日本臨床外科医学会雑誌
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上部胃癌並びに食道噴門境界部癌の病理組織学的特殊性について
特に術前照射を中心として
牧野 惟義古畑 正
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1975 年 36 巻 6 号 p. 685-706

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抄録

膠着した進行胃癌治療の現状に於て,手術適応の拡大と,より一層の遠隔成績の向上を目的として,昭和42年より放射線療法との併用療法,特に術前照射を施行し,その優秀性を報告してきたが,上部胃癌,並びに食道噴門境界部癌においても,中,下部胃癌と同様に照射により好結果を得ている.
結果
1. 術前照射に当つては,綿密な照射計画をたてた上で,線源を選択し,照射範囲を決定するべきである.
2. 術前照射の照射計画は, X線,内視鏡上の浸潤範囲より更に口側5cm迄を照射範囲に含めるべきである.
3. 組織型別の口側壁内進展距離は,乳頭状腺癌,腺房状腺癌,類表皮癌では最長2 cm,腺管状腺癌,単純癌では長い症例が多く最長5cmの症例があり,切除に際し注意を要する.
4. 深達度と口側壁内進展距離は密接な関係があり,深達度が深くなるほど進展距離も長くなる.
5. 切除線は食道収縮率を考慮して,口側壁内進展距離より更に口側1cmの距離を追加するべきである.
6. 術前に生検による組織型の検索を行ない,進展距離を予測し,切除線の予測が可能である.
7. 取り残しの危険が予想される場合は,進んで開胸するべきである.
8. 口側食道壁浸潤型式に従来みられない,粘膜表面を単層性に浸潤する乳頭状腺癌がみられた.
9. 照射により進展距離は短縮し,深達度は浅くなり,かつ癌細胞は破壊されることから,術前照射は積極的に行なうべきである.
10. 術前照射により, 13.8%の治療切除率の向上を認めた.
11. 術前照射により,治癒切除群で6.7%の5年生存率の向上を認めた.

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