Journal of Innovation Management
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The Latent Strength of Agriculture in Italy: Rural Development Through Agriculture Embedded in Territorio
Junko Kimura
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2021 Volume 18 Pages 25-54

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要旨

本稿はイタリアのテリトーリオの関連主体が中心となりボトムアップ型活動によって農村資源を活用しながら経済、社会、環境のバランスを取り戻すプロセスを明らかにする。第1に、ヨーロッパ連合(EU)の農業政策、とくにLEADER事業の経緯を説明する。第2次世界大戦後、ヨーロッパは食料増産が必要であったことから工業的農業パラダイムのもと生産増大、集約化、専門化をベースとする効率的拡大志向の農業が推し進め、生産主義を貫く。1980年代になると農業収入の低下と農業ビジネスの不振からポスト生産主義が登場し、農業を生産から農村アメニティやサービス、景観、文化的要素といった農村開発政策に移行させていく。第2に、テリトーリオ・アプローチによってEUがいかにボトムアップ型地域活性化の取組みに取り組んでいるのかを説明する。テリトーリオは「地形・地質、水や緑の生態系などの自然条件の上に、人々の手になる農業の営みやそれが結実した景観があり、町や村の居住地に加え、農場、修道院が点在する。その総体(陣内, 2019, p.13)であり「都市、集落、田園を1つの共通の社会経済的・文化的アイデンティティをもつ地域(陣内他, 2019, p.2)」と定義される。EUはプロジェクトがより効果を生んでいる。その理由は関連主体がネットワーク関係を作りテリトーリオの特性やニーズに対応させた戦略をたてるからである。第3に、テリトーリオ・アプローチによる取組みの具体的な事例としてトスカーナ州アミアータ西麓を取り上げる。テリトーリオ・アプローチを指針として事業を実施する活動単位であるテリトーリオの人々が中心となり内発的発展を実践し期待された成果を生んでいる。

Abstract

This article argues how Territorio-based bottom-up activities using existing rural resources restore the balance of economic, social, and environmental values. First, the EU Common Agriculture Policy and the LEADER programme are explained. After World War II, Europe submitted to an industrial agriculture paradigm, promoting efficiency-oriented farming with mass production, consolidation, and specialization for the primary objective of food production increase. In the 1980s, post-productivism emerged due to agricultural income decline and industry shrinkage. The focus of agriculture was shifted from production to rural amenities, services, landscape and cultural elements. Secondly, this paper explains how the EU works on bottom-up regional revitalization using the Territorio approach. Territorio consists of “landscapes with natural conditions of topography and geology, water and plant ecosystems and with human conditions of agricultural activities, residents in urban and rural areas, farms and monasteries (Jinnai, 2019, p. 13)” and “a region where urban, rural and countryside share one common socio-economic and cultural identity (Jinnai, et al., 2019, p.2)”. This is having success in the EU, in which the stakeholders form networks and collaboratively work and formulate strategies that meet the characteristics and needs of their Territorio. Thirdly, this study describes the case study of the western foothills of Mount Amiata, Grosseto Province in Tuscany. People in the Territorio collaboratively play central roles in endogenous development, resulting in rural revitalization.

1.  EUの農業政策の概要

1.1.  生産からバランスへ

近年のEUは非効率な農業を手厚く保護している(木村, 2020)。どのような経緯でそのような方針をとるに至ったのかを理解するためにEUが歴史的にどのような農村政策を展開してきたのかを概観しよう。第2次世界大戦後、国家は生産増大、集約化、専門化をベースとする工業的拡大志向の農業を推し進めた。当時は食料増産が必要であったことから工業的農業(アグロ・インダストリー)パラダイムのもと農業は生産主義を貫く(市川, 2017)。

1975年、景観保全推進のための条件不利地域助成策が成立した。環境保全型農業であることが補助金を受けられる条件であり、たとえ生産量が下がっても高く売れ、環境保全もできる農産物を増やすことを目指す。環境保全型農業によって農家は地域の食文化の発展、品質へのこだわり、トレーサビリティ、アグリツーリズモ経営を実践し、消費者は農村で安全な食の魅力と美しい農業景観の魅力に触れることができるようになった(宗田, 2012)。1980年代、農業収入の低下と農業ビジネスの不振からポスト生産主義が登場し(豊, 2016)、農業を生産から農村アメニティやサービス、景観、文化的要素に移行させていく。

1985年、農法の転換によって集約的農業から環境保全型農業に移行させたことで、農村観光による農家所得が補助金の対象となった。

1986年、関税及び貿易に関する一般協定(General Agreement on Tariffs and Trade、以下「GATT」と記す)の多角的貿易自由化交渉(ウルグアイ・ラウンド)がスタートした。妥結前の1991年、欧州共同体(European Communities、以下「EC」と記す)はマクシャリー提案の中で農民は食料生産者以外の何者かであり環境および景観の維持、農村地域の発展のために必要と明記した(豊, 2016)。

1988年、農地転換政策(セットアサイド)がスタートした。環境保護の目的で農地の一部を耕作しないで脇に置く、すなわちset asideする。農地は資源であり保全するものという思想であり、農村環境は観光目的になった(宗田, 2012)。EC委員会は『農村社会の将来』を発表し、農村開発政策のみならず農村社会の発展を進めていくことを表明し、農村と開発という概念をそれぞれ再定義した。「農村」はこれまでは農業と同義であったが、1980年代以降は農業活動以外の空間も含むようになる。背景として、GDPに占める農業生産は1970年の5.4%から1985年の3.4%と低下し、農業就業人口も1965年から1985年で半減し、農村の人口減少と共に各種サービスが低下していったこと、その一方で、都市と農村の相互依存関係が進行したことで農業以外の経済活動が活発化し農村がレクリエーション、レジャー、ツーリズムの場として価値を向上させていったことが挙げられる。「開発」概念も再定義された。これまでは経済目的の達成を意味し、結果として環境破壊や地域コミュニティの衰退を生んだが、『農村社会の将来』では開発を農村地域のバランスの修復と定義する(Commission of the European Communities, 1988)。

1993年、共通農業政策(Common Agriculture Policy、以下「CAP」と記す)の持続的農村発展に関する法律において「農業の多面的機能」という言葉が初出し(豊, 2016)、農業は経済価値から公共財としての環境価値と生態系価値への転換がはかられる(井上, 1999)。農業の多面的機能が注目されたのは1992年に経済協力開発機構(OECD)の農業大臣会議においてであり(豊, 2016)、1993年にECのCAPの持続的農村発展に関する法律で定義された(市川, 20171。農民の役割は生産のみならず農村開発の文脈で環境を保護することであり(礒野, 2012)、農業の機能は土地放棄の防止と農村景観の維持である(市川, 2017木村, 2019)。

1997年、EU政策全体のあり方を示すアジェンダ2000において、農村開発は農業、環境、生活の質、経済、社会の連帯に不可欠であると記される。2003年のCAP改革で農産物生産と補助金を分離するデカップリング(decoupling)が採用されたことで、農業の多面的機能がいっそう注目されるようになる。農業は「農業生産」から「農村の消費」に移り、農村ビジネスの多就業化と営農行為の生態系保護機能が認められるようになった。条件不利地域(Less Favored Area: LFA)などの周縁農村部の環境維持機能が評価され、農村ツーリズムは土地放棄を防ぎ農村景観を維持する機能に対して補助金を受けられる(井上, 1999)。

2000年以降、EUは生産主義的拡大志向を保ちつつ農業の外部経済と非農業的側面を追求する姿勢を貫く。そのためには、適切な資源利用を行いテリトーリオの価値を保護しなければならない。テリトーリオは「地形・地質、水や緑の生態系などの自然条件の上に、人々の手になる農業の営みやそれが結実した景観があり、町や村の居住地に加え、農場、修道院が点在する。その総体(陣内, 2019, p.13)であり「都市、集落、田園を1つの共通の社会経済的・文化的アイデンティティをもつ地域(陣内他, 2019, p.2)」と定義される。農村発展は社会的観点を持ち農業と農村を公共財としてとらえテリトーリオ経済を発展させることで実現する。CAP改革によるこのような地理的領域化と農業の多機能性評価は、再国家主義化(renationalisation)や再地域主義化(regionalisation)と呼ぶことができる(Wilson, 2007市川, 2017)。

1.2.  共通農業政策(CAP)のLEADER事業

現在のCAPには2つの柱がある。第1の柱は市場・価格政策であり、第2の柱は農村開発である(豊, 2016)。第2の柱、農村開発政策には4つの機軸がある。1)競争力改善、2)環境価値改善、3)農村地域の生活の質と農村経済の多様化、およびそれらを実現する方法論としての4)LEADER事業であるが(国土交通省国土政策局, 2013)、これは1988年にEC委員会(Commission of the European Communities, 1988)が農村政策の考え方において、農村地域が果たす多面的機能の意義を強調したときから一貫している。

LEADER事業はLiaison Entre Actions de Developpement de l’Economie Ruraleの略で日本語では「農村地域における経済復興活動の相互連携(国土交通省国土政策局, 2012, p.1)」、「農村経済開発における活動の連携(梶田, 2012, p.590)」、「農村経済発展の行動連携(市田, 2014, p.7)」と訳されている。3つの機軸を実現する方法論であり(EUR-Lex, N.A.豊, 2016)、文化経済アプローチという方法論による農村開発のために、コムーネではなくテリトーリオの範域での価値創出を試みる(梶田, 2015)。文化経済アプローチは経済統制を局地化(localize)させ地域文化を再価値化(revalorize)する。いいかえると、文化を共有するテリトーリオの範域で経済を再編成することで農村開発につなげる方法である(Ray, 2000梶田, 2015)。

