは体幹近位部の運動制御を評価する尺度であり,体幹の静的および動的制御を評価するTISと測定領域が一部重複している。したがって,両尺度間に強い関連が認められたことは,TISが体幹機能を適切に反映していることを支持する結果であると考えられる。一方で,TISは座位姿勢における体幹の安定性や体幹の回旋・側屈などの選択的運動を評価する尺度であるのに対し,TCTは寝返りや起き上がり,座位保持などの基本的な体幹動作を評価する尺度である。このような評価内容の違いが存在することから,両尺度は関連する概念を評価しているものの,測定対象が完全に一致しているわけではないため,相関係数が完全相関に至らなかった可能性がある。

TISと上肢FMA, BBS, FIMの運動項目および歩行項目との間には,仮説通りの相関関係が認められた。特に,上肢FMAとは中等度の相関,BBSとは強い相関,FIMの運動項目および歩行項目とは中等度の相関が示された。これらの結果は,TISによって評価される体幹機能が,上肢運動機能や立位バランス,日常生活動作の遂行にかかわる身体機能と密接に関連していることを示唆する。体幹近位部の安定性は四肢運動の基盤となる身体機能とされており,体幹の姿勢制御能力は上肢運動や立位バランスの調整に重要な役割を果たすことが報告されている1)。特にBBSとの強い相関は,立位バランスの維持や姿勢制御において体幹近位部の安定性が重要な役割を果たすことを反映した結果であると考えられる。実際に,立位バランスの維持には下肢筋力のみならず体幹近位部の安定性が重要であり,体幹の姿勢制御能力が重心移動や姿勢調整に大きく関与することが報告されている1)。また,先行研究においてもTISとバランス能力との間には強い関連が認められており,本研究の結果はこれらの知見と一致するものである10)11)。

一方で,下肢FMAとの関連は事前に設定した仮説よりも強い相関を示した。本研究では,下肢FMAとは中等度の相関を示すと仮定していたが,実際には強い相関が認められた。この要因として,TISの評価項目には下肢を組む課題や下肢の代償動作を観察する項目が含まれており,下肢運動機能との評価内容上の構造的な重複が存在する可能性が考えられる。また,体幹近位部の制御は下肢運動機能の発現や歩行時の姿勢制御に重要な役割を果たすことが報告されており1)30),両者が共通した運動制御機構を反映している可能性がある。そのため,本研究では仮説を上回る相関が認められたものと考えられる。本結果は,海外の先行研究に基づいて設定した仮説が本研究対象においては必ずしも当てはまらなかった可能性を示しており,本邦の亜急性期脳卒中患者では体幹機能と下肢運動機能との関連が想定より強く現れる可能性が示唆された。

TISによる退院時歩行自立の予測に関するROC解析では,AUCが0.79であり,中等度の識別能力を示した。本結果は,体幹機能が歩行能力の獲得に重要な役割を果たすことを示した先行研究と一致するものである1)。また,本研究では入院1カ月時のTISが退院時歩行自立の予測に対して一定の識別能力を示したことから,TISは退院時歩行自立の可能性を検討する際の補助的な参考尺度となる可能性が示された。一方で,本研究で算出されたカットオフ値12.5点は,TISを歩行自立の可否を単独で判断する基準として用いるべきではないことを示している。感度は0.64であり,退院時に歩行自立へ至る症例の一部を見逃す可能性があるためである。そのため,臨床場面ではTISのみで判断するのではなく,下肢運動機能やバランス能力,認知機能,感覚障害などの情報と併せて解釈することが重要であると考えられる。また,本研究では単変量ROC解析を用いてTIS単独の識別能力を検討したが,歩行自立には年齢,麻痺重症度,下肢運動機能,バランス能力,高次脳機能障害,退院先環境など多様な要因が関与することが知られている14)15)26)。そのため,本研究結果はTISが退院時歩行自立に対して一定の識別能力を有する可能性を示したものの,TIS単独で十分な予測性能を有することを示すものではない。一方,Ishiwatariら27)は急性期脳卒中患者を対象として歩行自立に対する高い識別能力を報告している。しかし,本研究で用いたTISとIshiwatariらが用いたTISは,略称は同一であるものの評価内容および構成概念が異なる評価尺度であるため,結果を直接比較することはできない。そのため,本研究との違いについては評価尺度の相違に加え,対象時期や対象者特性の違いなどが影響した可能性が考えられる。急性期では体幹機能が歩行能力の回復を規定する重要な要因の一つである一方,亜急性期では体幹機能に加えて,下肢運動機能,バランス能力,認知機能,病前生活状況および環境因子など多様な要因が退院時歩行自立に影響している可能性がある。そのため,本研究ではTIS単独による歩行自立の識別能力が相対的に低くなった可能性がある。

