抄録
1966年から1985年までの20年間に取り扱った隆起型早期胃癌手術例35例37病変について臨床的ならびに病理組織学的に検討した.年齢・性別頻度では40歳代以上に多く,とくに60歳代は57.1%を占め,男女比は6:1であった.
肉眼型は純隆起型が多く,平担型や陥凹型との混合型は少なかった.病変部位別頻度では前庭部59.5%,体部29.7%,噴門部10.8%であり,とくに純隆起型は前庭部に多かった.
深達度はm癌56.8%, sm癌43,2%で,純隆起型ではm癌が,混合型ではsm癌が多かった.
組織型別頻度では分化型腺癌が83.8%と高率であった.脈管侵襲はリンパ管侵襲および静脈侵襲のいずれもsm癌に多かった.周囲組織への浸潤増殖様式はm癌の90%がINFαあり, sm癌の80%がINFγであった.重複癌は同時性3例(胃),異時性5例(胃2例,結腸,直腸,肺各1例)であった. 5年生存率は94.7%であり,胃癌再発死は1例のみでほぼ満足できる成績であった.