日本臨床外科医学会雑誌
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遠隔成績からみた胃・十二指腸潰瘍の術式選択
減酸率と術後障害について
三島 秀雄近藤 孝大沢 祐三谷口 勝俊岡村 貞夫河野 暢之勝見 正治
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1981 年 42 巻 4 号 p. 380-387

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抄録

当教室で過去7年間に経験した胃・十二指腸潰瘍手術症例は370例(胃潰瘍215例,十二指腸潰瘍113例,併存潰瘍42例)である.手術術式は分節胃体部切除兼迷走神経切離±幽門形成術(分節胃切兼迷切±幽成) 15例,広範囲胃切除術(広範胃切) 92例,幽門洞切除術(幽切) 143例,選択的迷走神経切離兼幽門洞切除術(選迷切兼幽切) 83例,選択的近位迷走神経切離±幽門形成術(選近迷切±幽成) 30例,その他7例である.これらの症例に対し減酸効果の検討や術後アンケート調査(回答率81.6%)を行ない,潰瘍再発の有無並びに術後障害について遠隔成績の評価を試みた.
術後障害は選近迷切±幽成,幽切,選迷切兼幽切,広範胃切,分節胃切兼迷切±幽成の順に良好であった.再発は選近迷切±幽成に4例,広範胃切に1例,選迷切兼幽切に1例認めた.減酸率は選迷切兼幽切92%,広範胃切77%,幽切61%,選近迷切±幽成51%,分節胃切兼迷切±幽成27%で,特に選近迷切±幽成では術後MAOは4.8mEq/hrと他の術式より高値を示した.以上の結果と潰瘍存在部位による各術式の評価から, 1) 正低酸の胃潰瘍(132例)に対しては幽切で充分な減酸効果が得られ,胃切後障害は広範胃切に比較して少ない. 2) 高位潰瘍に対する分節胃切兼選迷切兼幽成(13例)は術後障害が多く,これは幽成付加のためと思われた.一方分節胃切兼選近迷切(2例)の術後成績は良好であった. 3) 十二指腸潰瘍に対する選迷切兼幽切(49例)の術後成績は概して良好であるが,胃潰瘍(18例)又は併存潰瘍(16例)に施行した場合は術後障害の面で劣っていた.これは前者に比し胃切除量の多い事が原因と思われた. 4) 十二指腸潰瘍に対する選近迷切±幽成(30例)は各術式中最も術後障害が少ないが,減酸効果の面でやや不充分であり特に幽成付加症例(15例)では潰瘍再発が20%と高率であった. 5) 併存潰瘍は胃潰瘍と比較して再発率が高く幽切を行なう場合は迷切を併用する必要があると考えられた.

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