Journal of Innovation Management
Online ISSN : 2433-6971
Print ISSN : 1349-2233
Research Notes
Theoretical Perspectives in Deglobalization Research: International Business and the Pandemic as an Exogenous Crisis
Haruo H. Horaguchi
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2021 Volume 18 Pages 231-246

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要旨

ディグローバリゼーションについての先行研究をサーベイすると、国際関係論における二分法であるリベラリズム(liberalism)と現実主義(realism)を対置させて多国籍企業行動への影響を議論している研究があることがわかる。2020年になると、こうした政治経済学的な要因に新型コロナウィルス(COVID-19)感染拡大が加わり、外生的な経済危機をもたらした。ディグローバリゼーションとして象徴的な役割を果たしていた米中貿易摩擦やブレクジットは、2020年初頭から顕在化した新型コロナウィルスによるパンデミックによって、全世界的、かつ、経済活動全般における具体的なディグローバリゼーション現象に塗り替えられた。ディグローバリゼーションの原因を論ずる際に、現実主義の見解に立つ場合、覇権安定が進むときにグローバリゼーションが深化し、覇権国によるパワーが揺らぐときにディグローバリゼーション現象が起こる、とする立論がある。米中間のパワーバランスが変化し、不可逆的な覇権の世界史的変化をもたらしている、とする見解もある。本稿では、新型コロナウィルス感染拡大への対応を誤った国が、大きな経済的損失を被り、国力を低下させ、覇権交代を引き起こす可能性があるという仮説を提起する。今後、貿易統計や直接投資統計データが公表されれば、この仮説を検証することが可能になる。

Abstract

A survey of previous research on deglobalization reveals studies discussing the implications for multinational corporations by contrasting liberalism and realism, the dichotomous schools of international relations theory. In 2020, the spread of COVID-19 was added to these political economy factors, causing an exogenous economic crisis. When discussing the causes of deglobalization, it is argued from a realist point of view that globalization deepens as hegemonic stability progresses, and that deglobalization occurs when the power of the hegemonic state fluctuates. There is also a view that the balance of power between the United States and China has changed, irreversibly changing the hegemony. This paper raises the hypothesis that countries that mishandle the COVID-19 pandemic may suffer significant economic losses and declining national power, causing hegemonic change. The release of trade and direct investment statistics in future will allow this hypothesis to be tested.

はじめに

ディグローバリゼーションを引き起こす要因は何か。本稿の目的は、この研究課題に関わる先行研究において指摘されてきた諸概念を整理し、今後の研究課題を明確にすることにある。筆者は、2019年より「ディグローバリゼーションにおける国際経営戦略の再設計―群集生態学的アプローチ―」をテーマとして研究を開始した1のだが、その研究を計画した学術的背景には世界経済の混迷があった。米中貿易摩擦による関税の相互エスカレーション、中南米からの移民を遮断するためのアメリカ・メキシコ国境での壁の建設、中近東から欧州に向かう難民増加を背景としたイギリスのEU離脱2、日本と韓国との徴用工問題を基軸とする政治経済的な摩擦など、様々な要因を背景として、多国籍企業による国際経営戦略を困難にする経済政策が積み重なり、国際経営戦略の再構築が求められていた。

2020年になると、こうした政治経済学的な現象に新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大が加わった。パンデミックがディグローバリゼーションを引き起こしたのである。ディグローバリゼーションへの警鐘として象徴的な役割を果たしていた米中貿易摩擦やブレクジットは、2020年初頭から顕在化した新型コロナウィルスの感染拡大によって、全世界的に、かつ、経済活動全般における具体的な現象に塗り替えられた。外務省のホームページによれば、2020年11月18日現在、「1.日本からの渡航者や日本人に対して入国制限措置をとっている国・地域」は80、「2.日本からの渡航者や日本人に対して入国後に行動制限措置をとっている国・地域」は106であった3。その合計は186の国と地域になる。

本稿における研究課題は次の二点に集約される。

第一の研究課題は、ディグローバリゼーションに関する国際政治経済学における過去の研究をサーベイし、ディグローバリゼーションの発生を説明する理論的な分析視角を整理することである。その作業のなかで、覇権(hegemony)4、覇権安定理論、バランス・オブ・パワー・システム5、国際レジーム6に関する議論をまとめる。その作業を通じてディグローバリゼーションの定義とその限界を探り、その現象が起こる要因について議論する。

第二は、ディグローバリゼーションに関わる外生的経済危機の理論を考察することである。内生的な経済要因からなる恐慌発生の論理に対する、外生的要因による経済恐慌発生の影響分析の必要性がある。これら二点の研究課題を議論したのち、今後の研究課題をまとめたい。

