日本臨床外科医学会雑誌
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Tnm分類Stage III乳癌症例の検討
短期死亡例と長期生存例の比較
山下 栄敏森 昌造別所 啓司安部 彦満鈴木 後輔斉藤 和好
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キーワード: Tnm分類, Stage III乳癌
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1984 年 45 巻 1 号 p. 32-36

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抄録

1969年から1976年までの8年間に当科で経験したTnm分類Stage III乳癌21例の予後は, 5年以上生存した11例と3年以内に死亡した10例に区分された.そこで前者を長期生存群(以下生存群),後者を短期死亡群(以下死亡群)としその背景因子について比較的検討した.疫学的発癌要因の検討では生存群に不利な条件が多く,疫学的にhigh riskで発癌しても予後には結びつかないものと考えられた.
腫瘤の占居部位,面積,周囲組織への浸潤程度,組織型,治療内容などでは両群間に差を認めなかった.領域別リンパ節の転移状態は,腋窩は両群共100%であるが,鎖骨下および胸骨旁領域では生存群に転移陽性例が多かった.しかし,各領域の転移陽性率では,腋窩領域で生存群の41.8±28.4%に対し死亡群が74.6±20.3%と有意に高かった(p<0.05). 更に,腋窩リンパ節の転移状態を個々の症例でみても死亡群では全例がnlβ以上で,しかも8例(80%)は半数以上に転移を認めた.ちなみに生存群では11例中3例(27.3%)がnlαであり,半数以上に転移を認めた症例は3例(27.3%)のみであった.以上より, Stage IIIの進行乳癌に限ってみれば予後と最も関係が深いものは腋窩リンパ節の転移個数であった.

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