日本臨床外科医学会雑誌
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両肺多発陰影の鑑別診断が困難であった甲状腺乳頭癌の1例
いわゆるmetastasizing leiomyomaの合併例
吉田 信裕舟橋 啓臣加藤 伸幸上田 雅和浅野 倫雄野崎 英樹今井 常夫佐藤 康幸水野 茂高木 弘
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キーワード: 甲状腺癌
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1989 年 50 巻 2 号 p. 290-293

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抄録

1939年にSteinerにより初めて提唱されたいわゆるmetastasizing leiomyomaは,原発・転移巣の両者が平滑筋細胞と疎結合織からなる良性組織像を示す腫瘍とされているが,本邦での報告例はきわめて稀である.本症例は左甲状腺腫と両肺の多発性陰影から甲状腺癌肺転移を疑ったが,術前の経気管支鏡的な肺生検で確定診断を得られず,術式決定に苦慮した.甲状腺癌手術と同時に開胸下に肺生検を施行した結果,甲状腺癌とmetastasizing leiomyomaが合併した症例と判明した.
本症は組織学的に良性の形態をとりながら臨床的に転移が認められるという矛盾した概念を含む疾患で興味深い.肺以外に腹膜・後腹膜・卵巣・脊髄・大静脈などへの転移が報告されているが,甲状腺への転移は検索し得る限りまだ報告例がない.

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