抄録
縦隔内に発生したhemangiopericytomaを経験したので報告する. Hemangiopercytoma (血管周皮細胞腫)は比較的まれな腫瘍であり,我が国においては1913年の太田の報告以来210例を数えるのみである.この腫瘍細胞はpericyteよりなり鍍銀染色にて特有な構造をしめす.腫瘍の発生部位は体のどの部位からも起こりうるが,下肢,後腹膜に多い.今回,われわれの経験した縦隔内の報告は極めて少ない.診断にはCT,血管造影が有用である.治療法は外科的切除が最も良く,放射線治療,化学療法は効果的ではない.生存率は腫瘍の大きさに逆比例している.われわれの症例は現在切除後1年経つが再発の兆候はみられていない.