1.  グローバリゼーションとディグローバリゼーション

1.1  ディグローバリゼーションの定義

ディグローバリゼーション(de-globalization)とは、グローバリゼーション(globalization)という名詞に「分離」、「除去」、「否定」の意味を持つ接頭辞であるディ(de-)をつけた用語であり、脱グローバリゼーションないし脱グローバル化と訳される場合がある。グローバリゼーションは、「地球の」を意味する形容詞であるglobalに、その形容詞を動詞にする-izeを語尾に付加したglobalize、さらにその動詞を名詞にする-ationを接尾辞として付加した名詞であり、「国際化」、「グローバル化」などと訳される7

ウィット(Witt, 2019)は、国際政治学の研究成果を国際ビジネス研究に応用し、グローバリゼーションを国家間の相互依存関係の深化と定義し、ディグローバリゼーションとはその相互依存関係を弱めるプロセスであると定義している。グローバリゼーションに関する研究は多数あるが、たとえば、チェースダン他(Chase-Dunn et al., 2000)は、構造的なグローバリゼーションとして国内経済活動に比較した国際的な経済活動の密度(density)に焦点をあてた考え方である、と述べている。

本稿では、グローバリゼーションを導き出す経済主体が、国家、企業、人である、と明示的に定義し、それらの国際的な相互依存関係の深化をグローバリゼーションと定義したい。したがって、ディグローバリゼーションとはその相互依存関係を弱める状態が発生し、継続することである、と定義したい。

なお、語感として類似してはいるものの、意味の異なる用語としてアンチ・グローバリゼーション(反グローバル化)がある。バックリー=ハシャイ(Buckley & Hashai, 2020)は、アンチ・グローバリゼーション(反グローバル化)を議論しているが、彼らによれば、反グローバル化とは、関税や非関税障壁がなく財とサービスの交易が統合された市場、外国為替の統制やその他の規制が存在した分野において外国資本の流入が自由化された市場、労働移動が自由化された市場、規制の制度的統一が行われた市場、特に、国、地域、経済ブロックでの統一市場に対する反対を意味している8

図1は、ディグローバリゼーションの動因を説明する様々な概念を図式化して配置したものである。ウィット(Witt, 2019)はグローバル化とディグローバリゼーションを論ずる際に、国際政治学の分野における二分法である、リベラリズム(liberalism)と現実主義(realism)を対置させて多国籍企業行動への影響の経路を議論している。図1の縦軸にはそれらを配置した。図1の横軸には、「経済成長重視」と「分配・環境重視」を対照させて配置した。これらは国内政治における立場と共通するものでもあり、日本の政治風土では「保守」と「革新」と呼び慣わされてきた呼称でもある。リベラリズムと現実主義、そして、経済成長重視と分配・環境重視とによって4象限の分類ができる。以下では、これらの概念とディグローバリゼーションとの関係について順にまとめる。

図1 ディグローバリゼーションの動因

(出所)筆者作成。

1.2  リベラリズム

リベラリズム(liberalism)の訳語には、自由主義、進歩主義、改革主義、自由市場主義、理想主義、国際競争主義などがあるが、図1では多元主義という訳を採用した。リベラリズム(liberalism)の訳語そのものが多元的であり、訳語相互間の意味を検討することは本稿の検討範囲を超えるからである。ウォルト(Walt, 1998)によれば、リベラリズムとは経済的・政治的な要求が権力への関わり方に大きな影響を与え、「繁栄への欲求」や「リベラルな価値観へのコミットメント」(p.38)をもたらす考え方を指す、という。リベラリズムは、「国際機関、経済交流、民主主義の促進」(p.38)などの多様な手段によってもたらされる、としている。それに対して、現実主義とは利己的な国家が権力や安全保障を求めて絶えず競争している状態として国際関係を捉える見方、としている。その手段は、「経済力、特に軍事力」(p.38)である。ウォルト(Walt, 1998, p.38)によれば、リベラリズムを代表する著作はコヘイン(1984)であり、同書では国際レジームが議論されている。国際レジーム(international regimes)とは複数の国と国際機関とが形成するとされている体制ないし制度を表現する概念であって、本質的に複数の主体から構成される。

歴史的には、リベラリズム(liberalism)という名称は、玉置(2016)によれば、第一次世界大戦の勃発後、「民主主義の拡大」(p.85)を訴えたウッドロウ・ウィルソン(Woodrow Wilson)の登場と結び付けられており、彼によって「力の均衡に代わって『力の協調』、すなわち国際連盟による集団安全保障の確立が提唱された」(p.85)という。玉置(2016)によれば、「学問としての国際政治学は、この時生まれた」(p.85)。

ウィルソンは1913年から21年までアメリカ大統領を務め、ノーベル平和賞を受賞した人物であるが、自らが学長を務めたプリンストン大学において学生に対する人種差別的な政策を採っていたことから、2020年6月には、プリンストン大学において、公共政策・国際関係論の専門高等教育機関「ウッドロー・ウィルソン・スクール」、学生寮「ウィルソンカレッジ」という名称を破棄して改称されるに至った9。すなわち、リベラリズム(liberalism)という名称の発端となったウィルソンの行動は、2020年にBlack Lives Matter運動が隆盛となった時代における「リベラル」とは、かけ離れたものであった。

