日本臨床外科医学会雑誌
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肝切除術後の上部消化管出血の発症誘因について
特に肝硬変合併例を中心に
安積 靖友裏川 公章長畑 洋司熊谷 仁人伊藤 あつ子佐埜 勇斉藤 洋一
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1987 年 48 巻 2 号 p. 192-197

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抄録
肝切除後の上部消化管出血の発症誘因について,肝硬変合併の有無で2群に分け,肝機能,血液凝固能,手術侵襲,胃酸分泌動態より検討を加え以下の結論を得た.
上部消化管出血は,非肝硬変群では15例中1例(6.7%)であったのに対し,肝硬変群では19例中5例(26.3%)あり,死亡は1例であった.肝切除量,術中出血量と術後上部消化管出血との間に一定の関係はなかった.肝硬変群では非肝硬変群に比較して, GPT, TTT, ICGK値, ΔIRI/ΔBS, IRImax値,およびヘパプラスチンテストの各指標は有意に悪化していた.肝硬変群の術前のMAOは正酸(5mEq/hr~20mEq/hr) 10例,低酸(5mEq/hr未満) 8例であり,出血群5例はすべて正酸域であった.以上より術前MAOが5mEq/hr以上の症例には,術直後よりシメチジンを投与することが望ましいと考えられた.
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