日本臨床外科医学会雑誌
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膵膿瘍を併発した乳頭部癌に対する膵全摘の1治験
内山 勝弘高田 忠敬佐藤 裕一鈴木 衛大橋 正樹安田 秀喜金山 成保中村 光司羽生 富士夫
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1981 年 42 巻 6 号 p. 660-664

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抄録

膵頭十二指腸切除術は膵頭部領域癌に対する定型的術式として,現在広く行われている.しかし,膵空腸吻合部の縫合不全は今でもこの術式の重大な合併症であり,ひとたび縫合不全が起きれば患者の生命が危うくなる場合が少なくない.我々もこれまでに膵炎,膵膿瘍を併発した膵頭部癌2例に対し膵頭十二指腸切除を,膵石症・慢性膵炎の1例に膵管空腸吻合を試みたが,いずれの症例も術後早期に膵空腸吻合部の縫合不全を引き起こし,膵壊死,腹膜炎,腹腔内出血などの重篤な合併症で死亡した.これらの苦い経験により,膵炎,膵膿瘍を併発した膵頭部領域疾患に対しては, 1)膵全摘術を行う, 2)残存膵と空腸との1期的な吻合を行わず,膵管外瘻を設置する,の2つの方法が考えられた.本症例は膵炎,膵膿瘍を併発した乳頭部癌であったが,膵全摘を行うことで治癒せしめることができた.この症例について報告するとともに,膵全摘術の意義について検討した.

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