ナイ(Nye, 2017)はリベラリズムが依拠する国際的な制度的枠組み(liberal international order)の例として、マーシャルプラン、北大西洋条約機構(NATO)、日米安保条約(p.11)、世界貿易機関(WTO)、国際通貨基金(IMF)、国連平和維持軍、エボラ出血熱と地球気候変動に関する国連のプログラム(p.13)、アメリカ海軍、アメリカ連邦準備制度(p.14)を挙げ、「アメリカには約60の条約締結同盟国があり、経済雑誌エコノミストによれば、経済規模の大きな150ヵ国のうち100ヵ国がアメリカに依存しているのに対して、21ヵ国のみが敵対的である」(p.14)と紹介している。

1.3  現実主義

国際政治を分析するうえで、リベラリズム(liberalism)の対立軸として議論されるのは、現実主義(realism)である。図1に示したように、現実主義(realism)の立論においては、覇権安定理論(hegemonic stability theory)10、国家のパワー11、国家間のパワーバランス、複数国による国際レジームの形成といったキーワードが重視される。大国による軍事力と経済力が、国際政治に大きな影響を与えている「現実」が重視される。覇権(hegemony)はある特定の一国が有している影響力あるいは権力(power)として理解される。バランス・オブ・パワー・システムは一対一の国家間バランス、あるいは、ある複数国の連合に対応した別の複数国の連合のバランスが議論される12

チェースダン他(Chase-Dunn et al., 2000)によれば、覇権とは経済力や軍事力にとどまらない。覇権国は、価値観や目標に訴えかけて世界秩序を正当化していく普遍的なイデオロギーを形づくり、また、それを広めていく存在である13、と述べている。キンドルバーガー(Kindleberger, 1986)によれば、覇権国(hegemon)とは国際公共財を提供する国であり、アメリカが覇権国となったことにより、関税と貿易に関するブレトンウッズ体制、経済協力開発機構(OECD)創設の合意など、政策的な制度構築プロセスが行われた、という(p.8)14。キンドルバーガー(Kindleberger, 1986)は、クーパー(Cooper, 1985)を引用しつつ、世界保健機構(WHO:World Health Organization)の創設までに80年を要したことを指摘している15

このクーパー(Cooper, 1985)の論説は19世紀におけるコレラを巡る学術的論争が、国際貿易を重視し、海上検疫停船期間(quarantine)を不要とみなすイギリスの態度によってリードされてきたことを指摘するものであり、明白に国際協力が必要な防疫という領域においても、原因を明確に特定する科学的知見に限界があるときに、国家の政治的な要請が優先されることを示唆している。キンドルバーガー(Kindleberger, 1986)が、クーパー(Cooper, 1985)を引用しつつ覇権安定理論に結びつけるのは、パックス・ブリタニカと呼ばれるイギリスを中心とした覇権ないし世界経済構造の確立と、パックス・アメリカーナと呼ばれるアメリカを中心とした覇権の確立を比較する文脈であろう。しかしながら、世界保健機構の初代事務局長であるカナダ人医師であり、軍医でもあったチゾム(Chisholm, 1950)によれば、1948年にスイス・ジュネーブで開催された第1回世界保健総会には68ヵ国が参加し、18ヵ国が執行理事会(Executive Board)に参加した(p.1023)という16。国際公共財としての世界保健機構の設立にかかわったのは覇権国のみとは言えない。

1.4  覇権安定理論への批判的考察

現実主義のなかの覇権安定理論は、世界経済を俯瞰するうえでの極めて荒削りな図式である。経済力と軍事力の強い中心的な一国が登場して、その影響力のもとで「世界秩序を正当化していく普遍的なイデオロギー」を形成し、国際機関を設置してきたと主張する。これは、リベラリズムが国際協調を意図して国際機関を設置してきた、あるいは、設置するべきであると志向してきた、とする見解とは大きく異なるものである。富田(2013)は、「国際レジームとしてのWHOが提供する国際公共財(パンデミック・インフルエンザ対応)と覇権国としての米国が提供する国際公共財(バイオテロリズム対策)」(p.119)との間に相克があったとする。この見解は、国際レジームと覇権国が共存しつつ、対立する構図を示している。

あるいは別の表現をすれば、キンドルバーガー(1986, 1996)による覇権安定理論の提唱は、アメリカを中心とした覇権を学際的に擁護する意図をもち、その学説の影響力によって一定の支持を得たとも言える。キンドルバーガー(1996)では、イタリア⇒ポルトガル⇒スペイン⇒オランダ⇒イギリス⇒ドイツ⇒アメリカ⇒日本へと経済の中心地が移行し、そこで経済的首位(economic primacy)の歴史的解説が終わっている。また、キンドルバーガー(Kindleberger, 1974)では、国際金融センターの発展を素描し、イギリスのロンドン、バーミンガム、フランスのパリ、リヨン、ドイツのベルリン、ハンブルグ、フランクフルト、イタリアのタリン、フローレンス、ローマ、ミラノ、スイスのチューリヒ、バーゼル、ジュネーブ、カナダのトロント、モントリオール、アメリカのニューヨークを比較している17。しかしながら、キンドルバーガー(Kindleberger, 1974)では、インドのムンバイ、中国の上海、香港、シンガポール、東京などアジアの金融センターと呼びうる諸都市を比較してはいない。