LEADER事業の背景として、1986年から1994年のGATTの多角的貿易自由化交渉(ウルグアイ・ラウンド)がある。EUはCAPの価格支持制度と輸出促進補助金により農産物の純輸出国になり、小麦をめぐってアメリカと激しい輸出競争を展開した。農家に「もっと生産したい」と思わせないために直接支払い(デカップリング)制度を導入したが、同時に非効率な農業活動で生産されるGI産品が農家の所得を増やし地域経済を活性化する効果があることに着目した(市川, 2017木村, 2019)。

農村開発には3つの要件がある。第1はボトムアップ方式である。農村開発には各種セクター間の連携が必須で、影響を受ける関連主体が積極的に参画しなければ成功しない。したがって農村開発プログラムの実行組織はローカルな現場に置かれるべきである。第2はパートナーシップである。主体間の対話とパートナーシップが重要である。第3はエージェントの存在である(Commission of the European Communities, 1988井上, 1999)。

2.  テリトーリオ・アプローチ

EUはCAPのLEADER事業が補助対象を農村に限定したことで農村が都市から切り離されてしまった点を反省し、都市からあるいは都市への通勤やサービスを享受できるようにするためには都市と農村の連携と協力を促す必要性に気づき(市田, 2014)、目標を単なる農村振興から「都市と農村を含むテリトーリオ振興」に移行させた。そこで注目されるようになったのが農業テリトーリオ(agro-territorial)計画アプローチ(以下、「テリトーリオ・アプローチ」と記す)である。

従来の農業開発と異なり、テリトーリオ・アプローチは、都市や町とその周辺の農村部を結び付けることに重点を置いたアプローチである。国連食糧農業機関(以下、「FAO」と記す)はテリトーリオ・アプローチが食料システムを強化し持続可能で包摂的な農村振興を促進できると主張する(FAO, 2017)。

テリトーリオ・アプローチは、ボトムアップ哲学を持ち、計画段階から利害関係者が積極的に参加する。農村変革のかなめである農産物・食品システムを強化するためにテリトーリオの実態に即したアプローチをとり、農産物・食品分野の経済的側面と、その根幹としての空間的、社会的、文化的次元を融合させようとする(FAO, 2017)。EUはCAPにおいて第1の柱である1)市場原理のもとにある効率主義、それとは対照的な第2の柱である2)地域主義と3)環境主義の3原理のバランスを取ってきたが(河合, 2003)、テリトーリオ・アプローチによって地域のさらなる活性化を目指す。

テリトーリオ・アプローチには4つの特徴がある。第1にマルチレベルのガバナンス構造による調整やネットワーキングである。ネットワーキングにはEU加盟国、州、県、コムーネなど異なるレベル間の垂直関係、およびプライベートアクターやテリトーリオの利害関係者の水平関係がある。第2に統合型投資である。第3にテリトーリオの既存資源である自然資源と社会文化資源を活用した内発的開発による公共財とサービスの提供である。第4に特定の場所とテリトーリオ規模に焦点を絞る点である。これらの特徴は図1のとおり表される(Mantino, 2011)。

図1 農村開発政策へのテリトーリオ・アプローチの4つの特徴と構成要素

(出所)Mantino (2011), p.20

2.1  トスカーナ州のテリトーリオ協定と支援

トスカーナ州南部のグロッセート県は面積4,503平方キロメートル、人口は220,785人である(2019年時点)。28のコムーネと3つの山岳部共同体(Comunita Montana)で形成される。

1999年、グロッセート県はテリトーリオ協定(Territorial Pact)を施行した。目的はティレニア海に面したトスカーナ州南西部の沿岸地域マレンマのテリトーリオ特性に焦点を当て、1)技術的および科学的イノベーションの促進、2)中小企業のためのシステムとネットワークの強化、3)雇用機会の増加、4)インフラ整備への投資、5)州外の市場機会の増加である。60の民間プロジェクトと21の公共プロジェクトの計81プロジェクトに対して240百万ユーロ(2億8800万円)の予算が計上された。

イタリアの農村は多様であることから、多様性を踏まえボトムアップ方式で実施できるLEADER事業が適している(国土交通省国土政策局, 2013)。グロッセート県は農村開発プログラム(Programma di Sviluppo Rulale、英語でRural Development Program、以下「RDP」と記す)とLEADER事業の農村計画に関連する補助金を使って5年間で5,000万ユーロ(約60億円)の資金を調達しテリトーリオ・アプローチを実践した。グロッセート農村開発のためのテリトーリオ協定は、農村地域のマルチ・セクター戦略を採用する。マルチ・セクター戦略とはセクターの枠を超えて多様なアクターが関与し協力体制を形成する戦略である。

トスカーナ州は各地域が有し蓄積している資源に対応させた生産物の品質向上、農産物の生産、テリトーリオ内の農業の付加価値創出を目指すが、グロッセート県は15年間、補助金を受け継続的に取組むことによって複数のプログラムを統合することができた。たとえば、2000年から2006年に、RDPを利用して2つの活動を同時に追求した。第1は農業・食品セクターの大手企業や協同組合が共同で農産物の加工とマーケティングを実施するという一般的な活動である。第2はLEADER事業による地方への権限移譲計画で、より小規模な伝統的農産物と農村地域の多様化への取組みである。

農村開発のための補助金は農業の付加価値創出、観光収入増加、地域環境保全に効果を発揮できる。グロッセート県は経済の発展と自然資源の保護との間でさまざまな農村開発対策を改善してきたことから、EUの補助金プロジェクトと地域ニーズを合致させ成果を生んだ事例として挙げられる(Mantino, 2011)。

2000年から2006年にかけて用いられた補助金は1)農村開発政策(RDP)、2)農業協定(Agricultural Pact)、3)農産品・食品産業のためのプログラム(Programe Contract for agro-food industry)、4)LEADER事業の農村政策(LEADER Local Plan)、5)テリトーリオ協定(General Territorial Pact)、6)統合型農村開発プロジェクト(Local Integrated Development Project:イタリア語のProgetti Integrati di Sviluppo Localeを略して「PISL」)である。LEADER事業は政策手段間の分断を解消し利用可能な補助金を効率的かつ相乗的に使用するが、助成対象を拡張することで典型的な農業政策のみならず非農業部門の発展も目標に含める。

エコツーリズムや再生可能エネルギーの生産など地域資源の評価のためには上記の4つのRDP、農業協定、プログラム契約、LEADER事業よりもさらに広く関連性の高い財源と政策手段が必要であった。そこでグロッセート県の農村地域はトスカーナ州独自の5)テリトーリオ協定と6)PISLの補助金を受けた。これまでは、地域のインフラとサービス、生産と加工の構造を強化するためにセクター別の補助金が用いられてきたが、テリトーリオ協定とPISLは地域をコムーネより広いテリトーリオでとらえ農村を改善するための活動資金として利用できる。グロッセート県は農業セクターと非農業セクターの両方のプログラムのためにトスカーナ州独自の補助金を活用したのである

助成対象は、1)景観と環境資源、2)高品質な地元産品、3)文化的アイデンティティ、4)農村の多様な活動である(Mantino, 2011)。実際に生み出した効果は、1)自然資源保護の拡大、2)エコツーリズム市場の創造、3)農村の付加価値の増加、4)競争的輸出の増加、5)ローカル・アイデンティティの強化、6)観光産業の強化である。これらは図2のとおり表わされる。

図2 トスカーナ州の6つの補助金、対象、および成果

(出所)Mantino 2011, p.29 & 30を元に筆者作成

EUは1990年代初めにCAPによる農業中心の農村政策がいきづまり、農村が持つ多様なポテンシャルを最大化するための総合的プログラムに移行させた。農業活動が経済、社会、環境のバランスを取り戻しテリトーリオを活性化させるためには、第1に生産者によるボトムアップ型のテリトーリオの内発的発展(endogenous development)のための活動、第2にテリトーリオ・アプローチによる経済的支援、第3に都市と農村の協力によるイノベーション創出、第4に既存資源を活用したテリトーリオの価値の回復が必要である(Dire e Fare, N.ACommission of the European Communities, 1988井上, 1999;国土交通省国土政策局, 2013;梶田, 2012市田, 2014)。このテリトーリオ活性化プロセスは図3のとおり表わされる。

図3 テリトーリオ活性化プロセス

(出所)既存研究を元に筆者作成

3.  方法論

3.1.  調査概要

(1)  調査地と調査対象

調査地はイタリアのトスカーナ州シエーナ県(Provincia di Siena)とグロッセート県(Provincia di Grosseto)で、実施期間は2019年10月21日から10月25日の5日間である。

シエーナ県は36のコムーネ(基礎自治体)で構成される。調査で訪問したコムーネはカスティリオーネ・ドルチャ(Castiglione d’Orcia)である。このコムーネは、オルチャ渓谷(Val d’Orcia)を構成する5つコムーネ(カスティリオーネ・ドルチャ、モンタルチーノ(Montalcino)、ピエンツァ(Pienza)、ラディコーファニ(Radicofani)、サン・キリコ・ドルチャ(San Quirico d’Orcia)の1つである。

シエーナ県には5つのコムーネで構成されるオルチャ渓谷アミアータコムーネ連合体(Unione dei Comuni Amiata Val d’Orcia)がある。構成するコムーネは1)カスティリオーネ・ドルチャ、2)ラディコーファニ、3)サン・キリコ・ドルチャ、4)アッバディア・サン・サルヴァトーレ(Abbadia San Salvatore)、5)ピアンカスタンナイオ(Piancastagnaio)である。世界遺産に登録されたオルチャ渓谷を構成するコムーネは上記1)カスティリオーネ・ドルチャ、2)ラディコーファニ、3)サン・キリコ・ドルチャに加え、アミアータ西麓山岳部共同体には入らないモンタルチーノ、ピエンツァである。本研究ではオルチャ渓谷とは異なるテリトーリオを持つ4)アッバディア・サン・サルヴァトーレと5)ピアンカスタンナイオをアミアータ・テリトーリオとみなし研究対象とする。

