日本臨床外科医学会雑誌
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結腸癌による十二指腸結腸瘻の1例
岸本 秀雄大村 豊大橋 大造入谷 勇夫小川 弘俊待木 雄一織田 誠加藤 雅通坂本 英至
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1988 年 49 巻 11 号 p. 2160-2165

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抄録

肝弯曲部に生じた結腸癌のために,十二指腸下行脚と結腸肝弯曲部の間に瘻孔を生じた62歳男性の1症例を報告する.瘻孔は上部消化管造影にて診断された.主症状は,全身倦怠感,腹部膨満感,嘔吐である.腸閉塞症状を呈したため,盲腸にて複孔式人工肛門を造設後,全身状態の改善を待って,根治手術(右半結腸切除,十二指腸前壁切除,膵部分切除,胃空腸吻合)を施行した.病理組織学的には粘液癌と診断した.患者は,根治術後6カ月を経過した現在,腹壁に再発するも生存中である.結腸癌による十二指腸結腸瘻の報告は稀である.本邦では,最近の28年間に23例の報告を認めるに過ぎない.予後に関しては,瘻孔を形成した症例が必ずしも不良とはいえなかったが,大腸の粘液癌は,局所再発,腹膜播種,肝転移などの再発が多く不良であり,十分な経過観察が必要と考えられる.

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