抄録
先天性胆道拡張症Congenital Biliary Dilatation (以下CBDと略)は,欧米ではまれであるが,本邦では比較的多い疾患である.本症の診断には超音波断層法や99mTc-(Sn)-Pyridoxylideneisoleucine (99mTc-PI)と略)を用いた胆道シンチグラムが有用であり,本症には膵胆管合流異常を伴うことが多く,最近では, ERCP, PTCで術前に診断されることが多い.本症の合併症として胆石症以外に胆管拡張部の癌発生の頻度が高いことが注目されている.
教室では1968年より1980年までに成人例2例を含めた10例のCBDを経験し,その中の1例に,嚢腫空腸吻合術後, 2年経て嚢腫壁から発生したと思われる癌化例を経験した.本症例を報告するとともに本症の悪性変化について文献的考察を行った.
本症の治療としては,嚢腫腸管吻合術は,感染,発癌の点から適当ではなく,嚢腫切除・肝管腸管吻合術が望ましい.