1987 年 48 巻 6 号 p. 781-790
閉塞性動脈疾患の諸症状は末梢での組織血流量の低下による阻血によるものと考えられ,その病態を把握するために画像診断法が行われるが,より重要な診断法として組織血流量測定が必要となる.そのひとつの検査法として比較的侵襲の少ない検査法である電解式水素ガスクリアランス法を用いて,血行障害のある下肢を対象として腓腹筋の筋組織血流量を血行再建術前後および安静時,運動負荷時において測定した.その結果,閉塞部位別の組織血流量は中枢より末梢での閉塞のほうが低値を示し,同様に運動負荷時の組織血流量の増加も末梢での閉塞の方が低値を示した.また血行再建術前後の比較においても局所組織血流量測定は有用であった.さらに糖尿病性血管症では動脈造影上明らかな閉塞が認められなくても運動負荷の組織血流量の増加が少なく,動脈硬化症と異なった病態が考えられた.