グロッセート県アミアータ西麓地域は豊かでユニークな自然を有するテリトーリオである。最たる象徴としてのアミアータ山に加え、ラッブロ山(Monte Labbro)がある。ラッブロ山はグロッセート県アミアータ西麓山岳部共同体に属する3つのコムーネ、ロッカルベンニャ、サンタ・フィオーラ、アルチドッソの境界上にある標高1,190メートルの山である。アミアータ山の南西斜面に位置する。

グロッセート県は28のコムーネで構成され、そのうちアミアータ西麓山岳部共同体(Unione Comuni Motani Amiata Grossetana)に属するコムーネは7つある。1)セッジャーノ(Seggiano)、2)カステル・デル・ピアーノ(Castel del Piano)、3)アルチドッソ(Arcidosso)、4)サンタ・フィオーラ(Santa Fiora)、5)ロッカルベンニャ(Roccalbegna)、6)センプロニアーノ(Semproniano)、7)カステル・アッザーラ(Castel l’Azzara)である。

グロッセート県の地理的特徴は、西の120キロメートル以上も続く海岸、丘と山に囲まれたマレンマの中央平野、東の山岳地帯のアミアータ山である(Landi & Calzolai, 2015)。人口は主に西のティレニア海沿岸に集中し、人口密度は低く老齢指数が高い。

本調査で訪問したグロッセート県のコムーネは山岳部共同体の1)セッジャーノ、2)カステル・デル・ピアーノ、3)アルチドッソ、4)サンタ・フィオーラ、および南部のマンチャーノ(Manciano)、サトゥルニア(Saturnia)、ピティリアーノ(Pitigliano)である。トスカーナ州のシエーナ県とグロッセート県の地図、および調査対象のアミアータ・テリトーリオは図4のとおりである。

図4 トスカーナ州のアミアータ・テリトーリオ(丸内)

(丸内はアミアータ山を挟んだグロッセート県(西側)とシエーナ県(東側)のコムーネ)

(出所)Provincia di Grosseto2

PDOは原産地呼称保護で、PGIは地理的表示保護で産地の原産地を表す名称である(木村, 2021)。2019年10月時点でトスカーナ州には31のPDO/PGI産品があるが、本調査対象のPDO/PGI産品は、1)セッジャーノ・オリーブオイルPDO(Olio Seggiano PDO:油脂)、2)アミアータ山栗PGI(Castagna del Monte Amiata PGI:栗)、3)チンタ・セネーゼ(Cinta Senese PDO:豚肉)、4)ペコリーノ・トスカーノ(Pecorino Toscano PDO:チーズ)、および5)中部イタリア仔羊(Agnello del Centro Italia PGI:羊肉)である。

アミアータ西南麓の在来品種の動植物も調査対象とした。具体的には、植物はサンタ・フィオーレのセルヴァの玉葱(Cipolla della Selva di Santa Fiora:野菜)、動物はアミアータ・ロバ(Asino dell’Amiata)、マレンマ牛(Maremmana)、アミアータ羊(Pecora Amiatina)である。

宿泊地は以下の3つの条件、1)調査対象産品に関わる人が経営している、2)アグリツーリズモあるはそれに準ずる施設で食事に地元産品が提供される、および3)滞在中に生産物に関するインタビューをさせてもらえるという条件のすべてを満たす場所が選ばれた。10月21日と22日はセッジャーノ・オリーブオイルPDOの品質保護協会会長ルチアーノ・ジリオッティ氏が経営するCasa Vacanzaと呼ばれるキッチン付きアパート型宿泊施設La Casina di Giannettoに宿泊した3。10月23日と24日は天然温泉で観光地化されているサトゥルニア地区のアグリツーリズモAgritourism Poggio Mario(住所:Strada de le Peschiere, 30, 58014 Saturnia GR)に宿泊した。中央イタリア仔羊PGIを生産する羊飼いエンリコ・ディオニージ氏の娘クラウディア・ディオニージ氏が経営している。

(2)  調査設計

トスカーナ州庁のPDO/PGI担当行政官アンジェラ・クレッシェンツィ氏(Angela Crescenzi)とフィレンツェ大学経済学科准教授アンドレア・マレスコッティ氏(Andrea Marescotti)によって調査対象者にインタビューのアポイントメントが取られ、調査スケジュールがコーディネイトされた。大型バンをレンタカーし、陣内秀信、須田文明、木村の3名、クレッシェンツィ氏、マレスコッティ氏、および通訳アシスタントとしてフランチェスカ・マレスコッティ氏(Francesca Marescotti)の6名で調査を実施した。調査対象者は表1のとおりである。クレッツェンツィ氏とマレスコッティ氏には適宜質問し、収集したデータの補完に努めた。

表1 インフォーマント・リスト
氏名 所属 役職 実施日
1 Gennaro Giliberti トスカーナ州庁・PDO/PGI課 課長 2019年10月21日
2 Lucia Bruni トスカーナ州庁・アグリツーリズモ課 行政官 2019年10月21日
3 Marco Minucci トスカーナ州庁・地域景観 行政官 2019年10月21日
4 Enrico Rossi トスカーナ州庁 州知事 2019年10月21日
5 Claudio Galletti Castiglione Val d’Orcia 市長 2019年10月21日
6 Paolo Caselli Olio Seggiano PDO vice-president 2019年10月21日
7 Diego Ceccarini オリーブオイル博物館 館長 2019年10月22日
8 Marilena Demontis オリーブオイル博物館 アシスタント 2019年10月22日
9 Luciano Gigliotti Consorzio Olio Seggiano PDO品質保護協会 会長 2019年10月22日
10 Giulio Morganti Foundation Le radici di Seggiano president 2019年10月22日
11 Daniele Rossi Comune di Seggiano 市長 2019年10月22日
12 Roseo Scheggi Association of Olio Seggiano PDO Pro-loco 2019年10月22日
13 Lorenzo Fazzi Associazione per la valorizzazione della Castagna del Monte Amiata PGI President 2019年10月23日
14 Alberto Balocchi Unione comuni montani Amiata Grosseto アミアータ村行政官
Mariannaの夫
2019年10月23日
15 Giovanni Alessandri GenomAmiata Associazione per la salvaguardia della biodiversità Amiatina アミアータ生物多様性保護協会・責任者 2019年10月23日
16 Marco Franceschelli Cinta Senese PDO 畜産家(主に養豚) 2019年10月23日
17 Iva Savelli Agriturismo Casa Dondolini
Località Case Dondolini, 58037 Selva GR
玉葱生産者
Mariannaの母
2019年10月23日
18 Marianna Dondolini Agriturismo Casa Dondolini オーナー 2019年10月23日
19 Mirco Fazzi Amiata Chestnut PGI 栗生産者 2019年10月23日
20 Lorenzo Fazzi Associazione per la Valorizzazione della Castagna del Monte Amiata PGI アミアータ山栗PGI登録団体・組合長 2019年10月23日
21 Carlo Santarelli Caseificio Manciano Director(所長) 2019年10月24日
22 Andrea Severini Pecorino Toscano PDO 羊の酪農家 2019年10月24日
23 Andrea Righini Consorzio Pecorino Toscano PDO Director(所長) 2019年10月24日
24 Virgilio Manini Consorzio Agnello del Centro Italia PGI 品質保護協会会長 2019年10月24日
25 Enrico Dionisi Agnello del Centro Italia PGI 羊の畜産家 2019年10月24日
26 Claudia Dionisi Agritourism Poggio Mario オーナー 2019年10月24日

(出所)筆者作成。

調査に用いられた言語は主に英語であるが、イタリア語のみを話す調査対象者にはイタリア語で行われ、クレッシェンツィ氏とマレスコッティ氏によって英語に通訳されたり、イタリア語が堪能な共同研究者の陣内秀信によって日本語に通訳されたりした。

(3)  データ収集と文書化

収集したデータは外部業者を使って文書化された。分量は日本語と英語の混合音声325分、英語音声403分、および日本語音声5分である。調査後、調査者らは2019年11月12日に総括のミーティングを行った。議論の音声420分も文書化され分析データとして用いられた。2019年12月4日、追加データを収集するために質問を送付し、2020年1月10日から12日にかけクレッシェンツィ氏より回答の一部の説明を口頭で受けた。2020年6月5日にクレッツェンツィ氏、マレスコッティ氏と筆者らはZOOMを使いオンラインで質問をし回答を得た。

主な補足的データとして、1)イタリア農業調査研究情報(ISMEA:Institut Servizio per Mercato Agricolo)のサイト内にあるPDO/PGIの生産量等のデータベースQualido4、2)EUの原産地呼称および地理的表示産品のデータベースQUALIGEO、3)EUのPDO/PGIの明細書等データベースDOOR、および4)ISTAT(統計)5を用いた。各コムーネの人口比率データはComuni Italianiサイトを参照した6

4.  記述

アミアータ山は標高1,738mでトスカーナを象徴する山である。30万年前から噴火を始め、数枚の厚い溶岩流と東北東から西南西に並ぶ溶岩ドーム群を噴出したが、ここ18万年間は噴火していない。物理的に象徴するだけではなく、テリトーリオの住民にとって精神面でもシンボリックである。