キンドルバーガーの覇権安定理論(hegemonic stability theory)には、いくつか不可解な点がある。第一は、キンドルバーガーが抽出する大国のなかに隋、唐、明、清といった(現在の中華人民共和国につながる)中国の帝国、(現在のモンゴルにつながる)元によるユーラシア大陸の席巻、(現在のトルコにつながる)オスマン帝国による600年の統治18、といった覇権(ヘゲモニー)への言及がほとんど見られないことである。キンドルバーガー(1996)が選択したイタリア(ヴェネツィア、フィレンツェ、ジェノヴァ)、ポルトガル、スペイン、オランダ、イギリス、といった国々の交易は西欧における重商主義諸国に分類されるが、隋、唐、元、明、清、オスマン帝国の交易ネットワーク19との比較のうえで選別されたものとは思えない。キンドルバーガー(1996)による研究対象の選択自体が先験的なものであり、いわば、超越的に西欧諸国が選択されているように思われる。隋、唐、元、明、清、オスマン帝国の交易ネットワークを再考することで、西欧中心主義によって観察された重商主義的活動が再定義される可能性があるのではないか、とも想像される。

第二に理解不可能な点は、覇権安定理論の「安定性の根拠」についてである。キンドルバーガー(1986)によれば世界のなかの一カ国が覇権を担うときに、それが安定し、複数の国が覇権に関与するときに不安定となる、という(訳書、p.314およびp.326)のだが、そのような一国中心主義的な命題が成立した歴史的時代が果たして本当にあったのかどうか、不明というしかない。覇権安定理論における「安定」をいかに定義するか、という問題もある。パックス・ブリタニカであれ、パックス・アメリカーナであれ、「安定」や「平和」がいかなる意味でもたらされたのか、歴史的な検証が必要であろう。

第三に、覇権安定が成立するときに、どの国に対して覇権が行使されたのか、という問題がある。覇権が存在したと言われる時期に、イギリスの覇権はどの国に対して行使され、アメリカの覇権はどの国に対して行使されたのか、という疑問が残る。さらには、アメリカによる覇権の対象から逸脱した国はなかったのか、という疑問に対する回答も明確に示されてはいない。より具体的には、ベトナムやイランなど、アメリカと交戦状態になった国に対して、覇権は成立していたのか、いなかったのか、という疑問が残る。

第四に、覇権国(hegemon)のもとで設立されてきた国際的制度はどのように変遷してきたのか、という問題がある。たとえば、イギリスの覇権のもとでの国際連盟、アメリカの覇権のもとでの国際連合という対応があるとしても、国際連合を成立させた覇権国がアメリカだけと主張することには無理がある。軍事戦略的には同盟諸国が必要であり、アメリカ以外の国連常任理事国に該当する国々が世界貿易機関(WTO)や世界保健機構(WHO)の設立に賛成してきたという事実がある。そうした国際的組織がアメリカの覇権とのみ結びついていると言えるのかどうか、疑問である。

2.  ディグローバリゼーションの発現時期

2.1  覇権交代とディグローバリゼーション

ウィット(Witt, 2019)は、現実主義の見解に立つ場合、覇権安定が進むときにグローバリゼーションが深化し、覇権国による覇権が揺らぐときにディグローバリゼーション現象が起こる、と立論している(p.1063)。苑(2018)は「米中貿易摩擦は早かれ遅かれ発生するのが一種の宿命的な現象である。トランプ政権がこれを発動したのは歴史的な偶然にすぎない。米中間のパワーバランスの変化は、すでに回避不能かつ不可逆の世界的変遷だといえる。今回の貿易摩擦は、ヘゲモニーの交代をめぐる競争の幕開けである」と述べて、2017年前後の米中貿易摩擦が「ヘゲモニー交代」の画期となった、と述べている20。また、その背景として、中華人民共和国による改革開放路線への転換から「一帯一路」政策に至る経済成長がある、としている。

ここで問題となるのは、ヘゲモニーの交代に伴うディグローバリゼーションが発現する時期である。ヘゲモニーの交代については、キンドルバーガー(1996Kindleberger, 1974)が議論してきたような経済大国の盛衰という内生的21要因による説明があるが、ノルロフ(Norrlöf, 2020)は、新型コロナウィルス感染拡大に対して、アメリカ・トランプ政権の対応が適切でなかったことから覇権国(hegemon)の地位を失う可能性を指摘している。クーリー=ネクソン(Cooley & Nexon, 2020)は新型コロナウィルス感染拡大に際して、中国が国際保健機構(WHO)への関与を強めつつあることから、アメリカの覇権が凋落しつつある、としている。以下、本稿においても、新型コロナウィルス感染拡大を事例とした外生的経済危機の理論を考察したい。

