日本臨床外科医学会雑誌
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慢性膵炎外科治療の術後遠隔成績に関する臨床的検討
平田 公一白松 幸爾秦 史壮桂巻 正大久保 衛及川 郁雄丸山 芳朗臼井 朋明木村 弘通伝野 隆一早坂 滉
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キーワード: 慢性膵炎, 術後成績
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1986 年 47 巻 3 号 p. 281-287

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抄録

1974年6月から1984年5月までの10年間に教室で経験した慢性膵炎症例38例中,手術施行34例について,術式および術後経過を体重変化,除痛効果,膵内・外分泌機能,社会復帰状況から,またアルコール摂取の関与についても検討した.なお手術直死例を経験していない.
体重増加例は8例(23.5%)で,膵管減圧手術群においては低下例はなく60%の高頻度で増加症例を認めたのに対し,他術式では低下例も存在した.成因別ではアルコール性症例に増加例が多く,その多くは禁酒あるいは節酒の関与が考えられた.除痛効果は84%に有効で,無効であったのは膵頭十二指腸切除術1例(25%), 胆道手術1例(10%), 嚢胞消化管吻合3例(50%), 腹腔神経節切除1例(100%)の計6例である.膵内・外分泌機能はいずれの術式においても低下例が存在し,とくに膵切除例に高頻度に観察された.完全に社会復帰ができたのは31例(91%)で,これには定期通院症例も含まれる.復帰の成されていない3例はいずれも疼痛が残っている症例で,術式別では膵頭十二指腸切除1例,嚢胞消化管吻合1例,腹腔神経節切除1例である.そのうち前2例はアルコール摂取を中止していない.
アルコール性慢性膵炎例においては,術後アルコールの摂取を続けると術式の如何を問わず病態が進行すると考えられた.術後経過不良例は,膵管内減圧効果が不充分か,アルコール摂取による内圧元進が原因と考えられる.

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