アミアータ山はトスカーナ州の2つの県の境界である。東側はシエーナ県、西側はグロッセート県である。シエーナのオルチャ渓谷モンタルチーノのカステルヌオーヴォ・デッラバーテ(Castelnuovo dell’Abate)には元ベネディクト会修道院のサンタンティモ修道院(Abbey of Sant’Antimo)がある。8世紀に巡礼ルートだったフランチジェナ街道(Via Francigena)はここを通る7。他方、アミアータ西麓テリトーリオはアミアータ山の反対側にあり街道から外れていた。

図5はフランチジェナ街道のトスカーナ州を抜き出した地図である。アミアータ・テリトーリオは街道の35番と36番の西側にあり1つの景観単位(Unita di Paesaggio)として示されている。アミアータ・テリトーリオに属する一大鉱山があったアッバディア・サン・サルヴァトーレは街道が通っていたラディコーファニ(番号35)から14キロ西である。鉱山があったピアンカスタンナイオは街道が通っていたポンテ・ア・リゴ(Ponte A Rigo, 番号36)からは11キロ西、カステル・アッザッラはポンテ・ア・リゴの22キロ西であることから巡礼者がアミアータ山の集落にも立ち寄ったと考えられている。集落はボルゴと呼ばれ、紀元1000年ごろはフランチジェナ街道の亜流として巡礼者を迎え入れそれなりに活気があった。12世紀から13世紀にかけて東側のラディコーファニ地域が軍事拠点ならびに宿場町として急速に発展したことによってその大部分が放棄され「忘れ去られた景観(Paesaggi Sepolti)」と呼ばれるようになった(西村, 2002)。

図5 フランチジェナ街道(トスカーナ州を抜粋)

(出所)フランチジェナ街道地図 http://www.francigenaintoscana.org/cartografia_della_francigena.php8、アミアータは筆者加筆

4.1.  鉱山

「忘れ去られた景観」としてのアミアータ・テリトーリオでは人々の貧しい生活が久しく続いたが、19世紀終盤、水銀鉱山の開発で再度栄えた。

イタリアは世界最大の水銀生産国の1つであった。20世紀初頭には世界第2位の水銀生産量を誇るまで栄えた。アミアータ山麓の鉱山の歴史は石器時代に始まったといわれ、エトルリア人も辰砂から水銀をとっていた。東西8キロ、南北35キロに水銀の鉱床群がある。鉱山産業の発展と共に都市の開発が進み、人々の生活も豊かになった(山崎他, 2002)。

最盛期には大規模鉱山が3つと小規模な鉱山が多数操業していたが1981年にすべて閉山し水銀生産地としての幕を下ろす。期を同じくして、EUが共通農業政策のLEADER事業によってテリトーリオ密着型で農村活性化を目指すという指針を示した。日本がテリトーリオに由来しないいわゆる箱モノを造ったりリゾート開発したりといった外発的発展によって農村を活性化しようしてことごとく失敗に終わったのとは異なり(依光, 1987)、イタリアは鉱山博物館を作り産業遺産をベースにエコミュージアムを展開することで新たな文化的価値を創出し観光産業につなげた。テリトーリオの既存資源を再利用し価値を創りだすという点で、内発的発展による農村活性化といえよう(梶田, 2012)。

産業遺産はテリトーリオの文化的景観と手つかずの自然的景観に取り囲まれているものであるが(根本他, 2007)、アミアータでも水銀産業に関連する文化的景観と自然的景観によって産業遺産が構成されテリトーリオの魅力を生み出している。具体的には、鉱山博物館を作り産業遺産をベースにエコミュージアムを展開することで新たな文化的価値を創出し観光につなげる。鉱道とインフラシステムを鉱山産業考古学公園にした。

1990年代、完全に放棄されていたシエーレ鉱山跡地(図6の7番)に作られたピジェッレート自然保護区の面積は862ヘクタールで、現在は観光センター、環境教育ラボ、調和と静寂の中で時間を過ごしたいビジターのための施設がある9。鉱山跡公園の展望台からは手前にオリーブ畑とブドウ畑が点在する丘陵地帯、奥にブナと栗の森の山岳地帯を一望でき、公園内ではテリトーリオの代表的な在来動植物を観察できる。

図6 アミアータの水銀鉱山とPDO/PGIの生産範囲

(出所)Rimondi, et als.(2015)p.325、アミアータ山栗PGI協会、セッジャーノオリーブオイルPDO品質保護協会資料を元に筆者作成

トスカーナ州はEUの政令第1350/13に従って2015年5月26日に政令第2359号で、統合型農業と食品のサプライチェーン・プロジェクト(Progetti Integrati di Filiera、以下「PIF」と記す)を承認する。PIFは、サプライチェーンの関連主体によって実行されるプロジェクトで4つの目的がある。1)特定のサプライチェーンの問題解決、2)農産物の一次生産、加工、マーケティングの分野への投資、3)公衆衛生、生産品質、動植物の健康、動物福祉、職場での安全などの課題の統合的管理、および4)特定のテリトーリオにあるサプライチェーンで活動する複数企業の競争力向上である。

鉱山を失ったアミアータはPDOとPGIをはじめとする非効率な農業活動とその生産物を活用しながらテリトーリオの活性化を図る。3つの事例を取り上げ、1)生産者のボトムアップ型内発的発展、2)テリトーリオ・アプローチによる経済的支援、3)都市と農村のネットワークが生むイノベーション、4)既存資源を用いた価値創出によるテリトーリオ活性化プロセスを概観しよう。

水銀鉱山跡にPDO/PGI産品の生産範囲を重ねてみた。図6のとおりである。点線がアミアータ山栗PGIの生産地、左上の薄い線がセッジャーノ・オリーブオイルPDOの生産地でである。数字は水銀鉱山である。点線のアミアータ山栗PGIの生産地は鉱山を内包していることから、鉱山生活に密接に結び付いた産品であったことが分かる。一方のセッジャーノ・オリーブオイルPDOはアミアータの西麓でのみ生産され、鉱山との結び付きは強くなかったといえよう。

4.2.  事例1:アミアータ山栗PGI

図6のとおり、アミアータ山栗PGIは水銀鉱山と深く結びついている。栗ははるか昔からアミアータ西麓テリトーリオの人々の生存の源であり、木材の販売によって経済基盤を維持させてきたとおり人々の生命を守ってきた。栗を果物として食べることは貴族やお金持ちがすることであって、貧しい人々は栗を粉にして唯一の栄養源として食していた。収穫した栗をセッカトイオと呼ばれる乾燥小屋の中で40日間火を絶やさず乾燥させ、袋に入れて脱穀し、粉にして保存食として利用する。

アミアータ・テリトーリオは生きるための食物であった栗を高付加価値産品へと転換させ、持続可能性の高い文化的価値を創出している。グローバル化が進み安価な栗の輸入によって、地域を支えてきた産品としての栗の価値が下がった。1950年になると栗は小麦にとって代わったが(元木, 2015)、EUではCAPの第2の柱、農村開発政策が追い風となり、地域文化を取り戻そうとする機運が生まれた。

アミアータ・テリトーリオではPGI以外も含む栗の生産量全体はグロッセート県の生産面積1,900ヘクタール(果実としての栗)、2,200ヘクタール(木)である。シエーナ県の生産面積800ヘクタール(果実としての栗)、16,000ヘクタール(木)である10。その中で、アミアータ山栗PGIの生産者は96軒、面積は246.5ヘクタールで(QUALIVITA Foundation, 2017)、PGI登録日は2000年7月9日である11

(1)  生産者のボトムアップ型内発的発展

1972年生まれのミルコ・ファッツィ氏は農業起業家(Innovater Agriculture Professionale: IAP)で、アミアータ山栗PGI協会の組合員の栗農家である。自宅はグロッセート県のカステル・デル・ピアーノ村の中にあり、職住分離している。ミルコ氏の栽培面積は約18ヘクタール、栽培内訳は栗が78%(14ヘクタール)、雑木林が20%(3.5ヘクタール)、オリーブ畑は約3%(0.5ヘクタール)である。ファッツィ氏は剪定技術の資格を有し自身の栽培管理に活かしているだけではなく他の栗農家も助けている。

2015年にEUの補助金を受け、「栗の成長の革新(Open Riccio、栗のイガを開くという意味)」という名称のプロジェクトを立ち上げた。森林保護に加え栗林の地表回復のために投資する。生物多様化活動として、森林副産物の強化を目的とした新しい生産を志向し、栗の収穫とその加工に加え、栗のバイオマス(生物資源)から木材チップを生産することに関心を持つ。

(2)  行政のテリトーリオ・アプローチによる支援

アミアータ山栗PGI協会を中心とする関連主体はトスカーナ州のPIFの補助金を受け、栗栽培強化プロジェクト(VAlorizzazione della CAStanicoltura TOscana plus:略してVA.CAS.TO)をスタートさせた。2007年から2013年はトスカーナ州のRDPの補助金も受けた。

2019年、栗の成長のための高度なネットワークとトスカーナの革新的な戦略の活性化プロジェクト(FORECAST: Forma Organizzata di Rete Evoluta della Castanicoltura, Attivando Strategie Innovation in Toscana)が発足した。プロジェクト期間は2019年2月から2021年8月までの32か月で、補助金は323,528ユーロ(3800万円)である。

FORECASTプロジェクトの目的は栗の植物検疫上の問題の解決である。気候変動に起因するといわれているが、栗は弱くなるとカビや棘皮動物のウミユリなどを発生させる。本プロジェクトによってサプライチェーンの技術的課題と栗加工に対する解決を提供し、健全で高品質な産品を保証できる。屋外であれ貯蔵であれ、栗の腐敗の発生を減少させること、および包装システムに欠陥のある果実選別システムの精度と衛生状態を向上させることに取り組む。