2.2  外生的経済危機の特徴

新型コロナウィルス感染拡大のもとにおける外生的な経済危機とは、新聞報道にある具体例を挙げれば、次のような現象である。すなわち、出入国制限による旅行産業の不況、飲食サービス業の顧客減、国際的なサプライチェーンの分断、自動車メーカーの工場操業停止、スポーツ・イベントの開催延期・中止、2020年開催予定であった東京オリンピックの延期、エンターテインメントや講演会といった集会を伴う催し物ビジネスの延期や中止、中小企業の採算悪化、雇用の収縮、株価・原油価格の低下、株式上場の遅延と停滞などである。保育園、小学校から大学、大学院に至る教育機関でも2020年3月から5月までの活動に制限が加えられ、小学校から高校までの授業が停止となり、大学では遠隔システムによる授業が行われる状態となった。こうした現象は、パンデミックによる人命の危機という影響を超えて、経済活動への悪影響となっている。

本稿を記している2020年11月現在も進行し続ける新型コロナウィルスによるパンデミックは、最も純粋なディグローバリゼーションを現出し、その経済的帰結がどのような現象となるかは予断を許さない。パンデミックへの対応は、日本の多国籍企業がどの国に生産子会社を配置するべきか、国際的なサプライチェーンをどのように再構築するのか、という国際経営の基本問題に新たな課題を突き付けている。

2.3  成長と分配

表1は、2020年7月1日現在における新型コロナウィルスの感染者数と死者数を国別にまとめたものである。国別感染者数や死者数が示唆するのは、飲酒を認める宗教であるか否か、食生活において指をつかわずに箸を使うか否か、など、文化・習慣に根差した要因もあるかもしれない。しかし、外生的経済危機としてコロナウィルスの感染拡大データを眺めると、図1の横軸左側に示した「分配・環境重視」と右側に示した「経済成長重視」の対比が持つ重要性を推測することができる。

表1 新型コロナウィルスの感染者数と死者数(2020年7月1日現在)
国名 感染者数 死者数 国名 感染者数 死者数
アメリカ 2,634,432 127,410 エジプト 68,311 2,953
ブラジル 1,402,041 59,594 アルゼンチン 64,530 1,307
ロシア 646,929 9,306 ベラルーシ 62,118 392
インド 566,840 16,893 ベルギー 61,427 9,747
イギリス 314,160 43,815 エクアドル 56,432 4,527
ペルー 285,213 9,677 インドネシア 56,385 2,876
チリ 279,393 5,688 オランダ 50,483 6,132
スペイン 249,271 28,355 シンガポール 43,907 26
イタリア 240,578 34,767 ポルトガル 42,141 1,568
イラン 227,662 10,817 フィリピン 37,514 1,266
メキシコ 226,089 27,769 スイス 31,714 1,962
パキスタン 209,337 4,304 イスラエル 24,688 320
フランス 202,063 29,848 日本 18,763 974
トルコ 199,613 5,131 オーストリア 17,766 705
ドイツ 195,418 8,990 韓国 12,800 282
サウジアラビア 190,823 1,649 マレーシア 8,639 121
南アフリカ 151,209 2,657 オーストラリア 7,834 104
バングラデシュ 145,483 1,847 タイ 3,171 58
カナダ 105,830 8,628 香港 1,203 7
カタール 96,088 113 台湾 447 7
コロンビア 95,269 3,376 ベトナム 355 0
中国 84,785 4,641
スウェーデン 68,451 5,333 世界全体 10,450,628 510,632

(注1)日本経済新聞と読売新聞に掲載されていた国々のデータによる。二つの新聞記事に掲載されていた国々の感染者数・死者数の数値が一致しない場合には、前者の数値を転記した。

(注2)日本経済新聞に掲載されていたデータは2020年「7月1日午後4時現在」、読売新聞に掲載されていたデータは同「日本時間7月1日午前0時現在」とある。ともに原データは、ジョンズ・ホプキンス大学の集計による。

(出所)日本経済新聞社データベースより2020年7月2日、「〈数表〉世界各国・地域の新型コロナ感染者数」日本経済新聞朝刊、11ページ。読売新聞データベース「ヨミダス歴史館」より、2020年7月1日、「感染沈静化でも非常事態延長、タイ、抗議活動封じか」東京朝刊、6ページより引用。

図1における「分配・環境重視」を主張する人々は、多国籍企業によるグローバリゼーションの外部不経済を批判してきた人々と重なる。石油メジャーによる原油採掘、石炭火力による二酸化炭素排出、石油タンカーによる原油流出、など、エネルギー部門における多国籍企業には批判的な眼が注がれてきた。また、アジア通貨危機やリーマンショックといった経済危機・金融危機の原因を多国籍企業に求める立場からの批判も提起されてきた。世界貿易機関(WTO)の総会では、開発途上諸国の動植物が多国籍企業によって乱獲、乱伐されているという批判を提起し、自由貿易をを批判してきた。「経済成長重視」の立場をとる人々は、多国籍企業によるグローバリゼーションの結果として生ずる、国内市場開放による雇用喪失を批判してきたのであり、その主張は、国内産業の保護につながっている。

