1979 年 40 巻 6 号 p. 1157-1164
腸間膜血管閉塞症は術前術後管理の進歩した今日でもなお死亡率の高い疾患の一つである.
われわれは本症により小腸広範切除を要した症例を経験したが,術後, short bowel syndromeに対して各種栄養法を試み良好な成績がえられたので報告する.
症例は本症により他施設にてすでに小腸広範切除がなされ,幸いに救命しえたものの,術後53日目にイレウス症状が発現したため,当科へ転科した.開腹の結果,吻合部を中心としてとくに肛門側腸管に広範な壊死性変化を認め,狭窄が高度であったため,再度,腸切除を施行し,残存腸管は30数cm余となった.
再手術の原因となった索状狭窄の成因とともにshort bowel syndromeの病態について考察を加え,さらにshort bowel syndromeに対する栄養管理について,われわれの経験をもとに述べるが,本症例は栄養法としてTPNからEDへ, EDから通常の経口食へと,著るしい合併症もなく,各々のきり替えが極めて円滑に施行できた症例であり,現在,全身状態は良好であるが経過観察中である.