日本臨床外科医学会雑誌
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十二指腸乳頭部癌の臨床的病理学的検討-とくに肉眼型別特徴について-
西村 興亜小川 東明水本 清竹内 勤岸 清志日野原 徹井上 雅勝岩井 宣健安達 秀雄古賀 成昌
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1981 年 42 巻 6 号 p. 618-628

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抄録

乳頭部癌の治療成績の向上をめざし,本症臨床像の特徴を十分把握するため,切除15症例について肉眼型別(腫瘤型8例,潰瘍型7例)に臨床的病理学的検討を行ない,以下の結果を得た.
1) 臨床症状は黄疸,発熱,倦怠感,食欲不振,痩せが高頻度であった.初発症状としては倦怠感,発熱,腹痛が多く,黄疸の頻度は少なかった.肉眼型別の初発症状は,腫瘤型では発熱,黄疸が,潰瘍型では腹痛,悪心・嘔吐を示すものが多かった.
2) 黄疸は腫瘤型では早期に出現し,漸増型を示すものが多いのに対し,潰瘍型では発現が遅れ,消長,消失型を示す例が多かった.黄疸の程度は腫瘤型で高く,潰瘍型で低い傾向がみられた.
3) 一般検査成績では,貧血,便潜血,血清Al-P, GOT, GPTの上昇,白血球増多など,胆道の閉塞や感染,病巣出血に関わる異常所見が高頻度にみられた.肉眼型別には腫瘤型で白血球増多,高度黄疸例が,潰瘍型で膵内分泌障害例が多い以外には明らかな差異はみられなかった.
4) 病巣診断には低緊張性十二指腸造影, PTC,十二指腸内視鏡と生検が有用であった.病巣の小さな腫瘤型症例では診断困難な例がみられた.
5) 病理組織所見では,潰瘍型は腫瘤型に比べて組織浸潤度,深部浸潤,リンパ節転移,脈管侵襲がより著明であった.すなわち,潰瘍型はより悪性度が高く,進行性であると考えられた.
6) 潰瘍型症例には予後不良の例が多かったが,これには潰瘍型の症状がより不定で,長い病悩期間を有するなど,臨床像の特徴による診断の遅れも1因として関わるものと考えられた.
以上の成績から,乳頭部癌の治療成績向上には,これら臨床像の十分な認識のもとに,可及的早期に十二指腸,胆道,膵系の精査を行ない,早期発見に努めることが肝要である.

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