表1が示しているものは、新型コロナウィルスの感染拡大に対して、世界各国がいかに経済活動に対して異なった対応を示してきたかを示唆している。「経済成長重視」の立場からは、感染拡大状況が続いても都市を封鎖(lockdown)せずに経済活動を続ける政策が採用され続けられ、感染者数・死者数が増えるかもしれない22。「分配・環境重視」を主張する人々が多ければ、感染防止への医療体制を重視するために感染者数・死者数は比較的少数にとどまるであろう。その場合、経済活動は停止され、所得分配の歪みが広がる可能性もある。その経済的な影響の評価は、今後の課題のうちのひとつである。

3.  今後の研究課題

3.1  覇権交代の可能性

上述したように、ウィット(Witt, 2019)によれば、国際関係論における現実主義の立場からは、覇権が揺らぐときにディグローバリゼーション現象が起こる、という(p.1063)。仮に、その仮説が正しいとすれば、覇権の交代を予測できれば、ディグローバリゼーション現象の発現を予測することが可能であることになる。ノルロフ(Norrlöf, 2020)は、新型コロナウィルス感染拡大を公共害(public bads)として捉え、公共財(public goods)に対置させて国際協調による対応を議論している。

本稿で考察したように、パンデミックによる外生的な経済危機が発生するときには、覇権交代の論理が逆転する。すなわち、パンデミックのために国際的な経済活動が切断される状況では、ディグローバリゼーションが経済活動の各分野に直接的に反映される。その経済的な危機状態が長期化することで覇権国の経済力が弱まり、軍事費支出を捻出することができずに覇権が弱まる、という歴史的経路が生まれる、と考えられる。新型コロナウィルス感染拡大への対応を誤った国は、大きな経済的損失を被り、国力を低下させ、覇権交代を引き起こす可能性がある。

さらに、覇権国という単一の大国を想定しない場合にも、国際レジームと呼ばれる複数の国々の連合体が国際政治に与える影響を弱める可能性もある。表1が示唆するのは、アメリカ、ブラジル、ロシア、イギリスをはじめとするキリスト教圏における新型コロナウィルスの感染拡大と経済的損失である。これらがアメリカという単一国の覇権衰退という現象を引き起こすのか、あるいは、なんらかの国際レジームの解体という現象につながるのかを判定するためには、今後の経過を観察する必要がある。

理論的には次のような課題もある。すなわち、洞口(Horaguchi, 2014, 2016, 2017)は群集生態学における共生の一形態である片利共生(へんりきょうせい、commensalism)の概念によって日本における産学官連携を分析し、集合知の創出パターンを研究したが、異種交配、片利共生、偏害、寄生といった諸概念は、異なる環境のもとで組織が群生する状態に応用可能である、と考えられる。応用可能な組織の具体例としては、多国籍企業の戦略的提携、国家の枠組みを超えた国際組織、国際レジームと称される国家間の協調行動がある。集合知の創出パターンにおいて中心的な役割を果たすと推定されるのは、知識マネジメントの交配と共生の制度であるが、それは、戦略的提携や国際合弁事業を営む多国籍企業経営の存続可能性を理解するうえで有効かもしれない。さらに、世界貿易機関(WTO)や世界保健機構(WHO)のような国際組織、あるいは、国際レジームと呼ばれる国家間連携を分析する視角となりうるかもしれない。片利共生を典型とする諸概念の相互関係を分析的に論理化できれば、ディグローバリゼーションのもとで最適立地を探索する多国籍企業の立地戦略についてのあるべき行動への指針を手に入れることが可能となり、また、その指針にもとづいた経済政策の立案も可能になるであろう。

3.2  グローバリズムの反作用

洞口(2002)ではグローバリズム(globalism)を封建制(feudalism)や資本制(capitalism)の後に継起する社会制度として定義し、グローバル化の「作用」と「反作用」を論じた。多国籍企業による国際的なサプライチェーンの構築が「作用」であり、直接投資によって雇用が失われる産業空洞化は、その「反作用」である。日本国内で産業空洞化が進むことによって産業基盤が競争力を失う。パンデミックによって国際的なサプライチェーンが混乱することは、多国籍企業が押し進めるグローバリズムのもとでの別の意味での「反作用」である、と言える。すなわち、国際的な活動という「作用」が大きければ大きいほど、その活動がパンデミックによって切断されるというディグローバリゼーションの「反作用」が大きくなるのである。