また,本研究では回復期リハビリテーション病棟入院後1カ月時点のTISを用いて退院時歩行自立との関連を検討した。しかし,予後予測の観点からは,より発症早期の評価の方が臨床的有用性は高い可能性がある。本研究の対象は亜急性期脳卒中患者であり,急性期から回復期への移行過程で一定の機能回復が生じていた可能性がある。そのため,本研究結果は発症早期における予後予測を示すものではなく,回復期リハビリテーション病棟入院後の機能評価として解釈する必要がある。さらに,本研究では退院時のFIM歩行項目をアウトカムとして用いたが,退院時期は患者ごとに異なっていた。退院時歩行能力には機能回復のみならず,在院日数や退院調整の状況なども影響した可能性がある。そのため,本研究で示されたTISによる歩行自立の識別能力は,退院時期のばらつきによる影響を受けている可能性があり,結果の解釈には注意が必要である。

本研究の対象者は回復期リハビリテーション病棟に入院した亜急性期脳卒中患者であり,多くの症例が一定程度の機能回復を示している段階であった。実際に,本研究対象者の80.3%は下肢BRS IV以上であり,入院1カ月時FIM歩行項目の平均値は3.8±2.5点であったことから,比較的運動機能が保たれた患者が多く含まれていたと考えられる。一方で,本研究では重度失語症などにより指示理解が困難な症例を除外しており,結果として比較的軽度から中等度の患者が中心となった。TISは座位保持が可能であれば重症例に対しても適用可能な評価尺度であり,臨床的には重度の体幹機能障害を呈する患者における評価や予後予測への活用も期待されている。しかし,本研究で得られた構成概念妥当性および歩行自立に対する識別能力は,評価課題の理解や実施が可能な患者集団に基づく結果である。そのため,重度の運動麻痺や高次脳機能障害,認知機能障害を有する症例では,TISと他の機能尺度との関連性や歩行自立に対する識別能力が本研究と異なる可能性がある。さらに,本研究では比較的機能回復が進んだ患者が多く含まれていたことから,重症例を含むより幅広い脳卒中患者集団においても同様の結果が得られるかは明らかではない。したがって,本研究結果を脳卒中患者全体へ一般化する際には慎重な解釈が必要であり,今後は重症例を含めた多様な対象集団において妥当性を検証する必要がある。

本研究の意義として特に重要な点は,本邦の脳卒中患者を対象として,TISの妥当性を系統的に検証した点にある。これまで本邦では日本語版TISの信頼性に関する検討は行われていたものの,脳卒中患者を対象とした妥当性の検証は十分になされていなかった19)。本研究は,こうした課題に対応し,TISが本邦の脳卒中患者における体幹機能評価として妥当である可能性を示した。さらに,本研究では亜急性期という機能回復が進行しやすく,臨床的介入の効果が反映されやすい時期を対象としたことから,実臨床における評価ツールとしての有用性を検討する上でも意義があると考えられる。また,十分な対象者数を確保した上で検証を行った点は,本研究結果の解釈の安定性を高める要因の一つである。

本研究にはいくつかの限界も存在する。単施設研究であることから,地域差や施設体制が結果に影響した可能性は否定できない。また,本研究では欠損データを有する症例を除外して解析を行ったため,欠損が無作為でない場合には選択バイアスが生じた可能性がある。さらに,本研究は構造的妥当性を検証していないため,TISが本邦の患者特性において原版と同じ因子構造を保持しているかどうかは明確ではない。加えて,本研究では同一検者が複数の評価尺度を実施する場合もあり,共通方法バイアスの影響を受けた可能性は否定できない。

今後は,因子構造の検証や反応性の評価に加え,病期別・重症度別における妥当性の検証など,より総合的な心理測定学的特性を明らかにする研究が求められる。本研究は,本邦の脳卒中患者を対象としたTISの妥当性を示す基礎的な根拠を提供したものであり,今後の本邦のTIS研究の基盤となるものである。さらに本邦のTIS研究が蓄積されることにより,本邦の脳卒中リハビリテーションにおける体幹機能評価の標準化されたツールへと発展していくことが期待される。

結論

本研究では,本邦の亜急性期脳卒中患者を対象としてTISの仮説検証における構成概念妥当性および退院時歩行自立に対する識別能力を検証した。その結果,TISはTCT,上肢FMA, BBS, FIMなどの臨床尺度と有意な相関を示し,事前に設定した6つの仮説のうち5つの仮説が支持されたことから,良好な構成概念妥当性を示した。また,ROC解析の結果,TISは退院時の歩行自立の予測において中等度の識別能力を示した。以上より,TISは本研究の対象集団において体幹機能を評価する尺度として構成概念妥当性を有し,退院時歩行自立の可能性を検討する際の補助的尺度となり得ることが示唆された。

謝辞

本研究を行うにあたり,ご協力いただいた対象者および関係者に深く感謝する。

利益相反

本研究に関連して,開示すべき利益相反はない。

文献
 
© 2026 Japanese Society of Physical Therapy

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