日本臨床外科医学会雑誌
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十二指腸球後部潰瘍の臨床
浦 一秀伊藤 俊哉水町 信之加藤 尚志朝永 良介井沢 邦英宮城 直泰
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1979 年 40 巻 3 号 p. 490-496

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抄録

最近約5年間の十二指腸潰瘍手術症例115例のうち,十二指腸球後部潰瘍は8例, 7.0%を占める.これら球後部潰瘍の占在部位は十二指腸上膝部5例,下行脚部3例で,多発性のものが5例である.臨床症状は球部潰瘍に比し非定型的であり,不定期の腹痛,十二指腸狭窄症状,易出血性である.胃腸透視所見では球後部の変形, Kerckring皺壁の不整,ニッシェ等を全例に認め,また球後部の高度狭窄像を4例に認めた.膵への潰瘍穿通を8例中2例に認めたが,これらの症例では膵頭十二指腸領域の癌との鑑別が困難である.内視鏡検査は消化性潰瘍の確診上有用であるが,狭窄のため挿入が困難なこともあり,自験例の多くはX線検査,特に低緊張性十二指腸造影により診断された.胃液検査術前施行例6例中4例に過酸を示したが,刺激検査では球部潰瘍と類似のパターンを示し,特に差異は認められなかった.なお,膵頭十二指腸癌との鑑別が困難であった2例,及び胃,球部,上膝部,下行脚に多発した潰瘍の1例を提示する.
治療は内科的には奏効し難く,手術の対象となる.手術々式は上膝部のものでは可能ならば潰瘍部を含めた胃幽門領域切除術兼選択的胃迷走神経切離術を行う.しかし潰瘍部の切除不能例及び下行脚部のものでは昿置的胃切除術兼選択的迷走神経切離術を行う.消化管再建は8例中6例がBillroth 2法によった.

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