対外直接投資を活発に行う国ほど、国内産業の空洞化が進む。その論理と同様に、EUやAFTAのように地域的にグローバル化を進めている地域ほど、その域内における感染爆発の影響は大きいはずである23。グローバリゼーションの「作用」と「反作用」が対応しているという命題が真であるとすれば、表1が示しているのはグローバリゼーションの程度が大きな国々であり、逆に、グローバリゼーションの「作用」が小さい国、すなわち、鎖国に近い政策をとっている国(たとえば北朝鮮)では、パンデミックによる影響が少ない、と予測できることになる。グローバリズムが新たな社会制度であるとすれば、外生的経済危機が過ぎ去ったのちには、それ以前の発展経路に収斂していくことが予想される。つまり、新型コロナウィルスに効果のあるワクチンが開発されれば、グローバル化は再開されるはずである。これらの推移については、今後、数年をかけて観察する必要がある。

3.3  経済活動のレジリエンス

レジリエンス(resilience)とは反発力や頑健性を意味する24が、今後、貿易統計、直接投資統計といったデータが蓄積されていけば、新型コロナウィルス感染拡大のもとで、どの国が甚大な損害を被り、どの国が早期に回復したかを定量的に分析することが可能になる。また、国際的なサプライチェーンの分断という事態に対して、多国籍企業がどのようなBCP(business contingency plan)を立案してサプライチェーンの再構築を行ったのかについても、事例分析が可能となるであろう。すでに、2011年東日本大震災後の日本企業がどのような復活を遂げたかについては研究が進展してきた25が、経済危機のなかで生存し、成長していく企業の経営戦略を確認することや、具体的な経営手法と戦略を明らかにしていくことも、重要な研究課題である。

外生的経済危機は倫理観を逆転させる。新型コロナウィルスの感染拡大以前の時代において、都市化は善であった。都市における就業機会の増加は善であり、人々は満員電車に乗って職場に向かった。映画館や劇場、コンサートや野球観戦では満員となった観客がエンターテインメントを楽しむことも善であった。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大以後、「新しい生活様式(new normal)」が叫ばれるようになり、密集した空間での仕事や娯楽活動を避ける必要が生まれた。2020年、新型コロナウィルスによる感染者数と死者数のデータは、日々、更新され続けた。新型コロナウィルスによるパンデミックがグローバルな規模で外生的な経済危機を苛烈なまでに押し進めており、それは各国の国際的な経済活動を制限している。経済活動におけるレジリエンスが、新型コロナウィルス感染拡大の収束後に、どのような形態をとるのか、想定困難でもある。すなわち、量的な復元としては計測できない質的変化が起こりつつあると言う意味で、不確定な部分が残されている。それは、ディグローバリゼーションを体験した人々の思想にも大きな影響を与えるかもしれない。

謝辞

本稿の作成にあたっては、科学研究費補助金基盤研究(B)研究課題/領域番号20H01541の助成を受けた。

1  本稿は、「ディグローバリゼーションにおける国際経営戦略の再設計―群集生態学的アプローチ―」を研究テーマとする科学研究費補助金基盤研究(B)の研究記録である。研究期間は2020年度から2024年度までの5年間であり、その初年度の研究成果である。

2  2018年にフランス・パリで開催された経営戦略学会(Strategic Management Society)の国際大会は“Strategies in the Era of De-Globalization”をテーマに掲げた。同学会において、洞口=煤孫(Horaguchi & Susumago, 2018)はエージェント・ベースド・シミュレーションモデルによる多国籍企業立地の解析を行い発表した。

4  覇権(hegemony)の概念はグラムシ(Gramsei)によって提起されたものであり、マルクス主義における「プロレタリアート独裁」に一線を画す意味で利用されたとの解説もある。グラムシ(2001, p.278)の訳者解説を参照されたい。ブースマン(Boothman, 2008)によれば、グラムシによるヘゲモニーの語源は、ギリシャの哲学者イソクラテスによる“logos hegemon panton”という言明に依拠したものであり、その意味は、「発言と言語はすべてを規定し導くものである(‘speech and language are the ruler and guide of all things’)」という(p.211)。

5  ポランニー(1944)が提起した概念である。

6  コヘイン(1984)における概説を参照されたい。

7  洞口(2002)はグローバリズム(globalism)を歴史的画期ののちに登場した新たな制度として捉え、封建制(feudalism)、資本制(capitalism)の後に成立した社会制度である、としている(1~2ページ)。中国語ではグローバリゼーション(globalization)を「全球化」と訳すが、その例を用いれば、グローバリズム(globalism)は「全球制」と言い表すことができるであろう。なお、英中辞典によればglobalismの訳としては、「全球化」、「全球性」、「全球主義」といった訳語を見つけることができよう。

8  バックリー=ハシャイ(Buckley and Hashai, 2020)の原文は以下のごとくである。“anti-globalization challenges the existence of tariff-free and nontariff-free access to markets, the integration of markets for goods and services, liberalization in the flow of foreign capital (through exchange controls and other restrictions that can stem from security concerns, competition concerns, or from protection of key assets and innovations), liberalization in labor flows (by posing restrictions), and the harmonization of regulations across nations, regions, and economic blocks.”(p.97)

9  朝日新聞デジタル、2020年6月28日、https://www.asahi.com/articles/ASN6X5DK2N6XUHBI00W.htmlを2020年11月10日に確認。