(3)  都市と農村のネットワークが生むイノベーション

PIFには垂直と水平の協調関係が欠かせないが、アミアータ山栗PGI協会がプロジェクトのゲートキーパーであり活動の中心主体である。協会は非営利団体で、設立目的は産品の生産の強化と保護およびテリトーリオの保護であり、サプライチェーン過程の農村にいる主体と都市にいる農業従事者、イノベーター、マーケティングの起業家といった主体と共にアミアータ山栗が抱える課題を解決する。

関連主体のネットワークは栗の用途開発によって付加価値を創出する。ビールを開発したり12、産業廃棄物である栗の皮とイガからポリフェノールを抽出し化粧品のフェイスクリームを開発したりしている13

これらの活動の組み合わせはサプライチェーンのすべてのプレーヤーに好影響を与える。生産者にとっては選別工場での欠陥栗の発生率低下、包装前の産品の正しい選別、包装後の汚染リスク低下が生産コストの低減につながるので失った市場シェアを回復させることができる。流通業者にとっては安定的生産が保証され、消費者にとっては品質管理されたより健康的な産品を手に入れることができることから、テリトーリオの栗産業は生産性と収益性を高めるツールとなりえる。

シエーナ大学と共同で研究し、EUの補助金を受けて商業化とブランド化にも取り組む。たとえば、ドローンを使った樹木の健康状態検査、子供への味覚教育、品質改良による味の改善に取り組んでいる。2018年4月、イノベーションによって競争優位性を獲得した栗が成長していることが確認されている。

(4)  既存資源を用いたテリトーリオ価値の回復

景観

アミアータ西麓では栗の木立の下限は海抜約500メートル、上限は約1,000メートルである。プロジェクトでビジターを楽しませるために異なる特徴を持つ7つの遊歩道を整備した14。栗街道はアミアータ山グロッセート側テリトーリオの栗の植物気候帯を横断するようにして構成されている15

アミアータという言葉を聞くと人々はアミアータ山に植生する栗の木を想起するが、ビジターが栗街道に足を踏み入れればアミアータの人々の歴史をさかのぼることができる。栗を成長させる自然条件とその景観を生み出す人間活動という人的条件、すなわちアミアータ・テリトーリオの表象の体験的消費である。

郷土の食文化

トスカーナ州には栗の2つの名称がPGIに登録されているとおり高品質な栗の生産地であり昔から栗を使った料理で知られていたが(Machado et al., 2015)、アミアータ西南麓テリトーリオの経済活動にとって栗の木の栽培は非常に重要であった。その理由の1つは山に住む人々の重要な食料源だったからである。気候条件や地勢条件が悪い厳しい環境では小麦が栽培できなかったことから代わりに栗が栽培され人々の栄養を補っていた。たとえば、アミアータ南麓テリトーリオのアッバディア・サン・サルヴァトーレは1897年に水銀鉱山が設立されるまでは貧しく、農作物の収穫期以外は人々は炭焼きや日雇い労働者として働き、村の経済は森林と教会に依存していた。小麦、オリーブ、ブドウといった農産物の生産量は低く唯一そこにある栗を食した(山崎他, 2002)。

現代は、栗のブランド化を目指し栗ジャムにしたり、ゆでたりローストしたりした栗を甘いマスカットワイン、アイスクリーム、クリームにあわせて食するといった食べ方の提案をする。栗粉ケーキのカスタンニャッチョ(castagnaccio)、ネッチ(necci)、パンケーキ、ポレンタが典型的な地元の伝統的栗料理である。トルテッリ、タリオリーニ、ピーチ(pici)といった生パスタにも使われ、スープの風味づけやビールの原料にも使われ16、観光客を惹きつける料理として脚光を浴びている。

4.3.  事例2:セッジャーノ・オリーブオイルPDO

2つ目の事例は2011年にPDOに登録されたセッジャーノ・オリーブオイルである。主要な生産地のセッジャーノ村の面積は49.53平方メートル、人口はわずか950人(2019年時点)である。

アミアータ地域のオリーブ栽培は、土着品種であることと機械化が難しいことから非効率で高コストな農業活動が特徴である。非効率である理由は、オリーブの木の栽培は主に丘陵や山岳地帯で行われ、傾斜が大きく、零細農家によって栽培されているからである。多くのオリーブ畑は耕作放棄地となり、特に急斜面での生産は放棄された。丘陵地帯の放棄地はそれほど多くはないが、オリーブ栽培はワイン生産者や穀物農家にとって収入面では補完的であり、オリーブ専業農家は少ない。

セッジャーノ・オリーブオイルPDOの生産実績は次の通りである。生産者数は26経営体、生産量は年間2,745キロ(約3,000リットル)、栽培面積は81ヘクタールである(2011年実績)。

(1)  生産者のボトムアップ型内発的発展

1980年代、セッジャーノ・オリーブオイルPDOの生産者、すなわちオリーブ農家とオリーブオイル生産者たちは自分たちが生産するオイルのブランド化を望んでいた。しかし、EUにはまだPDO/PGI法がなかったので、法律ができた1990年代初頭にPDO登録申請プロジェクトをスタートさせた。EU法にしたがい申請したが、原産地呼称として登録しようとした名称Olivastra Seggianeseは彼らのオリーブ品種オリヴァストラ・セッジャネーゼ(Olivastra Seggianese)と同一であることからトスカーナ州に差し止められた。品種名はGI登録の拒否要件だからである。生産者たちは長い時間をかけ検討し、およそ10年後の2003年ごろに再申請した。当初の申請から17年、再申請から7年ほどかかり2011年12月にようやくPDOに登録された。オリヴァストラ・セッジャネーゼ種を85%以上使用することが明細書に定められている。

セッジャーノ・オリーブオイルPDO品質保護協会は2011年に創立し、2016年から若く活動的な生産者ルチアーノ・ジリオッティ(Luciano Gigliotti)氏を中心として革新を起こしている。協会長であるジリオッティ氏は伝統的なシステムを改善し、テリトーリオの強みを活かし、決して多いとはいえないサプライチェーンの関連主体が同じ目標に向かって活動することを目指している。現在は好循環が動き始め、小規模でまとまりのあるネットワークを形成できた。

ジリオッティ氏は村の資源であるオリーブ畑の景観を楽しめるように手作りで展望台を作った。写真1のとおりである。道路からせり出した展望台からアミアータ山のオリーブの黄金の盆地(Monte Amiata Oliveti Conca Oro)を眺望できる。生態系を取り込む景観であることからエコミュージアムといえよう。

写真1 オリーブオイル生産者が作った展望台とテリトーリオの景観

(出所)2019年10月22日筆者作成

(2)  行政のテリトーリオ・アプローチによる支援

2014年、セッジャーノ・オリーブオイルPDOはPIFの補助金を受け「AMIATA OLEOS(アミアータのオイル)」プロジェクトを立ち上げた。期間は2014年から2020年である17。目的は、セッジャーノ・オリーブオイルPDO、トスカーナ・オリーブオイルPGI、および有機オリーブオイルの生産をテリトーリオ近隣および大規模小売業者の両方の販路開拓を実現するためのサプライチェーンの構築である。補助金の総額は約470万ユーロ(5億6000万円)である18。取り組む課題は5つある。第1に耕作放棄されたオリーブ畑の回復、第2に生産性の向上、第3に在来品種の生産の支援、第4に市場ニーズへの対応、第5にテリトーリオ・マーケティング活動である。

補助金対象地域は、セッジャーノ・オリーブオイルPDOの生産地であるグロッセート県の8つのコムーネ、1)セッジャーノ、2)カステル・デル・ピアーノ、3)アルチドッソ、4)チニジャーノ、5)サンタ・フィオーラ、6)ロッカルベンニャ、7)センプロニアーノ、8)カステル・アザッラのアミアータ丘陵地と山岳オリーブ地域である。34人が直接的、31人が間接的にPIFプロジェクトに参加しているが、そのほとんどがサプライチェーンの関連主体である。

PIFプロジェクトは、9つの公的機関、8つのコムーネ、アミアータ西麓山岳部共同体のほか、多様な協会と農業関連の協会が関わり、大規模小売業者も直接参加者であり支援者である。原産地呼称(PDO)を管理するセッジャーノ・オリーブオイルPDO品質保護協会がプロジェクトのリーダーとして活動していることからボトムアップ型内発的発展を実践しているといえよう19

(3)  都市と農村のネットワークが生むイノベーション

オリーブ農家とオリーブオイル生産者を中心とする住民のモティベーションが高まったのは2005年のことである。フィレンツェ大学農学部教授で『植物は知性をもっている(Verde Brillante)』の著者ステファノ・マンクーゾ氏(Stefano Mancuso)の考えに触発され、ローマの研究所がオリーブ博物館および知恵の根(radici intelligenti)プロジェクトを発足させた。19世紀初めの古文書を紐解くと植物と土との関係について書かれており、その考えはマンクーゾ教授の考えと同じであったことから共同研究を申し出たのである。オリーブの根の部分を貯水槽の空中に吊るすチステルノーネ(cisternone)のアイデアである。これがオイル博物館創設のきっかけとなった。

セッジャーノの住民は知恵の根をイノベーティブな観光資源とみなしている20。村に水道のインフラが整うまで、セッジャーノに降る雨水を集め貴重な貯水槽(チステルナcisterna)だった建造物が再利用された。セッジャーノの家屋は石灰岩で造られているが、貯水槽の外部も頑丈な石灰岩でできている。石灰岩には防水機能があるが、保水を確実なものにするために内部は特別なレンガで覆った。オリーブの木を空中に吊るすためにエアロポニック技術が用いられた21

