日本臨床外科医学会雑誌
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閉塞性黄疸時における上部消化管出血の臨床的実験的検討
高田 孝好裏川 公章内藤 伸三松永 雄一河合 澄夫高瀬 信明中山 康夫香川 修司長畑 洋司林 民樹斎藤 洋一
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1983 年 44 巻 10 号 p. 1162-1169

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抄録

著者らはビリルビン2mg/dl以上の閉黄患者255例を対象として消化管出血を合併した27例(11%)についてその臨床病態を分析し,また若干の実験成績とともに閉塞時の消化管出血の成因,治療について検討した.消化管出血27例中24例(89%)はビリルビン10mg/dl以上の高度黄疸症例であった.また原因と思われるstressorを重複算出にて分析すると,手術侵襲や胆管炎,重症肺合併症などの感染症が主たる原因と考えられた.潰瘍発生部位は胃体部から噴門部にかけ小弯側中心に発生し, UL I~UL IIの浅い潰瘍が多発する傾向にあった.閉黄時の急性潰瘍発生機序について総胆管結紮ラットに水浸拘束ストレスを負荷し検討した.結紮2週群ではストレス負荷後に胃壁血流量が無処置群, 1週群に比較して著明に減少し,また潰瘍指数も高値を示した.閉黄時には急性潰瘍発生準備状態にあると考えられ,このため閉黄患者の術後には積極的にcimetidineなどの予防的投与を行ない消化管出血の発生に細心の注意をはらう必要がある.教室では過去3年間に閉黄時の消化管出血7例にcimetidineを投与し5例(71%)の止血を得た.やむを得ず手術を施行する時は,出血巣を含つ広範囲胃切除術にcimetidineの併用が好ましい方法と考える.

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