10  覇権安定理論を応用した論説としては、リウ=ミンテ(Liu & Ming-Te, 2011)がある。

11  ハーシュマン(1945)では貿易の集中度によって国家のパワー(国力、national power)を議論している。「貿易大国が相対的に小さな国の貿易を独占することにより、国力上のメリットがあるならば、後者は防衛策として、1つあるいは2つの巨大市場や供給源への過剰依存を回避するため、自国の貿易をできる限り多くの国に分散することを目指すであろう。したがって、2つ目の統計分析は、相対的貿易小国の国別貿易集中度を測定する。」(p.92)

12  ポランニー(1944)を参照されたい。

13  チェースダン他(Chase-Dunn et al., 2000)の原文は以下のごとくである。“Hegemony is thus not only a matter of economic and/or military power, but a hegemon must also formulate and propagate a universalistic ideology in which world order is legitimated by appeals to general values and goals.(p.81)”

14  キンドルバーガー(Kindleberger, 1986)の原文は以下のごとくである。“Realists maintain that international public goods are produced, if at all, by the leading power, a so-called “hegemon,” that is willing to bear an undue part of the short-run costs of these goods, either because it regards itself as gaining in the long run, because it is paid in a different coin such as prestige, glory, immortality, or some combination of the two. Institutionalists recognize that hegemonic leaders emerge from time to time in the world economy and typically set in motion habits of international cooperation, called “regimes,” which consist of “principles, norms, rules and decision-making procedures around which the expectations of international actors converge in given issue areas” (Stephen Krasner, 1983, p.1). Under British hegemony, the regimes of free trade and the gold standard developed more or less unconsciously. With subsequent American hegemony, a more purposeful process of institution making was undertaken, with agreements at Bretton Woods, on tariffs and trade, the Organization for Economic Cooperation and Development, and the like. Political scientists recognize that regimes are more readily maintained than established since marginal costs are below average costs; as hegemonic periods come to an end with the waning of the leading country’s economic vitality, new regimes needed to meet new problems are difficult to create.”上記引用中のKrasner(1983)は、レジームの構成要因のひとつとして知識を挙げている(p.19)。

15  キンドルバーガー(Kindleberger, 1986)の原文は以下のごとくである。“Cooper (1985) has written of the eighty years it took to create and get functioning the World Health Organization despite the clear benefits to all countries from controlling the spread of disease. And it takes work to maintain regimes; in the absence of infusions of attention and money, they tend in the long run to decay.”同論文は、キンドルバーガーがアメリカ経済学会(American Economic Association)の会長として同学会の機関誌に掲載したものである。

16  チゾム(Chisholm, 1950)に掲載されている18か国の略称は、ブラジル、白ロシア(現・ベラルーシ)、中国、エジプト、フランス、インド、メキシコ、オランダ、フィリピン、ポーランド、スウェーデン、トルコ、ソ連、南アフリカ、イギリス、アメリカ、ベネズエラ、ユーゴスラビアである(p.1023)。なお、2020年現在、ソ連とユーゴスラビアは複数の国に分裂している。

17  同様の整理として石見(2012)がある。

18  小笠原(2018)を参照されたい。同書では、オスマン帝国の始まりを1299年、その崩壊を1922年とし、およそ600年間続いた帝国であったとしている。速水(2006)によれば、「スペイン・インフルエンザ」は1918年から1920年まで世界に猛威を振るい、第一次大戦後の国際政治にも影響を与えたという(p.79)。オスマン帝国での「スペインかぜ」に関してはユルン=コパー(Yolun & Kopar, 2015)を、日本国内における「スペインかぜ」の推定感染者数については池田他(2005)を参照されたい。

19  飯田(2013)は、16世紀から17世紀におけるヴェネツィアとオスマン帝国による絹織物交易を歴史的に跡づけている。

20  中国の覇権についてはアートナー(Artner, 2020)の論考があり、歴史的には、新たな世界秩序の構築にあたって武力衝突に発展した事例がある、としている(p.1895)。

21  内生的経済成長の理論は、宇沢(Uzawa, 1965)、ローマ―(Romer, 1994)などが議論する数理経済学的なモデルである。これに対して内生的な経済危機の理論は、言語的な経済モデルとして語られることが多く、その例としては、賃金上昇を恐慌要因として説く宇野(1976)、株式や国債などの市場バブルの発生を恐慌要因として捉えてきたラインハート=ロゴフ(2011)らによる研究がある。

22  ノルロフ(Norrlöf, 2020)は、こうした状況を「自由主義の呪い(liberal curse)」(p.1286)と呼んでいる。

23  洞口(Horaguchi, 2007)では地域経済連携協定の経済分析を行い、貿易ネットワークのなかでのR&Dのモデル分析を行った。

24  経済分野でのサーベイ論文としては藤井他(2012)がある。

25  経営学領域での研究としては、たとえば、佐伯(2013)がある。

参考文献
 
© 2021 The Research Institute for Innovation Management of Hosei University
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