(4)  既存資源を用いたテリトーリオ価値の回復

景観

オイル博物館のために新しい施設を建設したわけではない。1800年代終わりから1950年頃まで利用され村のオリーブオイル産業をけん引していたチェッケリーニ旧搾油所(Antico Frantoio Ceccherini、住所:Piazza Umberto I, no.16, 58038 Seggiano)を活用した。

オリーブオイルを中心に展開している既存資源は修繕され博覧会場のようになっていることから分散する博物館、イタリア語でムゼオ・ディフーゾ(museo difuso)と呼ばれる。図7のとおりである。イタリアでは過疎化した町や村で空き家を活用し、受付、寝室、朝食の場、交流の場などを別の建物に設け、町を丸ごとホテルに見立て、住民のような気分で暮らしを体験してもらうという趣向で訪問者を町全体でもてなすことをアルベルゴ・ディフーゾ(分散するホテル)と呼ぶが(中橋他, 2018陣内, 2019)、考え方は同じである。

図7 セッジャーノ村の「分散する博物館」

(出所)地図はBenedetti(N.A.)p.7、写真は2019年10月23日筆者撮影

オイル博物館を筆頭に、村の観光資源として村の人々が祈祷するために訪れるサン・ロッコ礼拝所(Oratorio di San Rocco)には1490年のフレスコ画があり、知恵の根の上部であるオリーブの木があるチステルノーネ小広場からはセッジャーノ特有の景観を展望することができる22

郷土の食文化を楽しむエノガストロノミア

セッジャーノ・オリーブオイルPDOの組合員の中でも中心的存在はラ・セッジャネーゼ協同組合(La Seggianese, 住所:Via grossetana, 5, 58038 Seggiano)である。本協同組合は2002年に設立し、2019年現在10組合員がいる。組合長はルチアーノ・ジリオッティ氏の義姉マルタ・ジリオッティ氏(Marta Gigliotti)である。セッジャーノ・オリーブオイルPDO品質保護協会副会長のパオロ・カゼッリ(Paolo Caselli)氏はラ・セッジャネーゼ協同組合の副組合長を兼務している。

2019年、協同組合はセッジャーノ村旧市街(centro storico)からわずかに離れた場所に搾油所を建設した(住所:Via Grossetana 5)。建設と運営のための資金は公的資金40%と組合費60%でまかなわれた。

2019年10月22日、筆者らはラ・セッジャネーゼ組合の新しい搾油所に併設されたキッチン付き食堂に招待され、オリーブの実を搾る様子を眼下に見ながら、セッジャーノ・オリーブオイルPDOを使ったテリトーリオの伝統料理をふるまわれた。エノガストロノミアの1つの形であり、訪問者はそこにしかないユニークなテリトーリオを体験できる。エノガストロノミアとはワインを意味するエノと食文化を意味するガストロノミアを合わせた造語で(陣内, 2018)、エノガストロノミア・ツーリズムのテリトーリオ活性化に対する貢献が認められている(スタニーシャ, 2017)。

4.4.  事例3:アミアータ西麓の在来動植物復活プロジェクト

3つ目の事例はアミアータの生物多様性保全である。生物多様性は1993年12月29日に発効した生物多様性に関する条約(Convention on Biological Diversity: CBD)第2条において「陸上生態系、海洋その他の水界生態系、これらが複合した生態系その他生息又は生育の場のいかんを問わずすべての生物の間の変異性をいうものとし、種内の多様性、種間の多様性、および生態系の多様性を含む」と定義されている23

2011年5月、欧州委員会(EC)は今後10年間に向けたEUの新たな生物多様性戦略を公表し、2050年までに生態系や生物多様性が人間に提供する多様な自然の恵みすなわち生態系サービスを保全、評価、回復するというビジョンを掲げた。生物多様性の維持と回復のために持続可能な農林業政策を推進するというターゲットについては、CAPの政策で生物多様性を守るための施策を統合することを決めた。公共財的性格を持つ環境財、具体的には生物多様性保全に有効とされる永年放牧地や生態系保全に有効とされる休耕地を所有する農家への直接支払いを強化する(EU MAG, 201224。公共財は地域社会の共同所有と共同管理のもとにある資産が資源であり近年はコモンズと呼ばれる場合もある(生源寺, 2013)。

(1)  生産者のボトムアップ型内発的発展

アミアータ・テリトーリオには豊かな自然が残されている。例えば、667ヘクタールのラッブロ自然保護区(Riserva Naturale di Monte Labro)は北にアルチドッソのザンコナ急流(Zancona)、西にオナツィオ渓流(Fosso Onazio)、南西にアルベンニャ源流(Sorgente dell’Albenga)がある25

そこにはテリトーリオ特有の珍しい在来植物や在来動物が生息している。農家は在来品種の植物としてセルヴァの玉葱を栽培し、畜産家は在来品種の動物としてマレンマ牛、アミアータ・ロバ、アミアータ羊を繁殖・肥育する。玉葱についてはラ・セルヴァ文化協会が、サンタ・フィオーラ役場と在来動植物の遺伝子の保護を目的とする協会であるゲノム・アミアータ協会(GenomAmiata)のサポートを受け、聖三位修道院(Convento della Santissima Trinita alla Selva)の耕作放棄地を回復させ2016年には品質の高い在来玉葱の生産に成功した。この成功をきっかけにラ・セルヴァ文化協会は古代アミアータ玉葱の遺伝的特性と栄養学的機能特性を訴求している。

在来の動植物は品種改良した動植物とは異なり、たいへん非効率な農業活動を農家に強いるが生産者たちはそれを逆手にとって強みとユニークネスとして活かすことで、経済価値のみならず自然価値や人々の集団的アイデンティティを生み出している。

(2)  行政のテリトーリオ・アプローチによる支援

(i) 玉葱

セルヴァの玉葱は、ボトムアップ型の内発的発展にEUの支援が後からついてきた事例である。アミアータ・テリトーリオの在来品種の遺産の保護と強化に関する農業、家畜および林業の利益に関するトスカーナ州法64/2004にのっとり、テリトーリオ在来の野菜、畜産、樹木の保護と強化のためにアミアータ地域の遺伝資源の研究と保存を行う。在来品種の再発見と経済力強化プロジェクトは、市議会議員アルベルト・バロッキ氏が科学分野の視点から関心を持ったのみならず、テリトーリオの価値を認識する小規模生産者と消費者からも注目を集めている。セルヴァの玉葱が高品質で安全であるという特性はテリトーリオの特性によって生み出されることから、玉葱の評価はテリトーリオの価値を向上させる。

2016年、トスカーナ州の高品質農産物を支援するのための地域農業林業計画として州から4,000ユーロ(48万円)の補助金を受けサンタ・フィオーラ村からも1,000ユーロの助成を受けた。今後の目標はこれらを原資にアミアータの古代品種であるセルヴァの玉葱の生産を商業ベースに乗せマーケティング活動の実践である26

(ii) 動物

生物多様性は局在化しているものであり、テリトーリオの差別化要因となる資源であることから、在来の動植物を保護する戦略は重要である。絶滅危惧種のアミアータ在来動物を復活させるために、アルチドッソ村はゲノム・アミアータ協会と協力してアミアータ・ロバとアミアータ羊の乳の発売を目指し、民間の繁殖業者との相乗効果を生むモデル構築に取り組んでいる。絶滅危惧種または絶滅種の家畜の乳で作るチーズのプロジェクト「希少種のチーズ(Formaggi di Razza)」である。イタリアの農村開発プログラム(2014IT06RDRP010)の補助金251,635ユーロ(約3,140万円)を受けた。期間は2019年から2022年の36ヶ月である27

このプロジェクトは家畜の生物多様性の減少を阻止し、絶滅の危機にある在来種を支援することが目的で、製品開発とその市場導入のために2つの事業を立ち上げる。第1にチーズやヨーグルト等の乳製品開発と市場導入、および搾乳・保存・輸送・乳製品加工の手順化とパートナー企業との生産サイクルの標準化である。これまでは羊肉でしか出荷されていなかったところ在来種の用途を押し広げることができ、農家の収益性を向上させる重要かつ革新的な源泉となる。第2にアミアータ羊の羊毛を利用するための繊維製品の開発と市場導入である。肉、乳、羊毛という異なる産業セクターの併存でコストを分散できる。これらの事業に加え、絶滅危惧種のアミアータ羊とマレンマ牛を使ったトレッキング、教育農場、社会的農業を実施し農家を支援する28

(3)  都市と農村のネットワークが生むイノベーション

(i) 玉葱

玉葱のネットワークについては、AGRICIS社の農学者であり活動家であるジョヴァンニ・アレッサンドリ氏が調整役を務め、参加主体である木材と樹木と種の研究所Ivalsaの研究員クラウディオ・カンティーニ氏(Claudio Cantini)、シエーナ大学ライフサイエンス学科教授マルコ・ロミ氏(Marco Romi)とパトリツィア・サルスティ氏(Patrizia Salusti)が、単一または複数の玉葱品種を選別、栽培、保護、および強化する。種の保存に貢献する農家が活躍し玉葱栽培を復活させた。第1に他のトスカーナ在来品種と商業目的で品種改良された品種と区別するために、アミアータで見つかった玉葱の遺伝子調査から始まった。第2に栄養補助食品の特性と商業用玉葱品種の特性を比較した。環境への負の影響を低減できる農業技術によって、栄養特性が改善された健康機能を有する産品を開発し、最終的にアミアータ玉葱の保護と強化のための生産仕様書を作成した。販路も開拓できており、大手量販店のCOOPとの取引が確約されている。

