抄録
Leriche症候群のうち閉塞が腎動脈分岐部直下におよぶ症例は高位腹部大動脈閉塞症と称され,下肢閉塞性動脈疾患の終末像と云いうるが,本邦では稀である.閉塞が連続性に左腎動脈起始部に波及した症例を含め8例の本症を経験したので報告する.初診時年齢は39~73歳,平均55歳.主訴は間歇性跛行,陰萎,乏血性壊死が多い.男性7例,女性1例で,男性6例は大量の喫煙をしている.合併疾患が多く,高血圧6例,尿蛋白5例,心電図の異常4例,糖尿2例,胃潰瘍2例を認める.基本的な術式は腎動脈分岐部より2~3cm末梢側で大動脈を横断,血栓内膜摘除術を行い,大動脈-両股動脈バイパスを行う.本術式を4例に施行,最長4年5月,最短1年6月,全例開存している. poor risk症例には腋窩-股動脈バイパスが行われ, 1例は5年後心不全で死亡するまで開存, 1例は術後15日目に腎不全により死亡した.初期の大動脈の縦切開による血栓内膜摘除術,大動脈-両股動脈バイパス施行症例はrun offが悪く術直後より閉塞,膝下部切断に至った.約7年間の経過観察例は下肢乏血症状は非進行性であり高血圧も発生していない.乏血性壊死を主訴とする症例は末梢の閉塞が血栓形成により中枢側に進展した症例で, run offは悪く,手術成績は不良である.間歇性跛行を主訴とする症例は緩慢な経過を示し, run offは良好であり血行再建術の好適応である.術中の腎保護が1つの問題点であるが,特別な保護手段は用いていない.
本邦でも食生活の変化に伴い,高位腹部大動脈閉塞症は増加すると思われる.