日本臨床外科医学会雑誌
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原発性上皮小体機能亢進症の外科治療
12例の臨床的経験の検討
篠崎 登細谷 哲男内田 賢助川 茂桜井 健司
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1985 年 46 巻 11 号 p. 1444-1448

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抄録

過去18年間に当教室で治療した原発性上皮小体機能亢進症(Primary Hyperparathyr-oidism以下PHPと略す)は12例(男性5例,女性7例)あり,この臨床的事項-年齢,臨床病型,病悩期間,病理組織型,既往症および合併疾患,術前の病的上皮小体の部位診断,手術々式等-について検討した.
PHPは全例顕性型で,骨病変型(骨型)9例と腎結石型(腎型)3例の2型に臨床病型を分類した.
男女別の平均年齢は男性41歳,女性40.3歳と性差なく,臨床病型別の平均年齢は骨型40歳,腎型42.3歳と腎型が骨型より2歳高齢である.
病理組織型は,骨型が癌1例,腺腫4例,過形成3例,腺腫様変化1例,腎型が腺腫1例,過形成2例であった.
平均病悩期間は,骨型が6年,腎型が9年で,腎型の方が骨型より3年長かった.
合併症をみると,腎障害が12例中5例に認められ, 5例中の1例は急性腎不全にて術直前に急死し, 1例は片腎無機能であった.
術前の部位診断では,触診,超音波, CTスキャン等が患者への負担が少なく,有効と考えられた.
頸部だけの手術操作で摘出できなかったのは, 12例中1例だけである.術式は, 1腺のみ腫大する癌や腺腫では1腺のみの摘出,過形成のように全腺が腫大する症例では全摘して,前腕への自家移植がよいと思われる.
以上, PHP 12例の臨床病理学的な検討から次のことがわかった.
(1) 臨床病型では,腎型が骨型より2年高齢で,病悩期間も腎型の方が3年長かった. (2) 腺腫3例についてみると,腺腫の重量は病悩期間と反比例していた. (3) 顕性型のPHPは,腎障害を合併することが多く,診断ができたらできるだけ早く手術することが望ましい. (4) 12例中11例は頸部手術のみで十分であった.従って,術前の部位診断は,患者に負担のかからない検査のみで十分である.

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