(ii) 動物

希少性のチーズ・プロジェクトの参加主体と補助金の分配額は、ゲノム・アミアータ協会(40,390€)、フィレンツェ大学農業・食品・環境森林学科(Dipartimento di Scienze e Tecnologie Agrarie, Alimentari Ambientali e Forestali: DAGRI)(76,500€)、研究センター(42,300€)、畜産農家のフランチェシェッリ・グラツィアーノ農場(Franceschelli Graziano)(29,700€)とビンディ農場(Azienda Agricola Famiglia Bindi)(8,100€)、グロッセート県アミアータ山岳部共同体(10,350€)、農業教育・技術支援センター(24,295€)、COOPヘイマット(20,000€)、合計251,635€である(Regione Toscana, N.A.)。畜産家の分配比率は15%であることからプロジェクトでの積極的な関わりようがうかがえる。プロジェクトの受益者は、繁殖農家、研究者、チーズ加工業者、流通業者、中小規模の羊毛業者、観光施設運営者、地方自治体、観光振興機関など多様なセクターに渡る29

(4)  既存資源を用いたテリトーリオ価値の回復

景観

アミアータ・テリトーリオの住民にとって、ラッブロ山は単なる台地以上の意味を持つ。伝承されてきた歴史的・文化的価値を持ち、テリトーリオの文化を豊かにすることに貢献している。具体的には、ラッブロ山の頂上にある塔はキリストの再来と呼ばれたダヴィデ・ラザレッティ(Davide Lazarretti)が殉職した場所であり、いまでも多くのキリスト教徒が訪れる30

ラッブロ自然保護区で飼育されるマレンマ牛など在来品種の動物の牧場を筆者らが訪ねると背後にはアミアータ山の景観を望むことができた。写真2のとおりである。

写真2 在来動物とアミアータ山の景観

(出所)2019年10月23日筆者撮影

食文化

農家が既存の建造物を宿泊施設として整備し、生産物を使った郷土料理といった唯一無二の体験ができるサービス財を訪問者に提供することで非効率と捉えられている生物多様性保全を競争優位性に転換している。

(i) 玉葱

2019年10月、筆者らはセルヴァの玉葱を長年栽培している農家アグリツーリズモ・カーザ・ドンドリーニ(Agriturismo Casa Dondolini:住所Localita Case Dondolini 9, Selva, Santa Fiora 58030)を訪ねた。アグリツーリズモの周辺には小集落(borghetto)があり1950年ごろまでは50人が居住していた。現在は3家族のみである。女主人のMarianna Dondolini氏と娘のIva Savelli氏が筆者らを迎え入れ、畑から採ったセルヴァ玉葱の酢漬けをふるまってくれた。写真3のとおりである。

写真3 アグリツーリズモのオーナー母娘がふるまう在来品種の玉葱

(出所)2019年10月23日筆者撮影

(ii) 動物

筆者らが2019年10月23日に訪ねたサンタ・フィオーラ村のマルコ・フランチェシェッリ(Marco Franceschelli)氏は、アミアータ羊、アミアータ・ロバの生産者であり、希少乳のプロジェクトに参加している31。氏はグラツィアーノ農場、フォンテモッツァ・チーズ工房(Caseificio Fontemozza)、およびアグリツーリズモ・アンテー(Agriturismo Antee)を所有し、畜産、酪農、乳製品加工と販売、農村ツーリズムのための宿泊施設を経営している。動物を繁殖・飼育する単なる1次産業の畜産家としてではなく、チーズ工房で加工品を作る2次産業と、それを直販する3次産業、それらをあわせた6次産業化を実現し、さらにアグリツーリズモを経営することで訪問者にテリトーリオの郷土料理を提供することで、農村アメニティ(rural amenity)、すなわち「農村地域にある多様で特色ある自然や人間の創造物」であり「手つかずの自然、耕作地の景観、古い遺跡、さらには文化的伝統を含む概念(OECD, 1999, 訳p.1)」を活かした農村ツーリズムを実践している。

5.  小括

5.1.  活動の成果

補助金を受けて農村活性化に取り組むのは日本もイタリアも同様であるが、イタリアの場合は支援したプロジェクトがより効果を生んでいる。理由の1つはイタリアがテリトーリオ・アプローチによってボトムアップ型農村活性化の取組みを実践しているからである。たしかに、成果として、トスカーナ州グロッセート県は2000年から2007年の間に農業の付加価値が年2%増加した。2000年以降は農業生産物の輸出シェアも増加した。県の農業産品輸出率は年間約9%成長しており、その割合はトスカーナ州全体の農業輸出3.4%の成長率よりもはるかに大きい(IRPET, 200932)。

グロッセート県の地域全体の観光市場も成長した(IRPET, 2009)。主な観光地を見ると、訪問者の合計日数で測定した総需要は、2005年から2007年の間に約6.7%増加し、2007年の現地滞在日数は平均5.3日であった。目的地が農村の場合はさらに大きく需要が増加した。農村アメニティは8.4%、山岳地帯は13.9%、芸術関連の目的地は31.4%それぞれ増加した。

農村ツーリズムと農業(アグロ)ツーリズムが地元の農産物、自然、および歴史的遺産をプロモートするチャネルとなっている。グロッセート県の農産物と自然・歴史的遺産に対する需要の増加は、観光市場の成長と強く関連し、ことさら農業ツーリズムが非常に重要な役割を果たしている。イタリア人観光客のトスカーナ訪問先はグロッセート県の農業ツーリズム(トスカーナ州の農村への総訪問数の36%を占める)とシエーナ県(同22%)で58%を占める。2000年から2007年の間にグロッセート県の農業ツーリズムの訪問数は2倍になり(IRPET, 2009)、フィレンツェやピサといった有名な観光地よりも成長率が高かった(Mantino, 2011)。グロッセート県とシエーナ県に対する需要の急激な増加は、過去10年間のRDPによる補助金の成果によるものである。グロッセート県では、農業ツーリズム事業者の22%が地元に拠点を置いていて、内発的発展であるといえる(Mantino et al., 2010Mantino, 2011)。

5.2.  テリトーリオに埋め込まれた活動が生む価値

伝統的ツーリズムは有形文化財遺産に基盤をおいていた。スタニーシャ(2017)はそのオルタナティブとして、農村が持つ無形の文化遺産、例えば、農村の景観や質の高い農産物や食品やワインを活用しながら発展することができる。消費者も、高品質な生産物を求めたり、物よりも経験を求めたり、それらの真正性やルーツ、すなわちテリトーリオのアイデンティティを探求したがっている。いいかえると、テリトーリオが強固なアイデンティティを持ち、地域コミュニティに根ざした特性を持つことで人々をひきつけることができる。そのためには、山岳地帯、丘陵地帯、海といった自然環境、および農村と都市における人々の活動環境のテリトーリオ資源を統合し、関連主体のネットワークを構築し活動する必要があると主張する。

アミアータ・テリトーリオは農業の多面的機能を評価するEUのLEADER事業、およびトスカーナ州が積極的に採用しているテリトーリオ・アプローチを活用して、農業の生産によってではなく、観光客が農村を消費するために農村と都市が協力し合って農業の多面的機能を活用している。これはテリトーリオに埋め込まれた(embedded)経済活動(Polany, 1944)の実践であるといえよう。本稿は内発的発展を実践し消費者に農村アメニティや食文化といった唯一無二の価値を提供することでテリトーリオを発展させる可能性を示した。

付記

本研究はJSPS科研費19KT0014、および19H01544の助成を受けたものです。

1  日本では農業の多面的機能は農林水産省の食料・農業・農村基本法第3条において、農村における農業生産活動によって生じる1)国土の保全、2)水源の涵養、3)自然環境の保全、4)良好な景観の形成、5)文化の伝承等、食料その他の農産物の供給機能以外の機能とされる(農林水産省HP「農業・農村の有する多面的機能」https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukan/nougyo_kinou/(2020年6月18日参照)

2  グロッセート県HP(Provincia di Grosseto)http://www.provincia.grosseto.it/index.php?id=370(2019年12月20日参照)

3  ジリオッティ氏所有の農園と宿泊施設Agricola la Casina di Giannettoのホームページより。http://www.agricolacasinadigiannetto.it/(2019年12月20日参照)

4  ISMEA市場の透明性と農産物・食品市場に関する知識(ISMEA Mercato Trasparenza e Conoscenza dei Mercati Agroalimentari)サイト内のPDO/PGIの生産量等データベースQualidoより。http://www.ismeamercati.it/flex/FixedPages/IT/QualidoVetrina.php/L/IT(2020年1月20日参照)ISMEAは農産物・食品市場サービス研究所Istituto di Servizi per il Mercato Agricolo Alimentareの略で、イタリアの農林水産政策省の監督下にある公的機関である。

5  イタリア統計データベースISTATより。http://dati.istat.it/?lang=en&SubSessionId=319ea4b5-1b67-4c39-b780-69fc3b82eb4c(2020年1月11日参照)

6  セッジャーノ村の情報はイタリアのコムーネサイトを参照した。http://www.comuni-italiani.it/053/025/(2020年1月20日参照)

7  オルチャ渓谷のテリトーリオについては法政大学デザイン工学部建築学科陣内研究室(2012)「オルチア川流域:まちと田園の形成に関するフィールド研究」、および宗田(2012)が詳細な調査を実施し議論を展開している。

8  フランチジェナ街道地図 http://www.francigenaintoscana.org/cartografia_della_francigena.php(2020年7月13日参照)

