抄録
胆石イレウスは本邦では比較的稀な疾患とされているが,その報告例は増加傾向にあり,今回我々も胆石イレウスの1例を経験したので報告し,本邦集計例について述べると共に,若干の文献的考察を加えた.
症例は66歳の女性で約3年前より上腹部痛及び発熱を時々認めていた.昭和56年10月,突然の上腹部痛にて来院.腹部単純写真にて腸閉塞症と考えlong intestinal tube にて減圧,脱水・電解質異常を補正した後開腹.トライッ靱帯より約3m肛門側に嵌屯した胆石を認め腸切開により摘出.術中内視鏡(GIF typ P3)にて瘻孔を確認し一期的に瘻孔切除,胆嚢摘除を行い良好な結果を得た.本症では緊急手術例が多いが,胆石イレウス等の単純性機械的イレウスに対しては先ずlong istestinal tubeにて減圧すると同時に精査を行い,全身状態良好な時点で手術を施行すべきであり,胆道系に関しては結石が除去されれば内瘻の自然閉鎖と胆嚢の萎縮が起こるため,症状が無い限り無処置でよいとする報告もあるが,一方で再発,胆嚢癌の高率発現が報告されており,一期的ないし二期的な胆道系の処置が必要と思われた.