日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
結腸膀胱瘻を合併したS状結腸憩室症の一治験例
光野 正人野田 和人朝倉 孝弘山田 育宏田原 昌人木曽 光則松井 俊行小山 〓甫福富 経昌吉岡 一由荒川 雅久田宮 三郎森永 修高田 元敬佐藤 博道伊藤 慈秀
著者情報
ジャーナル フリー

1983 年 44 巻 5 号 p. 593-599

詳細
抄録

近年,結腸憩室症は,診断技術の進歩により,その報告例が増加している.最近,私達は, S状結腸憩室症に合併した結腸膀胱瘻の1症例を経験したので,その症例報告に,若干の文献的考察を加えて報告した.
症例は気尿および糞尿を主訴とした46歳の男性で,膀胱鏡にて頂部左後壁に周囲粘膜の発赤を併った小隆起が観察され瘻孔開口部と思われたが,注腸造影では, S状結腸~下行結腸にかけ多数の憩室を認めたものの,両病変の間に瘻孔は確認できなかった.
手術所見上, S状結腸中央部が膀胱体~頂部後壁と炎症性に固く癒着し腫瘤状になっていた.瘻管の1部を含めてS状結腸を切除し,端々吻合した後,膀胱を瘻管部を含めて部分切除し, 2層に縫合閉鎖した,術後8日目に結腸吻合部の縫合不全をきたし,人工肛門を造設した.翌年5月に人工肛門閉鎖を行った.
結腸憩室症の多くは,外科的治療の対象とはならない.しかし,憩室炎による合併症を生じた場合は,外科的治療が必要となる.本疾患による合併症の1つである結腸膀胱瘻は,欧米では多数の報告例があるが,本邦では,私達が集計した限りでは,自験例を含めて24例のみであった.その男女比は, 17:7と男性に多く, 40~60歳代に多く見られた.症状は,膀胱剤激症状,気尿,糞尿など,泌尿器科的症状が多かった.手術方法については,最近では, One-stage operationで好成績を納めたという報告が多いが,本症例のような,炎症性変化の強い症例ではMultiple-stage operationも考慮されるべきであろう.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事
feedback
Top