抄録
神経節細胞腫は,神経芽腫群腫瘍の1つであり,神経芽細胞腫の成熟型又は良性型と考えられ,比較的稀な疾患である.我々は最近14歳男性の仙骨部に発生せる本邦第4例目の神経節細胞腫の1例を経験したので報告した.この腫瘍は,大きさ16×12×10cm, 重量1,630gあり,完全摘出症例では本邦で最も巨大なものであった,この自験例を含めた神経節細胞腫の本邦報告例105例について,若干の検討を加えた.その結果は,男女比では0.69と女性にやや多い傾向がみられた.年齢別にみると, 9歳以下が51%と約半数を占め,年齢が長ずるに従い減少していた.大きさは,鶏卵大~鵞卵大のものが最も多く,形態は球形~楕円形を呈し,被膜で被われた充実性腫瘤であった,好発部位は,約半数が後縦隔原発であり,最も普通にみられる原発は,頭蓋底から頚部,後縦隔,副腎髄質,後腹膜を通って骨盤に至る交感神経系のgreat chainであった. Recklinghausen氏病との合併症が3例に認められた.カテコールアミン産生腫瘍が7例あり,うち1例がV. I. P. 産生腫瘍であった事は興味深く,今後両者の関連性については症例が増えれば解決される問題と考えられた.予後は,ほとんどの症例で良好であった.