日本臨床外科医学会雑誌
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摘脾により溶血の改善をみた先天性非球状赤血球性溶血性貧血の1例
今井 信介鬼頭 文彦呉 宏幸大木 繁男杉山 貢西山 潔土屋 周二
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1986 年 47 巻 11 号 p. 1514-1520

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抄録

稀な先天性非球状赤血球性溶血性貧血の症例に摘脾を行ったが,溶血現象は改善したが貧血は余り改善しなかった.症例: 24歳男性.主訴:黄疸,脾腫.既往歴: 6歳の時から溶血性貧血と診断されていた.現病歴:胆嚢結石を合併した先天性溶血性貧血の診断を受け,症状改善のため手術を勧められ入院.入院時所見:脾腫,黄疸,胆嚢結石を認めた.赤血球数256万/μl, ヘモグロビン10.7g/dl,網状赤血球数195%, 間接ビリルビン9.5mg/dl, Coomb's testは陰性,赤血球形態は正常.溶血性貧血の原因となる各種の赤血球酵素活性を測定したが,現在知られている酵素で有意に低下したものはなかった.先天性非球状赤血球性溶血性貧血の診断で,脾臓及び胆嚢摘出術を施行した.術後1年では溶血現象は改善したが,貧血の改善は十分ではなかった.非球状赤血球性溶血性貧血は稀で原因として多数の赤血球酵素異常が知られるようになったが,摘脾の効果は一様でないと思われる.

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