9  Travelling in Tuscanyサイト”Walking in La Riserva Naturale del Pigelleto | Saragiolo—Miniera del Siele—Castell’Azzara | Podere La Roccaccia—Castell’Azzara” http://www.travelingintuscany.com/walk/eng/pigelleto.htm(2020年4月1日参照)

10  アミアータ山栗PGI協会から提供された「ヨーロッパの栗街道(Strada Europea del Castagno)」パンフレットより。

11  QualiGeo(N.A.)「モンテアミアータ山栗PGI(Castagna del Monte Amiata IGP)」https://www.qualigeo.eu/prodotto-qualigeo/castagna-del-monte-amiata-igp/#tab-ambiti-sistemaig(2020年9月6日参照)

12  Bellucci, Luigi.(2011)「アミアータのバスタルダ・ロッサ種:アルチドッソとセッジャーノ(パート1)」“La Bastarda rossa dell’Amiata: Arcidosso e Seggiano,” Cultura del Vino & Comunicazione.(2011年12月18日付)https://www.tigulliovino.it/dettaglio_articolo.php?idArticolo=9036(2020年2月23日参照)

13  QUALIVITA財団サイト「アミアータ山栗PGI、価格下落でも新しい機会(Castagna del Monte Amiata IGP, giù i prezzi, ma nuove opportunità)」(2018年10月10日付)https://www.qualivita.it/news/castagna-del-monte-amiata-igp-crollano-i-prezzi-ma-con-il-riuso-di-bucce-e-ricci-si-producono-cosmetici-e-si-fa-economia/(2020年2月23日参照)、およびGiornale dell’Agricoltura Italianaサイト(2018)「アミアータ山栗の価格は下落、しかし皮とイガの再利用で化粧品を生産し経済価値を創出(Castagne, sull’Amiata crollano i prezzi. Ma con il riuso di bucce e ricci si producono cosmetici e si fa economia)(2018年10月7日付)https://www.agricultura.it/2018/10/07/castagne-sullamiata-crollano-i-prezzi-ma-con-il-riuso-di-bucce-e-ricci-si-producono-cosmetici-e-si-fa-economia/(2020年7月13日参照)

14  「栗街道(Strade della Castagna)」トスカーナの火山:アミアータ山(Monte Amiata il Vulcano della Toscana)サイト内 http://www.monte-amiata.eu/italiano/amiata-natura-strada-castagna.asp(2020年2月23日参照)

15  ビジターが守るべきルールが6つある。1)ルートG以外は徒歩で移動すること、2)所有者の許可なく栗や材木などを拾わないこと、3)9月15日から11月15日の栗の収穫期間は木立の作業の邪魔をしないために免許を持ったガイドが同行すること、4)キャンプや火を使わないこと、5)木立にゴミを捨てないこと、6)動植物を脅かしたり傷つけたりしないことである(アミアータ山栗PGI協会からもらった資料「栗街道のトレイル」, N.A.)。

16  レシピはモンテクッコワインとアミアータの美食街道サイト http://www.stradadelvinoedeisaporidamiata.it/curiosita/ricette_tipiche.htmlに詳しい。

17  セッジャーノ・オリーブオイル品質保護協会サイト“Progetto INtegrato di Filiera “Agroalimentare”: Programma di Sviluppo Rurale della Regione Toscana 2014–2020”https://www.consorzioolioseggiano.it/risorse/pif-amiata-oleos/(2020年2月10日参照)

18  アミアータ西麓テリトーリオが生産するエクストラ・ヴァージン・オリーブオイルのうち2つの産品、オリオ・セッジャーノPDOとオリオ・トスカーノPGIが地理的表示に登録されている。原産地呼称(PDO)のオリオ・セッジャーノは本プロジェクトの中心的産品である。

19  セッジャーノ・オリーブオイル品質保護協会サイト“Progetto Integrato di Filiera “Agroalimentare”: Programma di Sviluppo Rurale della Regione Toscana 2014–2020”https://www.consorzioolioseggiano.it/risorse/pif-amiata-oleos/(2020年2月10日参照)

20  セッジャーノの根財団サイト(Fondazione le Radici di Seggiano)https://www.leradicidiseggiano.it/(2020年1月22日参照)、および「セッジャーノ:オリーブの村」(Seggiano I paesaggi del’olivastra)パンフレット https://issuu.com/leradicidiseggiano/docs/seggiano_paesaggi_dell_olivastra(2020年1月22日参照)

21  Grosseto Notizie: Qiatidiano on line(グロッセートオンラインニュースサイト)“Seggiano, sabato e domenica torna Olearie”(2019年4月24日付)https://www.grossetonotizie.com/seggiano-sabato-e-domenica-torna-olearie/(2020年1月20日参照)

22  Maremma Guideサイト“The Only Olive Tree in the World Whose Roots Talk to Us”https://www.maremmaguide.com/the-only-olive-tree-in-the-world.html(2020年1月20日参照)

23  外務省サイト「生物多様性条約(生物の多様性に関する条約:Convention on Biological Diversity(CBD))」(2015年12月19日付)https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/bio.html(2020年3月9日参照)

24  駐日欧州連合代表部公式マガジンEU MAG(2012)「EUの生物多様性戦略」(2012年9月24日付)http://eumag.jp/issues/c1012/(2020年3月8日参照)

25  Regione Toscana(N.A.)“保護地域:グロッセート県ラッブロ山(Riserva Regionale: Monte Labbro, Grosseto)”https://www.regione.toscana.it/documents/10180/14438137/Riserva_Naturale_Regionale_Monte_Labbro_GR.pdf/12b6a7db-6701-49fa-bb7b-2ad024095713(2020年3月9日参照)

26  サンタ・フィオーラ村役場サイト“トスカーナ州からセルヴァの玉葱に4000ユーロ(Dalla Regione 4 Mila Euro per la Cipolla della Selva)”http://www.comune.santafiora.gr.it/index.php/44-comunicati-stampa/548-dalla-regione-4mila-euro-per-la-cipolla-della-selva(2020年3月6日参照)

27  InnovaRuraleサイト“絶滅種または純血種の家畜から作られたチーズ(Formaggi ottenuti all’origine da animali domestici di razza in estinzione o reliquial)”https://www.innovarurale.it/it/pei-agri/gruppi-operativi/bancadati-go-pei/formaggi-ottenuti-allorigine-da-animali-domestici-di(2020年3月4日参照)

28  InnovaRuraleサイト“絶滅種または純血種の家畜から作られたチーズ(Formaggi ottenuti all’origine da animali domestici di razza in estinzione o reliquial)”https://www.innovarurale.it/it/pei-agri/gruppi-operativi/bancadati-go-pei/formaggi-ottenuti-allorigine-da-animali-domestici-di(2020年7月14日参照)。社会的農業とは農業生産活動を通じて社会的に不利な立場にある人々の社会・労働への参入を促し生産物と同時に地域の社会・福祉サービスを実現することである(中野・山路, 2016)。

29  フィレンツェ大学農業・食品・環境森林学科サイト“トスカーナ州農村開発政策PSR-EAFRD 2014–2020:農業の生産性と持続可能性の革新のための欧州パートナーシップの戦略的計画の実施およびオペレーショングループの設立と管理のサポート(PSR—EAFRD 2014–2020 Regione Toscana: Sostegno per l’attuazione dei Piani Strategici e la costituzione e gestione dei Gruppi Operativi (GO) del Partenariato Europeo per l’Innovazione in materia di produttività e sostenibilità dell’agricoltura)”https://www.dagri.unifi.it/p729.html(2020年7月14日参照)、およびInnovaRuraleサイト“絶滅種または純血種の家畜から作られたチーズ(Formaggi ottenuti all’origine da animali domestici di razza in estinzione o reliquial)”https://www.innovarurale.it/it/pei-agri/gruppi-operativi/bancadati-go-pei/formaggi-ottenuti-allorigine-da-animali-domestici-di(2020年7月14日参照)

30  That’s Amiataサイト“ラッブロ山:聖なる者が自然と出会い、極上の美しさを表現する場所(Monte Labro, Dove il Sacro Incontrala la Natura ed Esprime l’Estrema Bellezza)”(2016年4月20日付)https://www.thatsamiata.com/territorio/monte-labro/(2020年3月6日参照)1834年にアミアータのアルチドッソ村で生まれたキリスト教説教師ラザッレッティは1868年にアミアータ山で悟りを開き説教活動を行った。1878年にビットリオ・エマヌエレ2世と教皇ピウス9世が相次いで没したのを機に共和制と神の王国の到来を宣言し、信徒とともにラッブロ山から下山しようとしたところを治安部隊によって殺害された。ジュリスダヴィデ運動(司法管轄権)の信奉者はラザッレッティをイエス・キリストの再来と呼ぶ(Terre di Toscanaサイト“Torre Giurisdavidica del Monte Labbro”https://terre-di-toscana.com/terreditoscana/torre-giurisdavidica-del-monte-labbro/(2020年3月6日参照))。

31  Conti, Marco.(2018)“グロッセート県アミアータ農村部活性化のためのイノベーションに焦点を当てる(Si Punta sull’Innovazione per il Rilancio del Settore Rurale)”(2018年4月4日付)アミアータニュースサイト http://www.amiatanews.it/amiata-gr-si-punta-sullinnovazione-per-il-rilancio-del-settore-rurale/(2020年3月4日参照)

32  IRPETはトスカーナ州地域経済計画研究所(Istituto Regionale Programmazione economica della Toscana)でトスカーナ州の経済計画のための地域委員会(Comitato regionale per la programmazione economica della Toscana: CRPET)の技術科学団体である。

参考文献
 
© 2021 The Research Institute for Innovation Management of Hosei University
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