従来までに本邦において直腸カルチノイドは比較的稀な疾患とされ,しかも,そのほとんどは良性カルチノイドであった. 1982年までの報告では転移性カルチノイドは本邦では25症例の報告があった.
最近10年間にわれわれの施設で7例の直腸カルチノイドを経験し,そのうち3例に肝転移,骨転移を認めたので報告すると共に今回6例の直腸カルチノイドの全ての症例にNeuron-specific Enolaseの存在を酵素抗体法にて染色し全例陽性であったため,これらを検討し,直腸カルチノイド発生母細胞について考察を加えた.